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読売新聞・iPS大誤報 「検証」でも醜態

2013年6月11日 09:30

読売新聞 iPS誤報 憲法96条の先行改正をめぐる憲法学者や他紙の主張を、「事実誤認」とする検証記事を掲載した読売新聞。その内容のお粗末さについては昨日報じたが、そもそも読売が行う『検証』そのものに、信頼性があるとは思えない。
 読売といえば、昨年10月の「iPS心筋」の臨床応用をめぐる世紀の大誤報が記憶に新しい。じつは同紙、誤報に至った経緯についての検証特集で、疑惑まみれの大学教授にコメントを求めるという醜態を演じていた。ニセ学者に騙された末、検証するために話を聞いた相手もインチキ学者だったという、洒落にならない話である。

世紀の大誤報
 昨年10月11日、読売新聞朝刊に、ハーバード大学の日本人研究者らがiPS細胞から心筋の細胞を作り、重症の心不全患者に細胞移植する治療を行ったとする記事が掲載された。冒頭の写真にある通り、1面トップに「iPS心筋を移植」と大見出しをつけ、「初の臨床応用」として症例を詳しく紹介。ご丁寧に、同日の夕刊トップでも次のような記事を掲載していた。

読売新聞朝刊 2012年10月11日

 その後の騒ぎについては、説明をするまでもない。この報道直後から疑問が噴出。「iPS心筋」の臨床応用も嘘なら、「ハーバード大学日本人研究者」という肩書も嘘。結局、件のニセ研究者の話はすべてが荒唐無稽な作り話だったことが明らかとなってしまった。

 誤報が確実となったことを受けた読売は、同月13日に1回目の検証を特集。さらに26日にも、誤報に至った経緯や学者らのコメントをまとめ、過去記事も含めた検証結果を報じていた。

疑惑の教授に検証依頼
 問題は10月13日の検証記事。この中で「手術手法に専門家疑問」と見出しをつけた一説があった。(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

10月13日の検証記事

 検証記事に登場したのは京都府立医科大の松原弘明教授(当時)。同元教授をめぐっては昨年、血圧降下剤バルサルタンの臨床報告に関する論文に不正があったとして日本循環器学会から学会誌掲載を撤回され問題化。元教授は今年2月に辞職したが、その後、平成13年から23年までに同教授がかかわった計14論文の52カ所に、画像の流用や加工といった捏造があったことを府立医大の調査委員会が認定し、懲戒解雇とすることを決めている。

 松原元教授が関与した複数の論文について、初めて改ざん疑惑が発覚したのは昨年3月のことだ。米国心臓協会(AHA)が懸念の声明を公表し、京都府立医科大に調査を求めていたことが報じられている。大学側には、すでにこの時点で同様の指摘があったとされ、平成23年12月には調査委員会が設置されていた。読売新聞は、松原元教授に論文捏造の疑惑があることを見落としていたことになる。

 iPSがらみの捏造の検証に、同じ捏造の疑いがもたれていた人物を起用したことは、読売の検証過程がいかに甘かったかを如実に示していると言えよう。「世紀の大誤報」は、取材対象の背景や主張についての裏付けを怠った結果だったはず。にもかかわらず、大学教授の肩書を妄信し、安易にコメントを求めた姿勢は、誤報を招いた体質自体が変わっていないことの証左でしかない。

 読売新聞は今月7日、憲法学者や政治家、他の全国紙の96条先行改正に対する批判的な意見について、事実誤認であるとした『五つの批判検証』を掲載した。学者に頼ることに懲りていたのか、記者らが「検証」したその内容は、幼稚な強弁でしかなかった。『検証』とは何か、読売新聞は理解していない。



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