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安倍晋三 目指すは全体主義国家

2013年5月 1日 10:05

 「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない」、「脅しには屈しない」―いずれも国会答弁で飛び出した発言だが、政権の右寄り姿勢に反発を強める中国、韓国に対して発せられた安倍首相の“本音”である。アジア諸国はもとより、国際社会全体からも白眼視される世迷い言であり、北朝鮮と中・韓を同一視する首相のアジア観を露呈した形だ。
 一方、28日には、「なぜ今なの」と首をかしげる多くの国民をよそに、主権回復の日の式典が行われた。浮き彫りとなったのは、沖縄への配慮のなさである。
 ふたつの愚行に通底するのは、少数意見無視、国民より国家を優先する安倍首相の政治姿勢である。どうやら安倍氏が目指す「美しい国」の形が見えてきた。

中・韓を敵対視
 先月23日、安倍首相は、日本の植民地支配と侵略を謝罪した村山談話に関する国会での質問に対し、「侵略という定義は学界的にも国際的にも定まっていない。国と国の関係でどちらから見るかで違う」と答弁。戦前の大陸における日本の行為は、侵略ではなかったという自身の考え方を披露してみせた。
 首相就任後、「村山談話をそのまま継承するわけにはいかない。戦後70年を迎える段階でアジアに向けて新しい談話を出そうと思う」と語り、歴史認識についての政府見解を変えると宣言していた首相の、これが前提。もちろん、発言内容を咎められる覚えなどないと言いたいところだろう。

 問題発言はさらに続いた。翌24日、同じく国会質疑の中で、麻生副総理ら閣僚3人による靖国神社参拝に、中国と韓国が反発していることについて聞かれ、「尊い英霊に尊崇の念を表するのは当たり前のことであり、閣僚がどんな脅しにも屈しない自由は確保している」と答弁。閣僚の参拝を容認する考えを示唆した。中・韓の怒りを増幅させたのは言うまでもないが、暴走ととらえたのは両国だけではなかった。
 一連の首相発言や閣僚の相次ぐ靖国参拝について、アメリカのオバマ政権が、非公式に懸念を伝えてきた のである。同国国務省の報道部長は、公式な抗議はしていないとしながらも、「中国や韓国のように他国も懸念を表明している。各国間の強く建設的な関係が地域の平和と安定をもたらすことを今後も訴えていく」と述べており、右傾化が顕著な安倍政権に警告を発した形だ。

主権回復式典
 国際社会における日本への批判的な空気が拡がる中、28日には政府主催の「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」が行われた。官邸のホームページを見ると、式典の意義について次のように述べられている。
《この式典は、平和条約の発効による我が国の完全な主権回復、及び国際社会復帰60年の節目を記念し、我が国による国際社会の平和と繁栄への責任ある貢献の意義を確認するとともに、これまでの経験と教訓をいかし、我が国の未来を切り拓いていく決意を確固としたものにするため、挙行するものであります》。

 役人が書いた文章らしいが、これほどひどい駄文を、堂々と官邸のホームページで発信する神経には呆れるしかない。しかも、後の記述が、さらに式典の空虚さを証明していた。
《これに関して、本日閣議において、総理から、この式典に当たっては、奄美、小笠原、沖縄が、戦後の一定期間、我が国の施政権の外に置かれたという苦難の歴史を忘れてはならない、苦難を耐え抜かれた先人の心情に思いをいたし、沖縄の方々の抱える基地負担の軽減に取り組むとともに、奄美、小笠原、沖縄を含めた我が国の未来を切り拓いていく決意を新たにすることが重要であるとの発言がありました》。

 奄美、小笠原、沖縄は、講和条約発効後も、米軍の施政下に置かれた。ために沖縄では条約が発効した4月28日を「屈辱の日」と呼ぶ。式典当日、奄美や沖縄で、式典に抗議する集会が開かれたことは周知の通りだ。もともと安倍政権は、沖縄県民の思いなど一切忖度しておらず、国威発揚にしか興味がないのである。

「美しい国」の正体
 安倍首相が祝おうとした主権とは、まさに国家の主権のことだ。沖縄県民はもちろん、国民ひとり一人の感情など無視して、ともかく「国」の存在を第一に考えろと言いたいのだろう。主権在民を謳った憲法を否定してきた安倍晋三らしい。そこには沖縄の痛みなど眼中にない、極右政治家の姿がある。

 前述したように、中・韓をはじめとするアジア諸国に対する姿勢も傲慢そのものだ。侵略も、従軍慰安婦も、虐殺も否定したがる安倍首相は、欧米と日本以外は下と見ているのだろう。戦争も辞さずの強硬な物言いは、この国に危険しかもたらさない。 

 国内は、アベノミクスとやらで浮かれているが、どうやら首相が目指すものは全体主義国家であることが分かってきた。国民より国家―全体主義の先には偏狭なナショナリズムと一体になった軍国主義が待ち構えている。安倍首相が連発する「美しい国」の正体は、つまりは戦前の軍国日本ということなのだ。



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