今月13日、日本維新の会が、今夏の参院選における3人の第2次公認候補を発表した。驚いたのは、その中に元自民党参議院議員の名前があったことだ。
上野公成氏、72歳。森、小泉の両内閣で官房副長官を務めたこともある旧建設省出身の政治家だが、その活動は積水ハウスや大和ハウスといった住宅メーカーが提供する政治資金によって支えられてきた。つまり上野氏は、典型的な「族」なのである。
「族」の証明
上野氏は東大卒。旧建設省に入省してから、住宅局住環境整備室長、住宅生産課長、住宅建設課長を歴任した住宅問題のエキスパートである。平成4年に退官した上野氏は、参院群馬選挙区から立候補し初当選。第2次森内閣から小泉内閣までの通算3年3ヶ月、官房副長官の要職に就いたが、3期目を目指した平成16年の参選挙で落選し、比例区に転じた19年の参院選でも返り咲きを果たすことは出来なかった。
結論から先に述べるが、上野氏の政治活動を支えていたのは、住宅産業界を代表する積水ハウスと大和ハウスの2社。両社は、平成18年4月から19年6月までの1年3か月で、上野氏側の政治団体に対し1億5千万円を超える政治資金を提供。巨額の政治資金は、その大半が「セミナー」と称する政治資金パーティーに支払われたもので、この間に開催された政治資金パーティーは50回以上にのぼる。2日~5日の間隔で頻繁にパーティーを開いていたほか、同日に2回というケースもあった。多数の政治団体を使い分け、パーティー開催の体裁だけを整えるという、いわば政治資金規正法の抜け道を利用した形だ。
上野氏側の関連政治団体として確認されていたのは、資金管理団体「上成会」をはじめ「上野公成後援会」「上野公成を励ます会」「環境問題研究会」「高齢社会研究会」「住宅政策研究会」の6団体。いずれも上野氏本人が代表を務めるか、もしくは上野氏の元公設秘書らが代表や会計責任者を兼任していた。
この問題については、平成20年に福岡市のニュースサイト「NET-IB」が長期にわたって詳細を報道したほか、朝日新聞も西部版に記事を掲載している。
今も続く住宅建設業界との関係
平成19年の参院選後も、積水、大和を中心とする住宅建設関連業界は上野氏の面倒を見続けている。上野氏が平成16年から理事長を務める「都市再生研究所」という団体のホームページには、上野氏自身の挨拶にこう記されている。
《当研究所は平成16年度より、住宅会社、建設会社、不動産会社、設備機器会社、電力会社など大手企業に会員としてご参加頂き、運営して参りました》。
会員企業は、積水ハウス、大和ハウス、三井不動産、竹中工務店、東京電力、中部電力、関西電力、ヤマダ電機、三菱地所、TOTO。団体の理事には各社のトップが名を連ねている。中心となっているのは、おそらく積水、大和の2社だ。都市再生研究所の住所が「上野公成後援会」と同一であることから、現在も住宅建設関連業界が上野氏の政治活動を支えていると見られる。
党の綱領で、「官の統治による行政の常識を覆し」と謳い、既得権益を真っ向から否定する日本維新の会。その政党が公認候補に選んだのがバリバリの「住宅族」ともいえる上野氏・・・・。掲げた主張の信憑性に、疑問符がついた格好だ。