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電力会社擁護 ― 懲りない原子力ムラ議員と民主党

2013年5月14日 10:45

民主党 与党であろうと野党であろうと、原子力ムラの送り出した国会議員は、やはり大手電力会社の声を代弁する存在に過ぎない。
 13日、参議院予算委員会の集中審議で登場した民主党議員が、電力自由化や発送電分離について懸念を示す質問を連発。さらに、原発再稼働を促し、電力会社擁護の姿勢を露わにした。
 質問者は電力労組が丸抱えで国会に送り込んだ参院議員。これまでも露骨な原発推進発言を行なってきた人物である。

電力改革にブレーキ―質問者は電力総連の組織内候補
 この日、参院予算委員会では「復興・エネルギー・原発・環境等」に関する集中審議が行われ、各党の議員が質問を行った。電力業界の声を代弁したのは民主党の小林正夫参議院議員(当選2回)。電力各社の労組で組織される「電力総連」の組織内候補である。

 政府は今年4月、発送電分離や電力小売全面自由化を実施するための「電気事業法の一部を改正する法律案」を閣議決定し、今国会に提出した。電力供給体制の根幹でもある電力会社による「地域独占」と、「発送電一貫体制」の見直しを目指すためだ。

 これに対し、政府のエネルギー基本計画や電力システム改革について質した小林氏は、はじめに原発輸出を推進するという安倍政権の立場を確認、次いで電力自由化や発送電分離でもたらされる影響について、自説を交えて政府側と質疑を交わした。 

 小林氏は、「全国津々浦々に電気を送る必要がある。電力自由化で儲かるところだけにしか電気が送られるということになりはしないか」、として離島や中山間部で送電が滞る事態があることを示唆。さらに、自身の前職が電力会社の社員で、送電部門の仕事をしていたことを明かし、「(発電と送・配電が)一貫態勢だからできた」と誇らしげに語った。電力自由化や発送電分離に懸念を示すことで、急激な改革にブレーキをかけた形だ。

 最後は、原発再稼働を促す質問。小林氏は、全国の原発のうち、関西の2基を除く52基が停止する状況となっているため、火力発電の燃料費が年間約3.8兆円かかっており、1日100億円が国外に出ているという試算結果を持ち出したのである。試算したのは電力労組。つまり、選挙母体の主張を国会で代弁しただけのことだ。

国会で露骨な原発推進
 小林氏は、平成22年3月23日の参院予算委員会の質疑で、次のような発言を行っていた。
《私は原子力発電は不可欠なもの、これからもきちんと推進をしていかなきゃいけないものだと思います。あわせて、ウランの再利用など考えると、プルサーマル発電をしっかり進めていく、それと核燃料サイクルの構築を行う。最終的には高速増殖炉、これの原子力発電、このことを行って、やはり資源が少ない国である我が国にとって、ウランを再利用していくという、こういうことが私は必要だと思います》。

《日本の原子力は54基ありますけれども、2030年までの計画ということになれば、少なくとも今の数の3割から4割ぐらい数を増やしていかないと安定した電力供給にどうなのかなと、このように思いますので、できればそういう方向でも十分検討してもらいたいし、今大臣がおっしゃったように稼働率が今65%ぐらいしかない、せっかく造った原子力発電所が稼働率65%程度になっているということですから、これを私はやはり90%ぐらいの稼働率に持っていく、そして原子力発電を有効に使っていくというこういう施策が大事じゃないかと思いますので、是非そういう方向で取組をお願いをしたいと思います》。

電力労組丸抱え
 小林氏が、国会で電力業界擁護の発言を繰り返すのには理由がある。同氏は、業界労組丸抱えで選挙を勝ち上がってきており、原発に慎重な国民世論など眼中にないのだ。

 電力総連の政治団体「電力総連政治活動委員会」は、参院選が行なわれた平成22年に「小林正夫と民主党を支援する会」(以下、支援する会)に2,000万円、小林氏本人に650万円を寄附。前年の21年には「支援する会」に3,000万円を寄附していた。「支援する会」に流れ込んだ政治資金は、機関紙である「小林通信」の印刷費などで大半が費消されている。

 小林氏を支援する電力労組系の政治団体はこれだけではない。総務省届け出の政治団体「環境・エネ政策研究会」は毎年3回、政治資金パーティ「小林正夫と国政を語る会」を開催しており、平成21年に1,430万円、22年には1,342万円を集めていた。

 小林氏の関連政治団体「民主党参議院比例区第39支部」と「支援する会」の事務所の住所は「電力総連政治活動委員会」と同じ港区三田2丁目のビルで、ここには電力総連が入居しており、小林氏の政党支部と労組が一体化している形だ。どう見ても小林氏は、原子力ムラの代表者でしかない。

懲りない民主党
 民主党のホームページには、小林氏の13日の国会質問について、次のように紹介されている。『真に国民に資する電力システム改革を求める 小林議員』。電力会社擁護の質問を、よくもぬけぬけと国民のためと言えたものだ。

 福島第一原発の惨状に加え、高速増殖炉もんじゅの運用をめぐり、1万点近い機器の点検漏れが確認され原子力規制委員会が使用停止を命じる見通しとなった。原発に関する信頼性・安全性が益々損なわれている中、民主党は、いまだに原子力ムラの肩を持つ姿勢を崩していない。懲りない政党に明日があるとは思えないが・・・・・。



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