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橋下さん、「誤報」なら訴えたらどうですか?

2013年5月31日 11:00

 従軍慰安婦などをめぐる一連の問題発言で、国内はもちろん国際社会からも批判されることになった日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長に対し、30日、大阪市議会(定数86)で問責決議案が提出され、反対多数で否決された。橋下擁護に回ったのは、維新の会と公明党の市議団。維新サイドから「可決されたら出直し市長選」と揺さぶられ、公明の腰が砕けた形だ。
 国益を損なう騒ぎを引き起こしながら、責任も取ろうともしない橋下氏。どこまで権力の座にしがみつくつもりなのだろう。

説得力を欠いた橋下氏の「認識と見解」
 27日に行われた日本外国特派員協会での会見では、しおらしい態度で持論を展開した日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長。話の内容は、これに先立って公表した「私の認識と見解」に沿った身勝手な言い訳でしかなかった。説得力に欠ける「認識と見解」は、次のような書き出しではじまっている。

《まず、私の政治家としての基本的な理念、そして一人の人間としての価値観について、お話ししたいと思います。
いわゆる「慰安婦」問題に関する私の発言をめぐってなされた一連の報道において、発言の一部が文脈から切り離され、断片のみが伝えられることによって、本来の私の理念や価値観とは正反対の人物像・政治家像が流布してしまっていることが、この上なく残念です》。

 見解の一部を文脈から切り離したり、断片のみを伝えたり、ましてや橋下氏の理念や価値観とは正反対の人物像・政治家像を流布するつもりは毛頭ないので、片言隻句を取り上げて検証するような真似はしない。A4の用紙5枚以上に及ぶ長文だが、要約すれば、次のようなものでしかない。

  1. 慰安婦問題については、旧日本軍が女性の人権を蹂躙したことは悪かったが、諸外国の兵士も女性の人権を蹂躙したことに変わりはない。みんなで反省しましょう。
  2. 私(橋下)が慰安婦を容認しているというのは「誤報」だ。
  3. 在沖縄米軍に風俗を利用しろと言ったことは不適切だったので、撤回してお詫びする。でも米兵も軍紀を守れよ。
  4. 日韓関係は解決済み。一部の元慰安婦をはじめ韓国はガタガタ騒ぐな。

 これが会見を前に橋下氏の言っていた「国際スタンダード」の主張だとすれば、あまりにお粗末。再び世界中に日本の恥を晒したといっても過言ではあるまい。

“懲りない日本”の象徴
 敗戦から60年以上を経てなお、国際社会において日本に対する厳しい視線が向けられるのは、じつは橋下発言に代表される「悪いのは日本だけではない」「散々謝ったじゃないか」的な子どもじみた主張を、右に寄った一部の政治家達が繰り返してきたからに他ならない。

 口では訂正だの謝罪だのと言いながら、同時に「だけど悪いのは日本だけではない」という橋下氏の主張は、国際社会から白眼視されてきた日本の歪んだ愛国心を象徴する論法なのである(もちろん同様の見方は安倍晋三氏にもあてはまるが)。

 『懲りない日本』・・・・・・一連の橋下発言が、諸外国にそうした思いを抱かせたのは事実だ。橋下氏は、“平和を希求する日本”を国際社会に認めてもらうため、多くの先人が積み上げてきた努力を水の泡にしたも同然。その責任はどう取るのだろうか。

少数意見を見下す姿勢
 橋下見解を何度読んでも、沖縄の風俗関係者や多くの女性、さらには日本国民に対する謝罪の言葉はない。「日本人は読解力不足」とまで言い放った橋下氏だけに、自国民に謝る必要などさらさらないということなのだろう。

 米兵の性犯罪を減らすために風俗を活用するよう米軍司令官に迫ったのは橋下氏だ。しかも、その折の模様をテレビカメラの前で得意げにしゃべったのも他ならぬ橋下氏自身。どう言い逃れしても、沖縄の風俗嬢が米兵の慰安をすることを前提とした発言に違いなく、とうてい許容されるものではあるまい。

 “軍隊の性犯罪を、風俗を以って減らす”という考え方は、従軍慰安婦制度ならぬ「従軍風俗嬢制度」とでも呼ぶべきものだ。橋下氏が女性を性奴隷として捉えているとの批判は、決して的外れではあるまい。

 重ねて述べるが、沖縄の女性たちに、橋下氏は一度も謝っていない。大国アメリカには謝るが、自国民は踏み台にしても良いと思っている証拠であり、見方を変えれば「少数意見」を軽んじる橋下氏の本質が現われた結果とも言えよう。これは、「選挙は一種の白紙委任」と言い続けてきた橋下氏の主張にも通底している。力のない少数派は切り捨てるのが橋下流ということだ。「照一隅」とは無縁の政治家に、国を委ねることなどできない。

間違った風潮―マスコミの責任
 近年、役人や意見の異なる相手に激しい言葉でつっかかる政治家を、持ち上げる風潮が強まった。おそらく小泉純一郎元首相がその嚆矢的な存在だろうが、いつの間にか「言うべきことを言う」と、「言いたい放題」という全く次元が違うものが混同されるようになってはいないか。もちろん、橋下氏が後者の類に属することは言うまでもなく、この程度の人物をヒーロー扱いしてきた大手メディアの責任もまた重い。「言いたい放題」は無責任の裏返しであることを、再認識すべきだろう。

 既成概念や制度を批判し、「みんなで壊しましょう」という訴えは、一時的には世間の喝采を浴びる。しかし、繰り返されてきた橋下氏のこの手法は、すべて選挙で勝つためのテクニックでしかなく、じつは大衆迎合の低レベルな政治家のやることだ。

 実際、かつて橋下維新が唱えた脱原発や増税反対といった事実上の公約は、いつのまにか影を潜め、正反対のことばかりやっている。歯切れのいい橋下氏の主張の数々は、選挙のグッズに過ぎないのである。使い終わったらさっさと捨てて、違ったものを探し、唐突にそれを持ち出しては世論を騒がせる。そうして国政政党にまでのし上がったのが橋下維新の会というわけだ。取り上げるテーマの賞味期限が短かったように、維新の賞味期限もそろそろ切れる時期にきている。

 ところで、今回の騒ぎは、橋下氏へのぶら下がり会見から始まった話だ。多くのメディアが問題視して国際社会まで巻き込む事態となったが、原因をつくったのは橋下氏への過剰な報道合戦だったとも言える。

 第3極だの次代のリーダーだのと維新や橋下氏をもてはやしてきた大手メディアだが、いっそのこと、橋下氏本人が「止める」と断言した“ぶら下がり会見”そのものを、メディア側から打ち切ってしまえばいい。困るのは橋下氏の方であって、国民は痛くも痒くもない。

 そもそも、橋下氏だけを特別扱いして、日に何度も発言の機会を与えることが間違いなのだ。他の野党党首にも同じように接してきたのならまだしも、維新だけが特別待遇を得ている現状は異常としか言いようがない。

 橋下氏の一挙手一投足を追っていさえすれば、紙面や画面を飾れるというさもしい根性でぶら下がりを続けているのなら、即刻橋下氏の追っかけを止めて、他のことに精力を費やすべきだろう。大阪府や大阪市の橋下以降の改革の現状、暮らしの変化など、政治が求められる肝心の「結果」について、メディア側がきちんと検証してきたとは思えないからだ。

 次からから次へと新しい批判対象を持ち出しては世間の注目を浴びるという、いわばテレビのバラエティー番組的な手法で国民の目先をくらましてきた橋下氏。彼にこれ以上電波ジャックを許す必要などなかろうし、新聞の紙面を割く必然性もない。

 橋下氏に対し、毅然として「NO」と言うことこそ、国際社会に対してこの国の意思を示すことにつながるのではないだろうか.

 最後に橋下氏へ一言。あなたの発言に対する数々の報道が「誤報」というなら、弁護士らしく裁判所に訴えてみてはいかがですか?



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