政治・行政の調査報道サイト|HUNTER(ハンター)

政治行政社会論運営団体
僭越ながら:論

市民不在 ― 私物化進む福岡市政

2013年4月12日 10:20

fukuoka-shiyakusho_t.jpg 今年に入って、福岡市役所の問題点を報じる機会が増えた。市顧問が絡む不透明な業者選定、地元メディアへの過大な業務委託、実行委員会方式で実施されている事業の問題点・・。批判対象が、特定の人間やメディアあるいはNPO法人となってしまったことになるが、税金を使った事業に関与した以上、関係者に説明責任を果たす義務があることは言うまでもあるまい。
 一部の人間に権力が集中する状況でメディアが沈黙すれば、監視機能が働かなくなってしまい、結果として市政が歪む。これが市民が知らない現在の福岡市の姿だ。

権限集中の弊害 
 「広報戦略室に権限が集中しており、なんでもかんでもお伺いを立てなければならない。とくに市長の友人である市顧問が承知していない広報がらみの案件は、前に進むことすらできない。異常事態だ」―ため息混じりに話してくれたのは同市の古参職員。続けてこうも言う。「外部の人間を入れて新しい風を取り込むのも大切。しかし、顧問の立場を利用して、業者選定に関与したり、ボス気取りで市の業務を統括するのは間違い。同業者を選ぶ業者選定に委員として参加するなど、常識をわきまえていれば考えられないことだ。こんなことを認めてきた周辺の職員も情けないが、問題を報じないマスコミもおかしい。記者クラブも広報戦略室にコントロールされているとしか思えない」。
 市役所の現状を市民に知らせることができない市関係者には、何とも歯がゆい日々が続いているのである。

生かされぬ職員の能力
 おおかたの福岡市職員はまじめで優秀である。取材で訪れた九州の自治体の中では、一番と言っても過言ではない。政策立案能力も高い。市民の目線を常に意識しているらしく、上からモノを言う職員は少なくなった。1万人の大所帯であるから事件や事故も起きるが、個々の職員の意識は決して低くない。彼らを使いこなし、いい仕事をさせるのが市長の使命だろうが、吉田、高島と2代続いた若い市長には、それができなかった。

 とくに高島氏は職員のモチベーションを下げるようなことしかやっていない。思いつきで事業を始め、尻拭いだけを職員に押し付ける手法は、子どもの遊びの延長だ。不祥事を起こした職員に対する「腐ったミカン」発言や、それに続いた飲酒禁止などは、職員だけに責任を押し付ける愚行。市職員の能力を引き出すどころか、抵抗勢力に見立てた保身策ばかりが注目を集める有様だ。タレントアナ出身だけにゴマカシがうまく、よくやっていると見る向きもあるだろうが、肝心の市役所が死に体同然になっていることを、いずれ市民も知ることになるだろう。

まかり通る非常識人事
 問題はまだある。福岡市の関係者から聞こえてくるのは、渦中の市顧問や市長の私設秘書といった外部の人間が幅を利かすことへの批判である。彼らは、時に人事にまで口を出すという。その結果かどうか、今春の人事では組織崩壊を招きかねない非常識な異動が行われた。高島宗一郎市長自らが選んだ副市長2人を、任期途中で事実上のクビにし、後任の1人を部長から一足飛びに引き上げたのである。
 異例の人事だが、極めて評判が悪い。「よりによって」(40代市職員)、というのが新副市長を知る関係者の一致した見方である。抜擢人事でこれほど批判が出るケースも珍しい。

 人事への不満はこれだけではない。残ったもう1人の副市長は県警OBなのだが、この方が何をやっているのか、さっぱり分からないというのだ。市幹部OBは次のように語る。「市役所内部で市長やその側近たちに批判的な人間を洗い出すため、県警出身の副市長が先頭に立って指示を出していると聞いた。事実なら職員間に疑心暗鬼を生じさせ、萎縮した組織にしてしまう。正気の沙汰とは思えない。市長にモノを言う職員が何かと理由を付けて異動させられ、遠ざけられているのは事実で、市役所が私物化されていると言うべきだろう」。
 この話は、もともと県警OBの副市長への登用自体に懐疑的な見方があったことに加え、非常識な人事が続く状況への反発が高まっていることを示している。

私物化の現状
 市政の私物化については、問題のメディアへの業務委託や実行委員会方式による事業についての記事で再三指摘してきたところだ。
 いずれも施策の決定過程が不透明で、いつ、誰が、何のために実施を決めたのか判然としないものばかり。昨日までに報じた「アイランドシティ こどもっと!だいがく」と「中高生夢チャレンジ大学」は、それぞれ吉田宏氏、高島氏という歴代市長の時代に始まった事業だが、どちらも唐突に予算化され、情報公開請求で入手した資料からは、これらの事業の必然性を読み取ることはできない。一部の人間の思いつきで始められた場合によくあるパターンで、つまりは私物化の一端なのである。

報道の使命 
 メディア関連企業へ、市から4年で5億5,000万円もの業務委託が行なわれていた事実には、市民だけでなく市内部からも驚きの声が上がった。一連の事業や業務委託の真の目的が、メディアの懐柔であったり、特定の組織や個人への利益獲得にあったとすれば、市役所の病状は重篤と言わざるを得ない。
 残念ながら、こうした実態について、市政記者クラブの記者たちが発信した報道に接した記憶がない。だからHUNTERが報じる。権力を監視し、事実を知らせるのが当サイトの目的だからだ。

 市役所がらみの報道を続ける中、“もっと詳細を知りたい”、“続報を期待する”といった励ましから、マイナス報道は止めろといったご批判まで、様々なご意見メールを頂戴した。ひどいのになると、子どもを対象とした事業の記事の内容が、何らかの利益を目的にしている大人のいじめで、女性の感性とネットワークをなめるな、というものもある。筋違いである。税金を使った事業において、不適切使用が許される例外などないはずだ。もちろん、「私物化が進んだ、かつてない非常事態」(50代市職員)に陥った市役所を、放置していいはずがない。市民不在の市政など、誰も望んでいないのだから・・・。



【関連記事】
ワンショット
 ガラスの向こうに積み上げられた洋書。オシャレな入り口の奥...
過去のワンショットはこちら▼
記事へのご意見はこちら
調査報道サイト ハンター
ページの一番上に戻る▲