高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致にからみ、現職の森田俊彦町長(53)が電力業界の関係者と見られる会社社長と親密な関係を続け、モーターボートを譲り受けていたことが判明した鹿児島県肝属郡南大隅町で、前町長、町議会議長、漁協組合長ら町の有力者が、問題の会社社長に処分場誘致を一任する文書を渡していたことが明らかになった。町長に就任する直前まで商工会長だった森田氏もこの中に含まれている。
前町長は5日、HUNTERの取材に対し、文書の存在を認めた上で、問題の会社社長の背後に「東京電力」の存在があったことや飲食などの接待を受けたことまで証言した。
正体不明の会社社長を軸にした“核のごみ”をめぐる疑惑が、現職町長から町の有力者にまで拡がり、黒幕として東電が浮上した形だ。
(写真は南大隅町役場)
疑惑の文書の存在認めた前町長―黒幕は「東電」
疑惑拡大の発端は、森田町長の周辺取材を進める中、「平成19年か20年に、町の有力者がこぞって東電の代理人に念書を書いた、接待も受けている」という複数からの情報提供だった。平成19年といえば、南大隅町で町や町議会関係者らが「高レベル放射性廃棄物最終処分場」の誘致に動き、ニューモの人間を呼んで説明会を開いた時期。当時の町長は税所篤朗氏だった。
5日、南大隅町内の自宅でHUNTERの取材に応じた税所前町長は、高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致を主導したのが、森田町長との親密な関係が明らかになった「オリエンタル商事」(東京都千代田区)の原幸一社長だったことを認めた上で、およそ次のように語った。
不可解な原氏への委任文書―疑惑拡大へ
記憶をたどりながら、確認するように話す前町長だったが、原氏への委任文書の件や東電の勝俣会長(当時)に会った時のことは鮮明に覚えていた。
今回の取材で存在が明らかになった文書は、オリエンタル商事社長の原幸一氏に、高レベル廃棄物最終処分場の誘致についてのすべてを任せるという内容だ。正体が分からぬ相手に対し、町長をはじめ町の有力者達が揃ってそうした文書を渡していたとすれば、もはやまともな誘致話であるはずがない。
ただ、原氏が町長や町関係者に対し、自分の背後に控えているのが東京電力であることを強調し、税所前町長を当時の勝俣会長にまで引き会わせていたという事実は、原氏の後ろ盾が東電だったことを示している。“黒幕は東電で決まり”ということだ。
勝俣恒久氏は平成20年2月、柏崎刈羽原圧の事故の責任を取り東電社長を辞任、代表取締役会長に就任していた。『勝俣さんが会長になってすぐの頃』に、東電の会長室で勝俣氏に引き合わされたとする税所前町長の話と符合する。
任期終了間際だったとはいえ、処分場誘致を働きかけていた原氏から食事の接待を受けていた前町長や議長に、収賄の疑いが持たれる事態であることも間違いない。
処分場が建設されれば巨額な補償金を手にする予定だった漁協の組合長が、この接待に同席していたことも見逃せない。町ぐるみの買収が行なわれていたと言っても過言ではない“核のごみ”をめぐる疑惑だが、不可解なのは原氏に対して出された委任文書の内容だ。なぜ、原氏に処分場誘致の一切を任せる文書が必要だったのか・・・?
HUNTER取材陣は、その謎を解く鍵を握る人物との接触に成功。問題の文書についての経緯や、森田俊彦町長が就任後に東電を訪問していたことなど、一連の疑惑について核心に迫る証言を得た。以下、次稿で詳報する。