政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
僭越ながら:論

読売新聞さん、いい加減にしたらどうですか

2013年4月25日 10:20

読売.bmp 今月20日、読売新聞の朝刊に、憲法に関する世論調査の結果を報じる記事が掲載された。見出しは、<改正、「賛成」51%>。あたかも国民の過半数が憲法改正に賛意を示しているかのような見せ方だ。
 憲法改正を社是としている同紙のこと、立ち位置を明確にしているのは立派だが、自社の調査結果を用い、無理に世論を誘導する手法はいただけない。
(右は4月20日の読売新聞朝刊の紙面)

「憲法改正」煽る意図
 20日の読売新聞朝刊、見出しの後の記事は次のようなものだった。

 《読売新聞社の全国世論調査(3月30、31日、面接方式)で、憲法を「改正する方がよい」と答えた人は51%となり、昨年2月調査の54%に続いて半数を超えた。「改正しない方がよい」は31%(昨年30%)だった。政府が「保有するが行使できない」としている集団的自衛権に関しては、「憲法を改正して使えるようにする」が28%(同28%)で、「憲法の解釈を変更して使えるようにする」の27%(同27%)との合計は55%となり、昨年に続いて容認派が半数を超えた。
 憲法改正の発議要件を定めた96条については、「改正すべきだ」と「改正する必要はない」がともに42%で並んだ。
 今夏の参院選で投票先を決める際、憲法問題を判断材料にすると答えた人は40%で、前回参院選前の2010年調査から12ポイント上昇した。安倍首相が96条の先行改正などの憲法問題を参院選の争点に掲げていることを反映したようだ。各政党が憲法論議をもっと活発に行うべきだと思う人は76%に 上った。
 海外で事件に巻き込まれた日本人を自衛隊が輸送する場合、船舶や航空機に加えて、車での輸送を認める方がよいとする人は76%に達した》。

 読売新聞のホームページで確認したところ、調査は今年の3月30日から31日にかけて行われており、対象者は層化二段無作為抽出法によって選ばれた全国の有権者3,000人。戸別訪問をして面接のうえ、回答を得ていた。回答の回収率は49%、つまり調査に応じた人は1,472人だ。このうち51%が改憲に「賛成」ということは、750人程度が「改正すべき」と答えたことになる。

 我が国の有権者数は約1億人。いささか乱暴な計算ではあるが、読売の調査に答えたのはその内の0.0014%ということになる。改憲に賛成の人の比率はさらに少ない数字となって0.00075%。これで見出しに大きく“憲法改正、「賛成」が51%”と打てるものなのだろうか?世論調査とはそうしたもので、理論上、この程度でも一定の方向性が見出せるとされているが、どうにも納得がいかない。精度の低い調査結果を過大に見せかけ、国民を煽っているとしか思えないのだ。

記事にはならない不都合な調査結果
 世論誘導への不信を増幅させたのは、同紙の次の報道だった。無理にでも改憲に向けた風を吹かせたかったらしく、<自民や維新に追い風か…憲法改正「賛成」過半数>(読売新聞のサイト「YOMIURI ONLINE」より)ときた。記事にはこうある。

 《読売新聞社の全国世論調査で「憲法を改正する方がよい」との回答が51%となり、昨年の前回調査に続き半数を超えたことで、憲法改正に前向きな自民党や、日本維新の会などには追い風となりそうだ》。

 あたかも読売新聞の調査結果が、国を動かす原動力であるかのようなはしゃぎぶりだ。前述したように750人程度の改憲賛成派の意見が、ここまで過大視されて良いはずがない。

 両日の記事中にある《前回調査》とは、前年の3月に実施されたもので、改憲賛成と答えた人の割合は今回の調査結果より3ポイント高い。つまり、今年になって改憲賛成の意見が減っているのだが、この点については一切言及されていない。都合の悪い部分は記事に反映させない方針だったことが、実際の調査結果を見ると明確になる。

 ホームページ上の調査結果に、次のようなQ&Aがある。

Q:憲法96条は、憲法改正の具体的な手続きを定めています。憲法の改正案を国民に提案するには、衆議院と参議院の全議員の3分の2以上の賛成が必要ですが、これを緩和して、過半数の賛成で提案できるように改正すべきだという意見があります。憲法96条の改正について、回答リストの中から、あなたの考えに最も近いものを、1つだけあげて下さい。 
【回答】
1、まず96条を改正すべきだ 16%
2、96条は改正すべきだが、具体的な憲法の内容も一緒に議論すべきだ 26%
3、96条を改正する必要はないが、具体的な憲法の内容は議論すべきだ 19%
4、96条を改正する必要はない 23%
5、答えない 15%

 改憲への道のりで最初のハードルとなるのは、96条に定められた衆・参両院の3分の2以上とされる発議要件だ。改憲賛成派が「51%」だったとするなら、96条改正に前向きな人が同程度いるはずなのだが、この点についてのQ&Aの結果は微妙。「まず96条を改正すべきだ」と答えた人は16%に過ぎず、26%は改正の必要を認めながらも「具体的な憲法の内容も一緒に議論すべきだ」としている。安倍首相が目指す96条のみを先行して改正することには慎重ということだ。20日の記事では《憲法改正の発議要件を定めた96条については、「改正すべきだ」と「改正する必要はない」がともに42%で並んだ》としているが、実際の調査結果を見ると無理やりに両論を括っていることが分かる。

 読売がもっとも記事にしたくなかったのは、憲法9条についての次のQ&Aの結果だろう。

Q:「戦争を放棄すること」を定めた第1項については、改正する必要があると思いますか、ないと思いますか。
答え 1、ある 19%  2、ない 74%  3、答えない 7%

Q:「戦力を持たないこと」などを定めた第2項についてはどうですか。
答え 1、ある 44%  2、ない 45%  3、答えない 11%

 安倍首相が96条を先行して改正する方針を打ち出しているのは、「9条」を変えるための布石だ。国防軍を創設して戦争をやりたい人たちにとって、この調査結果は極めて不愉快なものだろう。別の新聞社なら、見出しに“戦争放棄、74%が支持”とでも打ち、9条第一項の改正に否定的な国民が多いことを報じるのではないだろうか。

 2番目の「戦力」についてのQ&Aも、改憲派には目障りな結果となっている。回答した人の45%が、《前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない 》とする9条第二項を変えなくてもよいと答えているのである。いずれの結果も、安倍首相の思惑とは違う方向性を示している。当然ながら、安倍応援団の読売としては記事にするわけにはいかない。

世論誘導
 “憲法を磨く”という意味において、改憲の是非をめぐる議論を活発化させることは結構だ。しかし、世論調査の結果を誇大に宣伝し、国論が定まりつつあるかのように偽装することは、報道がやるべきことではあるまい。

 昨年、解散・総選挙が決ってから、読売は常に自民党優勢の世論調査結果を大々的に流して、民主凋落を演出。一連の選挙情勢に関する報道は、客観性、中立性に疑問を抱かざるを得ない内容ばかりで、結果として自民党の政権返り咲きを助ける形となった

 原発推進、憲法改正―いずれも読売の社是である。紙面でそれらに関する論陣を張るのは大いに結構。自民党や財界を擁護するのも読売らしくて分かりやすい。しかし、世論調査の結果から、ごく一部の数字だけをことさら大きく取り上げ、国内世論を動かすことに利用するという手法には賛同しかねる。
 いっそのこと、「これは世論誘導のための調査です」と断ってから調査をやってくれたほうが親切だと思うのだが・・・・・。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲