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福岡市・事業見直しの実態―目立つ市民の負担増―
見えないムダの削減

2013年3月 5日 06:45

 福岡市が財政再建策の一環として行った市関連事業の見直し(事業レビュー)の結果から、市民負担を増やそうとする高島市政の実態が浮き彫りとなった。
 市関連施設すべてにおける駐車場代の徴収や施設使用代金の値上げ、私立学校への補助打ち切りなど、市民の負担増につながる検討結果ばかりが目立つ一方、問題となっている「カワイイ区」などのムダな事業については、検討の対象にさえなっていない。
 市民の暮らしには目もくれず、デジタルコンテンツや観光に関する施策にばかり税金投入を続ける高島市政に、地方自治の専門家からも疑問の声が上がっている。
(写真は福岡市役所)

市関連施設駐車場―すべて有料化の方向
スプリングレビュー調査票 HUNTERが福岡市に情報公開請求して入手したのは、見直し対象事業81件についての所管局と市財政局とのやり取りを記録した「スプリングレビュー調査票」。

 スプリングレビューとは、昨年4月から市内部で行われた既存事業の総点検のこと。対象事業について所管局と財政局との間で検討・協議を行い、社会的役割を終えたものや行政関与のあり方に見直しが可能なもの、費用対効果に疑問があるものなどを整理し、行財政改革プランの策定の中で取り組みを検討するため取りまとめられた。

 調査票によると、明らかに市民への負担増となる方針を示した検討内容となっているものが目立つ結果となっていた。右は、博物館と美術館に関する事業の調査票だが、『財源確保のため、駐車場を有料化する』、『65歳以上の観覧料減免については、全市的な整理の上、廃止を検討』などという文言が並ぶ(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)。高齢者に冷たい高島市政の現状を如実に物語る内容だ。

 全体の中で、もっとも市民サービスの低下を印象付けているのが市関連施設における駐車場利用の有料化方針だ。博物館、美術館、図書館、市民センター、体育館、プール、公園といった大半の施設の駐車場利用料金について、有料化を検討する方針であることが明記されており、利用者から不満の声が上がりそうだ。

 また、次のような市民の地域活動などに直結する施設の使用料金も値上げされる見通しで、こちらも市民団体や自治協議会などから批判が出る可能性が高い。

  • 市民センター、地域交流センター使用料⇒減免措置、料金設定の見直し(事実上の引き上げ)。
  • 体育館、プールの使用料⇒減免措置、料金設定の見直し(事実上の引き上げ)。

私立教育は切捨て
 教育分野でも、私立への補助をばっさり切り捨てることが決められている。

  • 私立高等学校学校補助金(私立高校への設備・備品整備と教職員研修経費を補助。平成24年度予算額4,558万4,000円)⇒平成26年度から廃止。
  • 私立小中学校補助金(私立小中学校への設備・備品整備を補助。同290万4,000円)⇒平成26年度から廃止。

 私立学校への補助廃止の理由は、「義務教育充実のため」と記されている。教育の機会均等が求められる中、市のムダな事業を放置したまま、私立だからといって教育関連予算を削ることが褒められるとは思えない。一体、高島市長は何を考えているのだろう。

 地方自治体の首長や首長関係者に福岡市の「スプリングレビュー調査票」を見てもらったところ、次のような感想を寄せてくれた。
「見るべきものがない。本当に切り捨てなければならない事業はほかにあるはず。HUNTERが報じてきた『カワイイ区』などはその最たる例。この調査票には、廃止される私立小・中学校の補助額が290万円だと書いてある。私立高校への補助が約4,600万円でこれも打ち切りだ。カワイイ区の初年度に1,000万円かけたのなら、翌年度もカネがかかるはず。教育よりカワイイ区の方が大切であるわけがない。高島さんは政策の優先順位がわかっていないのだろう」(首長経験者)。

「市民負担ばかりが目立ちますね。福岡市は二階建てバスを購入したり、市役所の改装をしたりで5億円以上使ってるそうじゃないですか。市長さんの肝いり事業は何でもOKで、市民の駐車場使用は有料化だというんじゃ、市民は踏んだり蹴ったりですね」(現役市長)。

市長給与20%削減への冷やかな視線
 高島市長は先月、今年4月から来年12月までの任期中、自身の給与とボーナスをそれぞれ20%、退職手当を50%減額すると表明した。安倍政権が地方自治体に求めている公務員給与の削減を受け入れるにあたって、自身の給与をカットすることで職員や市民の理解を得たいとの思惑からだ。しかし、市職員や事情を知る市民からは冷やかな視線が向けられている。市長は、就任直後の平成23年1月、同16年から続いていた市長と副市長の10%給与カットを突然打ち切っていたのである。

 単に市長の給与が年間156万円増えたというだけのことではない。8年間も続いた財政削減にかける市としての意思表示が、いとも簡単に放棄されたあげく、人員や経費の削減に苦労する市職員をよそに、市長、副市長の給与だけがアップする状況となっていたのだ。しかも、給与カット中止を、報道されるまでの2年間近く公表していなかったのだからタチが悪い。 
 高島市長は胸を張って給与等の20%カットを公表したが、実質は10%カットに過ぎないことを知る関係者は憤る。「(20%カットは)いつものパフォーマンス。勝手に賃上げした自分の給料を返してからモノを言え」(市職員)。

 高島市長が市の顧問に据えた友人の会社社長が、好き放題をやっている現在の福岡市。この程度の事業見直しでは、どう言い逃れしても市民の共感を得ることはできそうにない。



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