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再稼働ありきで巨額寄付 九電の傲慢体質を露呈
― サガハイマット 松尾発言の背景 ―

2013年6月 4日 09:00

 福島第一の事故原因も解明されぬ中、玄海(佐賀県玄海町)・川内(鹿児島県薩摩川内市)両原発の再稼働に向けて突き進む九州電力が、本来の傲慢な体質をさらけ出し始めた。
 先月、同社前会長の松尾新吾氏(現相談役・九州経済連合会会長)が、重粒子線がん治療施設への九電からの寄付が止まっている状況について、「九電の協力がダウンしないように監視していく」、「(原発を)4日早く運転すればなんてことはない」などと発言。
 翌日には、瓜生道明社長が会見で松尾氏を擁護し、巨額の寄付継続を明言した。いずれも原発再稼働を前提とした発言で、九電特有の傲慢さを露呈した形だ。

なお続く松尾体制
 松尾氏の問題発言がとび出したのは、5月29日に佐賀市で行われた「九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)」(鳥栖市)の開所式典でのこと。挨拶に立った松尾氏は、原発が停止しているせいで「(九電が)1日10億円の赤字」とした上で、「(原発を)4日早く運転すればなんてことはない」、「九電の協力がダウンしないように監視していく」と発言した。九電会長どころか取締役でもなくなったはずの松尾氏がここまで言い切ったことは、いまだに九電が松尾氏の支配下にあることを示している。その驕りが出たということだ。

 30日には、会見で松尾氏の発言についての見解を求めれた瓜生社長が、次のように述べた。「九経連の会長としての言葉だと理解している。九州電力というのは地域の皆さんの発展があって私どもの会社がある。九州地域、九州経済がより一層良くなっていくことについては、支援を惜しむことはない。ハイマットについては、私どもがお約束した金額を基に事業が考えられており、ご迷惑をかけるわけにはいかない。当然、ある時点で、これをお支払するのは私どもの役目、責任。その意思は変わらない」。

 依然として松尾氏が九電を支配している現実を否定したかったのだろうが、九経連の会長が、公益企業である九電に寄付を強要できるとは思えない。29日の松尾発言は、明らかに元会長としての九電に対する圧力である。
 さらに、瓜生社長は寄付継続を「当然」としているが、前提となるのが原発再稼働による経営状況の好転であることは言うまでもない。やらせメール事件など忘れたかのような、これまた傲慢な姿勢である。

 九電は、原発の停止に伴う火力発電の燃料費増大により、財務状況が大幅に悪化。5月1日からは平均6.23%の電気料金値上げを実施している。
 《お客さまには、大変厳しい経済情勢の折、多大なご負担をお願いすることにつきまして、誠に心苦しく、深くお詫び申し上げます》(同社ホームページより)などと言いながら、九電が勝手に決めた巨額の寄附は止めないと言い張り、「九州経済がより一層良くなっていくことについては、支援を惜しむことはない」などと上から目線の言葉を平然と口にする。松尾氏も瓜生社長も、“九電のカネ”が、消費者の支払う電気料金であることを自覚していないのだろう。

 さらに問題なのは、サガハイマットへの巨額の寄付継続が、原発再稼働を前提に語られていることである。再稼働に向けての国民の理解など関係ないと言わんばかりの両者による強気の発言は、九電の体質が何も変わっていないことを示している。

松尾氏抜きでは語れない「サガハイマット」
 「九州国際重粒子線がん治療センター」(SAGA HIMAT:サガハイマット)は、古川康佐賀県知事が平成19年の知事選で、マニフェストに明記した最先端がん治療施設(Heavy Ion Medical Accelerator in Tosu)の建設構想を具現化したものだ。

 同計画の初期投資額は約150億円。佐賀県が20億円の補助金を出すほか、民間からの寄付88億5,000万円と出資金などの41億5,000万円でまかなう計画だった。このうち、九電からの寄付総額は39億7,000万円。九電の関連企業からの寄付を合わせると、必要とされる寄付金額の半分近くを占める。

 九電側の動きを主導したのは松尾氏。同氏は「九州国際重粒子線がん治療センター事業推進委員会」の準備段階から委員として名を連ね、計画推進の立役者的存在だった。古川―松尾、この2人の密接な関係なくしてサガハイマット計画は成り立たなかったことが分かる。

gennpatu 008.jpg HUNTERが佐賀県への情報公開請求で入手した文書からは、興味深い事実が明らかとなっている。古川知事と九電関係者との飲食に関する文書を請求したところ、該当文書として開示されたのは1件。それが知事と松尾前会長との会談の記録だったのである。

 開示された「会食実施伺」(右の文書参照)によれば、平成21年10月25日、古川康知事は福岡市内の「JALリゾート シーホークホテル」(現・ヒルトン福岡シーホーク)内の一室で松尾前会長と会食。目的は《粒子線関係の打合せ》となっており「九州国際重粒子線がん治療センター」に関する話し合いだったことは明白だ。

 そして、この会談から半年後の平成22年4月28日。九電は「佐賀国際重粒子線がん治療財団」に対し、複数年で39億7,000万円の寄付を行うことを発表する。資金面の手当てがついたことで、がん治療センターの建設計画に弾みがついたのは言うまでもない。ところが、福島第一原発の事故を受け事態が一変。原発の停止に加え、やらせメール事件などの余波もあって、九電自体の経営基盤が揺らぐ状況となったのである。

 この結果九電の寄付がストップ。さらに予定された民間からの寄付が思うように集まらず、隣県福岡が約6億円の補助金を出す事態となっていた。九電の尻拭いを福岡県民に押し付けたも同然だ。こうした経緯について、松尾氏や瓜生社長は無神経過ぎるのではないか。

 松尾氏と瓜生社長の、原発再稼働を前提とした巨額の寄付継続発言は、電気料金を支払っている消費者の意向を無視する同社の体質そのものだ。この会社はフクシマ以前と何も変わっていない。


【お詫びと訂正】記事中、5月29日に行われた「九州国際重粒子線がん治療センター(サガハイマット)」(鳥栖市)の記念式典について、誤って「武雄市」で開かれたと記述しておりました。記念式典が行われたのは「佐賀市内」です。お詫びして訂正いたします。(平成25年6月4日、21時40分)



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