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薩摩川内産廃処分場に新たな問題
隣接する山で無秩序の伐採

2013年6月 6日 10:05

自然破壊が進む「エコパークかごしま」周辺 鹿児島県薩摩川内市で、県が100億円もの税金を投入して建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の建設予定地周辺で、とんでもない事態が起きている。
 処分場に隣接する山で無秩序に伐採が行なわれ、、剥き出しになった土砂などが崩れ落ちるという状況。実際に被害も出ており、処分場が建設された場合、大きな事故につながる危険性が指摘されている。伐採の現状と、処分場との関係を取材した。
(写真は、自然破壊が進む「エコパークかごしま」周辺の山の状況)

剥き出しの山肌
 無秩序な伐採は、「エコパークかごしま」の予定地に川を挟んで隣接するいくつかの山で行われていた。
 下の写真は、処分場を見おろす位置にある現場の様子だが、重機を使って根こそぎ木を倒した様子で、まともな「伐採」とは言い難い状況だ。しかも、伐採後の後始末が不十分で、掘り返された根や短い幹などは放置されたままとなっている。

剥き出しの山肌g 剥き出しの山肌 剥き出しの山肌

 乱暴な伐採がどのような結果を招いているかを示すのが次の写真。左側の写真のように、山はいつ崩れてもおかしくない状況だ。直下の川の近くには右の写真の「砂防ダム」があるが、山が崩れてしまえば、砂防の意味がなくなるのは言うまでもない。

山はいつ崩れてもおかしくない状況 砂防ダム

 もともとエコパークかごしまは、土砂災害を防止するための三つの砂防指定地で囲まれた超危険な場所で、それぞれに砂防ダムが建設されている。しかし、砂防ダムは川沿いに襲ってくる土石流などに対応するためのもので、山の上から地面が崩れ落ちてくれば、被害を防ぐことなどできるはずがない。山の崩壊が、処分場に甚大な被害をもたらす可能性もあるが、もっとも深刻なのは落下した土砂が川をせき止めることだ。

 下の写真は、エコパークかごしま建設現場のそばにある砂防ダムのひとつだ。現在、このダムの基礎部分に穴をあけ、処分場内の「湧水」などを川に逃すためのラインを整備する工事が行なわれている。赤い矢印と●で示した部分あたりから放出するのだというが、川が土砂で埋まってしまえば、場内の水の逃げ場がなくなってしまうのは言うまでもない。そうなれば、処分場は水浸し、危険極まりない汚染水まで溢れかえる事態となる。

建設現場のそばにある砂防ダム

伐採した「財団法人百次愛郷会」は取材拒否
 なぜこうした無秩序な山の伐採が行われたのか?処分場周辺の山を管理しているのは、地元の住民らで組織された「財団法人百次愛郷会」という団体。法人登記を確認したところ、目的欄には財団の設立趣旨と6項目の事業内容が掲げられていた。

本会は営利を目的とせず公益を主とし農業経済の振興農民福祉増進の為め左の事業の補助、助成を為すを目的とする                   
1、農道、林道、里道の開発改善災害復旧工事水利明暗粱耕地等の整理改善  
2、農業技術の増進農民副業の奨励発達農産物の増収加工施設       
3、農民社会人としての教育道義の高揚慰安等の施行           
4、農家の消防、治安、衛生災害の予防                 
5、植林林野の緑化保護                         
6、その他農民文化向上発展に資する事業  

 ご立派な目的を持っているようだが、どう考えても非常識な伐採の現状とは合致していない。現地で取材を続けたところ、伐採による山の崩落で大きな被害を受けた人から話を聞くことができた。

 それによると、伐採が始められたのは2年ほど前。山の裾野に畑を持っていたため、事前に危険防止策などについての条件を示し、互いに確認しあっていたという。ところが伐採が始まるや重機を入れてやりたい放題。結果、畑に土砂が崩れ落ち、甚大な被害を受けるに至ったと憤る。

 百次愛郷会側に話を聞くため、鹿児島県庁のホームページに記載された同団体の代表電話に連絡を入れたところ、「私は下っ端。代表者に聞いてくれ」。
 やむなく代表者の自宅に電話して取材を申し入れたところ、「なんで答えなければいけないか!カネがいるから伐ったっじゃ」とすごい剣幕で怒り出し、いきなり電話を切られてしまった。よほど都合が悪いらしい。

 地元の人たちに取材して回ったところ、伐採後、愛郷会のメンバーには、数万円ずつカネが配られたという。事実なら、《本会は営利を目的とせず公益を主とし》とされる財団の設立目的からは遠く外れているとしか思えない。 

 「エコパークかごしま」は、19億円に上る工事費増大をもたらした「湧水」という問題に加え、山崩れの危険性まで抱え込んだことになる。
 こうした場所に処分場を建設することを強行したのは、伊藤祐一郎鹿児島県知事である。



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