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僭越ながら:論

国益害するのが「国賊」ならば・・・

2013年5月17日 11:20

 “国賊”という言葉がある。国に仇なす人間という意味らしい。戦前・戦中は反戦的な言動を糾弾するために用いられ、近年では中国・韓国の主張に一定の理解を示す人たちに向けられてきた一語だ。似たようなものに“非国民”、“売国奴”などがある。好んで使ってきたのは、主として国家主義者や極右側の方々であろうが、言葉の意味や現状からすると、安倍首相や日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長にこそ相応しいと思えるようになってきた。加えるとすれば石原慎太郎氏と松井一郎大阪府知事も、である。

右傾化に国際社会の厳しい視線
 安倍政権の発足以来、民主党政権下で冷え込んでいた中・韓との関係が厳しさを増した。原因が、日本の侵略行為や従軍慰安婦問題での非を認めようとしない安倍首相の頑なな姿勢、さらには国軍創設を前提とした憲法改正に前のめりとなる自民党政権の動きにあることは言うまでもない。

 発端は安倍首相の発言だった。日本の植民地支配と侵略を謝罪した村山談話に関する国会での質問に対しては、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」。
 閣僚の相次ぐ靖国神社参拝に、中国と韓国が反発していることについて聞かれ、「尊い英霊に尊崇の念を表するのは当たり前のことであり、閣僚がどんな脅しにも屈しない自由は確保している」。

 一連の首相発言に、中・韓だけでなく、米国さえも懸念を表明する事態となるなか、自民党の高市早苗政調会長が「侵略という文言を入れている村山談話にしっくりきていない」と発言、軌道修正を図りはじめた政権の足もとを揺さぶる形となった。自民党政権が、日本の国際的な信用を失墜させていることは事実。「国益」の大切さを強調する安倍首相にとっては、なんとも皮肉な結果である。

橋下徹大阪市長と維新の会の正体
 首相や党幹部が大多数の国民の意思とは異なる個人的な見解にこだわり、国の威信を失墜させるような状況に、危険な兆候を感じ取る人は少なくあるまい。
 参院選を前に、さすがにまずいと思ったのか、「安倍内閣として侵略の事実を否定したことは今まで一度もない。(村山談話)全体を歴代内閣と同じように引き継ぐ」と首相自身が火消しに動きはじめた矢先、今度は憲法改正の盟友とも見られていた日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)が、すべての女性を敵に回す発言で世界中から批判を浴びることになった。

― 「慰安婦制度が必要なのは誰だって分かる」。
― 「当時の歴史を調べたら、日本国軍だけでなく、いろんな軍で(慰安婦を)活用していた」。
― 「(在沖縄米司令官に)もっと風俗業を活用してほしい」。

 正気の沙汰とは思えないが、この発言を維新の会の石原共同代表は「軍と買春はつきもの、歴史の原理」と擁護。同党幹事長の松井大阪府知事も「本音をぶつける中での発言」として同じ考えであることを表明した。同じ穴のムジナということだ。

 軍事行動を遂行するためには女性の犠牲が必要だと決め付けた橋下発言と、これに同調する維新幹部の主張は、どれだけ屁理屈を並べても容認されるものではない。波紋が広がり釈明したものの、発言自体は撤回せず、「不適切だった」で片付けようとする橋下氏の姿勢は、この政治家の「本質」が男尊女卑であることを物語っている。

 橋下氏は昨年、自身の出自を取り上げた週間朝日の連載記事に激しく噛みついた。この時の顛末について詳しく述べる必要はあるまいが、慰安婦容認発言を行った橋下氏は、当時の週刊朝日の立場になったも同然だろう。ある意味、滑稽でさえある。
 同誌の親会社である朝日新聞の記者を、記者会見という公開の場でつるし上げた橋下氏だっただけに、ツイッターなどという一方的な情報発信の方法ではなく、公開の場で多くの女性と話をすべきであろう。

 もともと橋下氏および維新の会の政治姿勢は、「無責任」「無節操」を原則としている。かつて維新が声高に唱えた増税反対、原発再稼働反対などは、いつの間にか影を潜めてしまったが、政策転換についての説明は一切ない。しょせん《統治機構を作り直すために憲法改正が必要》などと本末転倒の主張を公約に掲げるような政党なのだ。今後、国政の場で何もできなければ、「憲法が悪い」と開き直るのは目に見えている。もちろん、この程度の政治家をヒーロー扱いし、軸を持たない政党を「第3極」などと持ち上げたマスコミにも責任の一端がある。

国益を害しているのは・・・
 国際社会が日本を危険な存在として意識し始めているのは確かだ。国を危うくしているという点において、「国賊」という言葉は安倍首相や橋下氏にこそ相応しかろう。ただし、私たち有権者の選択の結果が、原因を作っていることも忘れてはなるまい。
 それにしても、個人より「公」を優先せよという安倍政権や維新の会が「国益」を害する状況は、これまた滑稽と言うしかない。



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