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アベノバブル

2013年6月 7日 10:20

国会 世論調査では圧倒的な支持率を保つ安倍政権だが、国民は本当にこの政権を支持しているのだろうか。“消去法で自民”―そう考えるしかない政治の現状があるとすれば、国民は不幸というしかない。
 憲法改正、侵略戦争の否定、原発推進・・・。こうした方向性を持つ安倍晋三という人は、偏狭なナショナリズムと利権政治を容認する、いわば自民党のもっともいやらしい部分を体現している政治家だ。
 その安倍氏が打ち出した「アベノミクス」とやらがもたらした高揚感も、そろそろ薄れ始めている。

アベノミクスの正体
 マスコミがもてはやしてきた「アベノミクス」とは、大胆な金融緩和、機動的な財政出動、そして成長戦略という「3本の矢」による総合的な経済政策を指す。順番に射られたそれぞれの矢を仔細にながめると、じつは負担を次代に押し付けるだけの付け焼刃の愚策であることが分かる。

 まず、金融緩和についてだが、資金供給量を2年間で2倍に拡大するという黒田日銀の「異次元の金融緩和」は、銀行が保有する国債を日銀が買い取る形で進められる。印刷されるお札が2倍に増やされるわけではなく、市中金融機関の国債が「現金」に変るだけのことだ。しかも、日銀が国債を買えば買うだけ、国民の借金が増えるという事実を忘れてはならない。ツケはいずれ、私たちや子ども達の世代に回ってくるのだ。

 二の矢はさらにタチが悪い。自民党が打ち出す機動的な財政出動とは、すなわち国土強靭化という名の「公共事業」ばら撒き策だ。これは、土建国家の復活を意味している。
 災害に強い国にするための強靭化とやらに、10年間で200兆円もの税金を投入するというが、1,000兆に及ぶ借金を抱えたこの国に、そんなカネがあるはずがない。つまりはまた国債発行で賄うということだ(つまりは次代への借金の押し付け)。旧態依然の政治手法が、いずれも政・官・業癒着の上に成り立っていたことを忘れてはならない。

 そして3本目の矢である成長戦略。今週、安倍首相が打ち出したのは、民間活力を使うだの、1人当たりの「国民総所得」を10年後に150万円以上増やすだのという、新鮮味に欠ける努力目標ばかりだった。出典は中曽根内閣の民活導入であり、池田内閣の所得倍増計画なのだろう。

 国民受けを狙ったつもりが、具体策に乏しいことに一番早く気付いて拒否反応を示したのは、皮肉なことに安倍政権の支持率を押し上げる要因のひとつとなってきた株式市場だった。安倍首相の成長戦略発表直後から、下げ基調だった日経平均株価が一気に500円以上も下落。5日にはあっさり1,300円を割り込む展開となっている。先月、15,900円台までつけていた平均株価が3,000円も下がった計算で、アベノミクスの効果は帳消し状態だ。

 安倍氏が持ち出してきた「国民総所得」の押し上げ計画も胡散臭い。安倍首相の説明を聞いていると、国民一人ひとりの所得が増えるような印象を受けるが、決してそうではない。「国民総所得」(GNI)とは、日本の国民が1年間に生産した国内総生産(GDP)に海外投資による所得を加えたもので、経済活動の指標に過ぎないのだ。総額を示して判断材料にすべきものを、国民一人当たりの金額に置き換えて発表したところに、安倍政権の思惑が透けて見える。選挙目当ての騙しのテクニックであることは言うまでもあるまい。

 安倍政権は、デフレ脱却に向けて、2年後までに2%というインフレターゲットを設定しているが、金融緩和で溢れ出したカネが、中小企業や庶民の懐に入ってくるというのは幻想だ。

 金融機関が融資の審査をするにあたっては、「金融検査マニュアル」に従った企業の格付け行っている。これが続く限り、中小企業が銀行から融資を受けることは容易ではなく、市中に溢れたカネは、大企業や投棄筋に向かうことになる。格差は開く一方となるだろう。

 アベノミクスは参院選までに役割を終え、一時的なバブルを演出しただけで終わる可能性が高い。一連の政策による現象は、「アベノバブル」と呼ぶべきものかもしれない。

折れた「矢」
 ところで、「3本の矢」といえば、戦国時代、中国地方を席巻した毛利元就が、3人の子ども達に残したとされる遺訓が有名だ。1本では弱いが、3本束ねれば容易には折れないとして、結束の大切さを教えたとされる。
 一方、支持率を保つため、小出しに射られた安倍首相の矢は、いずれも的を外しただけでなく、もろくも折れてしまっている。矢を束ねることを忘れていたのかもしれないが・・・・。



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