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読売新聞、またも1面で「誤報」
飲酒がらみ報道 福岡市の抗議無視して放置

2013年5月23日 09:10

鹿児島 226.jpg 「誤報」が報道機関としての資格を疑われるのはもちろんだが、さらに重要視されるのは、記事の間違いを指摘されたあとの対応だ。即座に調べ直して、記事が正しければ反論、誤りがあれば訂正や謝罪の記事を出すのが常識だろう。
 そうした意味で、裏付け不十分な記事をタレ流し、訂正しようともしない「読売新聞」の姿勢に、大きな疑問が生じている。
 読売新聞が朝刊1面に事実上の「誤報」を掲載し、抗議を受けたにもかかわらず、訂正も出さずに放置していることが分かった。

事実上の福岡市批判 ― 内容に疑問
読売新聞21日付朝刊1面 問題の記事は、同紙21日付朝刊の1面に掲載された「福岡市 健診数値で飲酒指導」。1面左上の「カタ」と呼ばれる場所にあることから、トップニュースに次ぐ扱いだったことが分かる。同様の報道は他のメディアにはなく、いわゆる「特ダネ」だったことで、扱いが大きくなったとみられる。(右が21日の読売新聞の紙面)

 記事は、高島宗一郎福岡市長が昨年5月に出した「禁酒令」から1年になることにからめる形の構成となっている。
 まず、リードの部分で《職員の飲酒による事件・事故の根絶を目指す市は、健康診断の数値を上司が確認してアルコール依存症の危険性が高い職員を見つけ、指導する方針を決めた》とした上で、生活面に踏み込んだ対策に、『人権上の問題がある」との指摘を紹介。

 次いで、《市は、年に1度の健康診断後、所属長に対し、職員のγ(ガンマ)GTPなど肝臓の数値に異常がないかチェックするよう指示することを決めた》と報じている。まるで職員の個人情報である健康診断の詳細な数値を上司が把握できるかのような書きぶりだ。

 事実であれば、人権侵害にあたる可能性がある。実際、読売新聞も、識者のコメントとして同志社大教授に「職場の上司が、職員の健康診断結果を把握し、私生活にまで踏み込むのは人権上問題があり、職員が萎縮してしまう」というコメントを掲載し、記者の見立てを補強させている。

 この記事は、九州で配られる西部本社版だけでなく、東京本社版でも1面に掲載されており、21日朝のみのもんた氏司会の情報番組で取り上げられるほどの反響があった。みの氏が福岡市の職員に対する批判的なコメントを行ったのは言うまでもない。

 福岡市では平成18年、福岡市東区の人工島にある海の中道大橋で、飲酒運転をしていた福岡市職員(当時)の車が市内の会社員の車に追突、会社員の車に乗っていた幼い子ども3人が海に投げ出され死亡するという痛ましい事故が起きた。福岡市は、市民はもとより全国からの厳しい批判に晒されたが、その後も市職員による飲酒がらみの事件・事故はあとを絶たず、昨年の「禁酒令」という高島市長のパフォーマンスに至った経緯がある。

 とはいえ、市職員にも人権はある。個人情報である健康診断の数値までを上司が把握するのは、どう考えてもやり過ぎ。事実なら、こうした方針を決めた市の人権感覚が疑われる事態だが、この記事にはいくつか不可解な部分があった。

 読売の記事にある福岡市の「方針」とやらは、昨年の段階で大まかな方向性が示されているもので、新たに決ったものではないはず。さらに正確さを求めるなら、健康診断の「数値」を上司が把握するシステムにはなっていないのである。

やっぱり「誤報」
 この記事に間違いはないか―22日、記事に登場する市総務企画局人事課の課長に話を聞いた。
 取材に応えた同課の加藤三貴課長は、「この記事については、読売新聞側に抗議しています」。やはり、正確な記事ではなかったということだ。同課長が明らかな間違い、として指摘したのは次の3箇所の記述である。

①《職員の飲酒による事件・事故の根絶を目指す市は、健康診断の数値を上司が確認して
  アルコール依存症の危険性が高い職員を見つけ、指導する方針を決めた》

②《市は、年に1度の健康診断後、所属長に対し、職員のγ(ガンマ)GTPなど肝臓の数値に異常がないか
  チェックするよう指示することを決めた》

③《「お酒の飲み方チェックシート」と会わせて所属長が一元管理し、所属長の判断で
  問題のある職員については産業医に記録を見せ、受診の判断を仰ぐようにする》

 課長によれば、健康診断の結果から上司が確認できるのは、数値ではなく、注意が必要かどうかなどの包括的な所見のみ。方針を決めたのも昨年のことで、新たな方針決定など一切ないという。一元管理もなければ、所属長に対し、職員の肝臓の数値に異常がないかチェックせよとの指示などあり得ないと明言している。つまりは「誤報」ということだ。

 課長はさらに、「(読売の)取材には、これまで積み重ねてきた対策を粛々と積み重ねるだけですとお伝えしていたのです。新たな方針などとは一切言っていません。記者さんが想像をふくらませて書いたんでしょうね」と語り、記事が掲載された21日の段階で、読売新聞の記者を呼んで厳重に抗議したことを明らかにした。

 だが、22日、23日の読売新聞朝・夕刊のどこを探しても、訂正は掲載されていない。そればかりか、23日朝になっても、読売新聞社のニュースサイト「ヨミウリ・オンライン」の記事さえ削除されておらず、放置されたままだ。

 市側の抗議に対し、記事を書いた記者は「全体の方向性は間違っていない」と強弁したらしいが、自らの非を認めない姿勢は大手メディアの驕りのあらわれでしかない。これでよく他者を責めたてることができるものだ。

誤報.jpg誤報の連続 懲りない体質
 どうやら読売では、誤報が常態化して、「正しいことを書く」という感覚が麻痺しているらしい。

 昨年7月、同紙1面トップに福岡県警本部長名の職務質問に関する通達が、指定暴力団・工藤会への捜索で見つかっていたとする記事を掲載。その後、問題の「本部長通達」自体が存在していなかったことが分かり、誤報を認める事態となった。(右がその問題の記事を掲載した読売新聞の紙面)

 極めつけは、10月に起きた、これまた1面トップで扱った「iPS心筋」の臨床応用をめぐる世紀の大誤報である。いずれも裏付け取材を怠った結果だが、誤報に関しては読売の独走状態だ。「懲りない体質」で済まされるような、軽い問題ではなさそうだが・・・・・。



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