福岡市が、マスコミ関連企業に4年で5億5,000万円以上の公費支出を行なっていたことが明らかとなった「業務委託」に関し、新たな疑問が浮かび上がった。
地元紙・西日本新聞とそのグループ企業への業務委託は、同紙出身の吉田宏・前市長時代に集中した形となっていたが(4年間の総額・4億7,000万円)、高島宗一郎市長の就任後に行われた委託契約にも不可解な点があることが分かった。
平成24年度に行われた4件の業務委託契約について検証したところ、市内部で行われている事業者選定に、「結論ありき」だった疑いが生じている。とくに、市広報戦略室の動きに注目した。
疑惑の選定過程
HUNTERが入手したマスコミ系列への業務委託関連文書によれば、平成24年10月、福岡市は次の2件の業務委託契約を結んでいた。
福岡市内の新聞販売部数からいけば、上から西日本、読売、朝日の順となってもおかしくないのだが、朝日公告社が1位で読売の西部本社が2位という結果(契約内容から判断)を見れば、提案内容によほどの差があったということになる。果たしてそうなのか?
次に示すのは、ある選考委員の採点表だ。明らかに点数を書き直していたことが分かる。
書き変えられる前の数字なら、C社は60点、F社は70点、H社は55点だった可能性があり、そうなるとH社はC社(60点)以下、A社(55点)やE社(55点)と並ぶ形だったことになる。他の3人の採点表を見て、足並みを揃えるために書き変えたのではないかと疑われてもおかしくない格好だ。
これでは、はじめから朝日と読売を選ぶことを決めた上で、アリバイ作りのために選考という形を残した可能性が否定できない。
またしても市顧問が選考に関与
アイランドシティの事業を所管しているのは市港湾局だが、問題の2件の業務委託は市長室直轄の広報戦略室広報戦略課の予算が使われており、事業者選定でも広報戦略室サイドが主導権を握っていた。選考委員の顔ぶれは次の通りである。
選考委員4人のうち、港湾局の人間はわずかに1人。広報戦略室側からは、室長、課長に加え、同室の下で市顧問を務める後山泰一氏が加わっていた。
後山氏は、高島市長の友人で民間企業の代表者だが、同氏がからんだ他の業者選定については、これまで度々問題点を指摘してきた。
後山氏は、高島市長の発案により実施された市役所1階改装工事の設計業者選定において、選考委員会委員長を務めていたほか、仮想行政区「カワイイ区」の継続を狙って実施された都市認知度調査の業者選定でも選考委員となっていたのである。
その認知度調査の「事業者選定委員会」の委員はわずかに3人。広報戦略室所属の課長2人と後山氏だった。
お手盛り選考さらに
広報戦略室がらみの業務委託では、次の2件も怪しい。
この2件の事業者選定を行なったのは、広報戦略室、市民局、博多区役所に所属する3人の課長なのだが、採点表を確認したところ、いずれの選考でも3人のつけた順位がまったく同じ結果となっていた。ここでも朝日、読売それぞれの系列に仕事を振った形となっていた。お手盛り選考には疑問が尽きない。