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福岡市事業 NPO法人と関連企業に多額の支出
~「中高生夢チャレンジ大学」で疑惑の経理~

2013年4月11日 10:10

中高生夢チャレンジ大学 福岡市が、約1,000万円の公費を投入して西日本新聞社やNPO法人などと共同で行っている「中高生夢チャレンジ大学」をめぐり、疑惑を持たれてもおかしくない事業資金の動きがあることが分かった。
 同事業に負担金を拠出しているはずのNPO法人は、実際には現金を出しておらず、逆に法人側とその関連企業に多額の業務委託が行なわれていた。人件費の計算にあたっては時給を4,800円に設定するなど、一般常識を超えた経理処理が容認されている。
 子どもをダシに、NPO法人とその周辺が食い扶持を稼ぐ形となっており、公費支出の正当性が問われる事態だ。

NPO法人の負担金―架空計上の疑いも
 昨年4月、福岡市と西日本新聞社、そしてNPO法人グリーンバード福岡チームが「中高生夢チャレンジ大学」事業の推進にあたって必要な事項を定め、協定を結んだ。協定書の中では、事業経費の分担について次のように記されている。
《事業に必要な経費は、甲、乙及び丙の負担金並びにその他企業の協賛金等の収入を持ってこれにあてる》(注:甲=福岡市、乙=西日本新聞社、丙=NPO法人グリーンバード福岡チーム)。

 事業企画書に添付された予算書には、福岡市が1,048万2,000円、西日本新聞社が315万円、そして残りの294万円をグリーンバードが負担することになっており、市はこの決まり通りに、同額を実行委員会の経理を取り仕切った西日本新聞社に入金していた。

 HUNTERが注目したのはグリーンバードの負担金だ。福岡市への情報公開請求で入手した同事業の予算書や決算報告書によれば、グリーンバードが294万円を実行委員会に拠出したことになっている。ところが、福岡市の担当職員に、入金の事実はどうやって確認するのか聞いたところ、すぐには分からないという。帳簿や通帳がないためだ。(下の文書参照。赤いアンダーラインはHUNTER編集部)

中高生夢チャレンジ大学 収支決算書

 回答は数時間後となったが、結局グリーンバードの負担金は書類上の話。つまり現金は動いていない。それではなぜ決算報告書に収入として計上されているのか?
 グリーンバードは、予算額ぴったりの294万円の人件費を使ったとして、拠出金と相殺する形で処理させていたのである。下がその計算根拠だ。

計算根拠

 驚いたことに「時給4,800円」で計算されており、一般常識からかけ離れた額であることは一目瞭然だ。市の担当職員でさえ知らなかったことが堂々と行われ、実行委内の監査も通っていたことになる。架空計上の疑いも否定できず、お手盛りもここまで来れば詐欺的手法と言うしかない。

税金を食い物?
 さらに関連文書を検証すると、子ども向けの事業であることを盾に、税金を食い物にしているとしか思えない実態が浮かび上がった。

グリーバードが実行委に出した「請求書」 右の文書は、グリーンバードが実行委に出した「請求書」(前出の人件費は、この請求書の下段に明記されている)であるが、様々な理由を付けて、約312万円の支払いを要求している。ただし、内訳に記された金額については、個別の領収書が存在していない。実行委事務局は、グリーンバードの請求通りに支出を行ない、「投げ渡し」にしている状態なのだ。まともな公費の取扱い方ではない。

 費目ごとの単価設定も乱暴だ。赤いアンダーラインで示したように、講座企画費は計200万円。中高生夢チャレンジ大学は「観光」、「企業」、「食」、「ゲーム」、「ファッション」の五つの講座を設定しているが、それぞれの講座の企画代として40万円が計上されている。詳細を表す書類がないため、なぜこうした高額な企画費が認められたのか分からないが、ボランティアを売りにしているNPO法人の所業にしてはタチが悪い。

高額請求の有限会社はグリーンバードの関連企業
 極めつけは次の請求書である。

請求書

 請求金額は約200万円。チラシ・新聞広告・校章・のぼりなどのデザイン料が80万円となっているほか、開校式の運営管理に20万円など、高額な単価が並ぶ。複数のデザインの専門家に、入手できたいくつかの現物写真を提示した上で「デザイン費」についての感想を聞いてみたが、「法外。全部入れても、高くて20万円」、「1件のデザインにつき10万円という設定になっているが、ちょっと考えられない。下請に出してピンはねしているとしか思えない」などといった回答だった。

儲かったグリーンバードとその周辺
 この請求を出したのは、市内のある有限会社だが、同社の住所はグリーンバード福岡チームの事務所と同じビルの一室。法人登記を確認したところ、不動産業のほか広告代理やイベント企画などを主業務としてしていることが分かった。何のことはない、グリーンバード福岡チームの代表者が立ち上げ、現在も取締役を務める会社なのである。
 「中高生夢チャレンジ大学」をめぐって、グリーンバード福岡チームとその関連会社に、同実行委員会から合計500万円もの支出が行われていたことになる。

 「中高生夢チャレンジ大学」の事業で福岡市が負担した約1,000万円の税金は、西日本新聞とグリーンバード福岡チーム関連ですべてが費消され、不足分を参加費や協賛金で賄った形。一番儲かったのはグリーンバードとその周辺という見方もできる。しかも、グリーンバードは前述のように、出すべき負担金を非常識な人件費と相殺させているのだから、悪質とみられておかしくない格好だ。

グリーンバード福岡チームの対応
 9日、一連の不透明な経費について話を聞くため、グリーンバード福岡チームの連絡先に電話したところ、同チームの一員で中高生夢チャレンジ大学の実務者委員になっている男性が応対した。

 当初、「私でも分かると思います」としていた男性委員は、時給4,800円の人件費計算について高すぎる額ではないかという記者の問いに、大学講師の時給を例にトンチンカンな反論。さらに講座企画料の40万円について質すと、「私はその部分にはタッチしていない。代表者でないと分からない」と言い出した。
 やむなく記者の携帯電話番号を告げ、代表者からの連絡を待ったが、11日朝まで何の反応もない。税金を使った事業に参加し、多額の収入を得ておきながら、説明責任は果たさないということだ。なお、HUNTERの電話取材に対応した男性委員は、前出の有限会社が同居していることだけは認めている。

問われる事業の正当性
  「中高生夢チャレンジ大学」は子どもを対象とした事業だ。しかも、すでに100名を超える卒業生がいる。不適切な事業の実態を暴くことで、傷つく人間がいるかもしれない。しかし、子どもをダシに税金を使って懐を肥やす手法は、決して許されるものではなく、事業の正当性そのものが問われる事態だ。
 真剣にこの事業に取り組んだ関係者達のことを、市や西日本新聞、グリーンバードはどのように考えているのだろうか。



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