福岡市が行っている「実行委員会方式」の事業について、いくつかの例を拾って検証を進めてきた。
4月に報じた「アイランドシティこどもっと!だいがく」や「中高生夢チャレンジ大学」では、帳簿・領収書の不備といった杜撰な経理処理を許し、時給3,500円~4,800円などという一般常識を超えた高額な職員報酬が支払われていた。いずれの事業も、税金で特定メディアや団体の懐を潤しているのが実情だ。
先週ふれた「クリエイティブ福岡推進協議会」は、高島宗一郎市長の就任後に始められたものだが、やはり特定企業や一部の人間達と市側の癒着が疑われる事業形態であることに変わりはない。
そして、税金の使い方に無頓着な高島市政を象徴するもう一つの事業―「アイランドシティ・アーバンデザイン協議会」は、事業の進め方そのものに大きな疑問がつきまとうものだった。取材結果と、福岡市への提言をまとめた。
“九大の会社”に業務を丸投げ
昨年10月から始まった「アイランドシティ・アーバンデザイン協議会」の事業は、《行政、企業、大学、住民など多様な主体がアイランドシティの魅力あるまちづくりを推進することを目的とした活動拠点》(アイランドシティの情報サイト「照葉.NET」より)である『アイランドシティ・アーバンデザインセンター(UDCI)』の運営を目的としており、昨年度は約1,200万円、今年度は2,000万円の負担金を市が支出する計画だ。
実行委員会の収入のほとんどは市からの負担金。さらにUDCI が入居するアイランドシティ内のビル(左の写真)の1室の家賃約1,000万円は、市が別途に全額を支払っており、平成25年度は、同事業に3,000万円の税金が投入される計算となる。実行委員会方式と言いながら、実態は税金を使った市の事業なのだ。
問題は、同協議会の実行委員会が、予算の大半を丸投げする形で実務を特定の企業に任せていることである。
UDCI の運営業務を行っているのは「株式会社 産学連携機構九州」。同社は、九州大学の技術移転に関わる様々な事業を行う目的で平成12年に設立され、20年には九州大学の100%出資による特定関連会社となっており、本社所在地は市内東区箱崎の九大の中。つまり“九大の会社”なのである。
見えない収支内容
下の二枚は、福岡市への情報公開請求で入手した同事業の関連文書のうちの一部だが、左が実行委員会の「出納簿」、右が「株式会社 産学連携機構九州」が提出した支出予定の「積算書」である(黒塗りは全て市側。赤い書き込みはHUNTER編集部)。
まず「出納簿」だが、わずかA4の紙1枚。1,200万円もの税金を使いながら、これほど大雑把な収支明細で許されるとは呆れてものが言えない。何のための『謝礼』や『旅費』なのかも分からない上、産学連携機構九州への支出約1,145万円は丸々を投げ渡し。正確な使途がつかめない形となっている。
同社への支出について説明できる唯一の文書が、上掲した右の「積算書」となるが、これとてスタッフへの報酬額は単価も個別の支払額も黒塗り。適正な金額かどうかの判断さえできない状況だ。ただし、5か月分とされる同社への支出が1,145万円であることと、同じく5か月分の人件費が約540万円であることから考えると、1か月あたりの人件費は約108万円。12か月間フル稼働する今年度は、人件費だけで1,300万円ほどが費消されることになる。少なくとも、事業費の65%は“九大の会社の従業員”を養うために充てられるのである。
現地スタッフは事実上の説明拒否
アイランドシティにあるUDCI に取材したが、“責任者”として常駐しているという副センター長の名刺には『九州大学非常勤講師』の肩書も明記されていた。九大からも報酬を得ているのか尋ねたところ、個人情報について答える必要はないと突っぱねられてしまった。(右の写真はUDCI の内部)
実行委員会の経理内容についても、会社(産学連携機構九州)の社長に聞いてもらいたいとして、こちらも説明拒否。UDCI の経費の大半は公費でまかなわれており、事業の現地責任者が話すのは当然だとして説明を促したが、硬い姿勢は最後まで変わらなかった。公的事業の収支について、業務委託を受けた会社の社長にしか話を聞けないというのはおかしな話だ。
他都市では外部監査で問題点指摘
実行委員会方式の一番の欠陥は、何度も述べてきた通り、経理が不透明になることである。この点については、他の政令市の外部監査において、問題点が指摘されていた。
京都市における、平成14年度包括外部監査結果報告書の一部を紹介してみたい。
報告書では、《実行委員会方式は、自治体が事業を進めるには、極めて便宜性の強い組織である。例えば、自治体の場合には、「負担付寄付」を受納するには、市議会議決が必要であり、また、事業経費の執行に当たっても、「総計予算主義の原則」(地方自治法第210条)等法律の規制がある。しかし、自治体とは、別個の組織である実行委員会が行う経理手続には、かかる法の規制はない。この便宜性のゆえに、京都市においては、イベント実施の場合の事業手法として、実行委員会方式が採られているので、実行委員会方式の問題点をここでまとめることとする》とした上で、<改善を要する事項>として次の二点をあげている。
いずれも杜撰な経理処理や甘い管理体制が問題視された結果だが、福岡市の現状を見る限り、これらの都市以上に野放し状態で実行委員会方式の事業を続けていることは明白だ。
福岡市が同方式の事業を継続する以上、経理処理を中心とした新たなルール作りに向けた議論が必要であることは言うまでもない。これは福岡市への提言でもある。