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原子力規制庁のお寒い実態
7割が経産省出身 課室長級は保安院組ばかり

2013年3月12日 09:50

 昨年9月に発足した原子力規制委員会の事務局機能を担う原子力規制庁の実態が明らかとなった。
 同庁発足時の職員455人のうち、約70%にあたる315人が経済産業省の出身、このうち「課室長級」の幹部職員では、43人中28人(65%)が同省原子力安全・保安院の出身者で占められている。他の課室長級職員の出身省庁を見ると、文部科学省から10人となっているほか、環境省からの3人、防衛省からの1名に過ぎない。文科省組10人の中の4人は、保安院への出向経験がある。
 原発を規制する機関として独立性を担保するため、原発推進の経産省から切り離し、環境省の下に新設された同庁が、じつは従来と変わらぬ経産省主体の布陣で規制行政を行っている形だ。
(写真は、昨年9月までの経済産業省の看板)

原子力規制庁 
 原子力規制委員会は「原子力規制委員会設置法」に基づき、昨年9月に環境省の外局として設置された。委員長を含む5人の有識者で構成する同委員会の下で事務局機能を担うのが原子力規制庁である。
 同庁の初代長官は警察庁出身で元警視総監の池田克彦氏、次長に環境省出身の森本英香元内閣審議官を据えているほか、緊急事態対策監には原発を推進してきた元資源エネルギー庁原子力政策課長の安井正也氏、審議官に経産省出身の櫻田道夫氏と山本哲也氏、原子力地域安全総括官には警察官僚の黒木慶英氏をあてている。
 発足時には3人だった審議官だが、文科省出身の名雪哲夫前審議官が、日本原電敦賀原発(福井県)の活断層調査をめぐり、原電側へ評価報告書案を漏洩していたとして今年2月に更迭され、その後は2名体制のままとなっている。

大半は経産省出身
 原子力規制行政の実務を担う態勢はどうなっているのか?HUNTERが原子力規制委員会原子力規制庁への情報公開請求で入手したのは、同庁発足時の平成24年9月19日現在の出身省庁別の人数内訳と、課室長級幹部職員の出身省庁を示す文書。このうち、下が出身省庁別の内訳である。

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 下部組織だった原子力安全・保安院を抱えていた経済産業省から351人が移籍、全職員455人の7割を、“原発推進官庁”の役人で占めた形となっている。

 実際に規制庁をコントロールする「課室長級」の幹部職員を、入手した人事異動名簿で見ると、43人のうち28人が保安院の役職経験者。文部科学省からの移籍組10人のうち4人が保安院で役職に就いた経験を有していた。文科省からの移籍組では、2名が旧・原子力安全委員会への出向経験を持っている。
 課室長級の幹部職員で、保安院や文科省以外から選ばれたのは、環境省からの3人、防衛省からの1名に過ぎない。

問われる独立性
 原子力規制委員会は、今年7月までに原発の新たな安全基準を策定する方針だが、同委員会に向けられた国民の視線は厳しい。
 規制委発足直後に取り組んだ放射性物質の拡散予測をめぐり、全国の原発における予測図に誤りであることが判明、いったん訂正したが、再び誤りが見つかり再訂正するなど醜態を演じた。
 さらに、前述した名雪前審議官の情報漏洩で、規制する側と電力業界の癒着体質が温存されていることを露呈、原発規制を担う役所としての信頼性に赤信号が点る状況となっている。

 幹部級をはじめ、経済産業省の役人主体で構成された規制庁に、多くを期待することは難しいようだが・・・・。



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