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鹿児島・南大隅町長に収賄の疑い
背景に高レベル放射性廃棄物の最終処分 ―蠢く原子力ムラ―

2013年3月 1日 09:35

 風光明媚な薩南の静かな町に、町政トップの収賄疑惑が浮上した。
 鹿児島県肝属郡南大隅町の森田俊彦町長(53)が、電力業界の関係者と見られる会社社長と親密な関係を続けていたことが判明。平成22年に、その社長からモーターボートを譲り受けていたことに加え、指宿市にある社長の別荘、東京の本社などを訪れていたことも分かった。
 先月15日のHUNTERの取材に対して、疑惑を真っ向から否定していた森田町長は、26日になって社長との関係も含めそれまでの主張がすべて嘘だったことを認めている。
 背景にあるのは、「原子力発電環境整備機構」(ニューモ)が進める「核のごみ」=高レベル放射性廃棄物の最終処分地問題。町長の収賄疑惑で原子力ムラの暗躍が顕在化した形だ。

疑惑のモーターボート
ボート 昨年12月、南大隅町をめぐる放射性廃棄物の最終処分地問題を追っていたHUNTERの記者が、あるモーターボートの存在をキャッチした。右がそのモーターボートである。
 モーターボートの持ち主は、町政トップの森田俊彦町長。周辺を調べたところ、町長が問題のモーターボートを原子力ムラの人間とおぼしき人物から取得した可能性が浮上、2か月にわたって取材を続けていた。

 その結果、森田町長にモーターボートを譲り渡したと見られているのが、東京に本社を置く「オリエンタル商事」という会社の代表者で、平成19年頃から始まった南大隅町における高レベル放射性廃棄物の最終処分場誘致問題で、重要な役回りを果たしていた人物であることが分かった。

 民間の調査会社などによると、オリエンタル商事の主業務は船舶リース。取引先には大手ゼネコンのほか、電気事業連合会もそのひとつに挙げられている。ただし、同社社長は取材に対し、電気事業連合会との取引について否定している。

疑惑を完全否定―オリエンタル商事社長の話
オリエンタル商事 先月13日、東京都千代田区麹町にある「オリエンタル商事」の本社を訪ねたが、同社の原幸一社長は面会による取材を拒否、電話で話を聞くことになった。以下、オリエンタル商事本社事務所前での原社長とのやり取りである。

 記者:社長がお持ちだったモーターボートの写真を見ていただいた上で、お話を聞くことはできないか?
 社長:俺はモーターボートは持ってるよ。でかいの。

 記者:南大隅の町長さんをご存知ですね?
 社長:うん、知ってるよ。

 記者:町長にモーターボートを譲られてますよね?
 社長:譲ってないよ。そんなことは。

 記者:違います?原社長のモーターボートだったものが、いまは町長の持ち物になっているということじゃないですか?
 社長:違うね、それは。誰が言ったか知らないけども。

 記者:船体番号を見ていただいた上で、お話をうかがえませんか?
 社長:だから、それはぜんぜん間違いだよ。俺の名義とか、俺のもんじゃない。ぜんぜん。それはもう、ぜんぜん間違い。調べればいい。あんた達はそれが商売だから、調べればいいじゃないよ。

 記者:直接話が聞けたらと思って、お伺いしたんですが?
 社長:俺は大きい船は持ってるけどね、ちいちゃい船なんか持った覚えがないから。なんかそういう話をねぇ、俺がどうのこうのしたとか、売ったとか売らないとかって話を誰かがして回ってるみたいだけどね、話自体が嘘。うん。どうせ。誰が言ったのか知らんけども、ない話よ。

―― 中略 ――

 記者:南大隅で、放射性廃棄物の最終処分場に関して動かれたのは事実ですか?
 社長:ああ、それはねぇ、頼んだことはある。だいぶ前にね。

 記者:これはオリエンタル商事の仕事と関係ないように思えますが。
 社長:関係ないね。俺が個人的に前の町長の時に頼んだ。それは記事にもなってるから、その時に終わった話だから。

 記者:それ以後はまったく関係ないと?現在の町長とは、どうのこうのはまったくないと?
 社長:ない。下世話の話。前の町長と話をしたのは事実だけど。

 記者:最後に聞きますが、モーターボートをあげたり、売ったりした覚えはないということでよろしいですか?
 社長:やった覚えも、売った覚えもないし。

 前町長に放射性廃棄物の最終処分場誘致を持ちかけたことは認めたものの、オリエンタル商事の社長は、モーターボートを森田町長に譲り渡したことを完全否定していた。

貸付金のカタ―森田俊彦南大隅町長の話
20130228_h01-01t.jpg 東京での取材を終えた記者は、翌々日の15日、南大隅町役場の町長室で、森田町長と向かい合っていた。同席したのは同町の総務課長である。
 福島第一原発の事故によって発生した放射性物質汚染度の処分地として、政府内で南大隅町が候補地になっているとの報道について話を聞いたあと、モーターボートについての問答となった。以下、そのやり取りである。(写真は南大隅町役場)

 記者:単刀直入に聞きます。町長はモーターボートをお持ちなんですか?
 町長:・・・・・。

 記者:(写真を示して)これ、町長名義のボートということなんですが?
 町長:はい、はい。

 記者:町長の名義になってるということで間違いないですね?
 町長:はい。

 記者:ボートは、東京のオリエンタル商事の原さんから取得したというのは事実ですか?
 町長:いえ、違います。

 記者:じつは、東京で原さんに話を聞いて、事実無根だと言うので、念のため確認なんですが、まったく違いますね?
 町長:まったく違います。

 記者:原さんをご存知ですか?
 町長:何回か名前が出てますよね。

 記者:お会いになったことはございませんか?
 町長:えーっとですね、相当前ですよね。

 記者:原さんは放射性廃棄物の処分場のことを前の町長に頼んだことは間違いないと認めてるんですが、そのことはご存知ですか?
 町長:いえ、分かりません。それは。事実かどうかということは分かりません。我々がその名前をお聞きしたのは、多分その平成19年の時、前町長が議会と話をされたと・・・・。我々のところでも、よく紛らわしく言われるのは、そこがまだ生きていて、どうのこうのという話をされるということですよね。

 記者:うちが一番聞きたかったのは、ボートのことなんですが、疑惑を呼んだことに町長は何か心当たりは?
 町長:分かりません。ちょっとまぁ、私の知り合いが倒産したもんで・・・・。まぁ、それがどういう話になったのか分かりませんけどね。

 記者:そちらから(ボートを)取られたと?
 町長:(うなずく)

 記者:いくらくらいで買われたんですか?
 町長:いや、お金ではないんですね。お金ではないと思うんで。貸してたんで・・・・。

 記者:鹿児島の方に貸してたんですか?原さんとはぜんぜん関係ないということでよろしいですね?
 町長:はい。

 この後、処分場がらみでモーターボートの件が誤解を受けている理由などについて説明した町長は、昨日報じた「南大隅町放射性物質等受入拒否及び原子力関連施設の立地拒否に関する条例」を制定したことなどを挙げて疑惑を全面否定。モーターボートに関する疑惑が、4月の町長選挙を睨んだ対立候補陣営の画策であると明言していた。

記者:原さんと町長になってからお会いになったことは?
町長:ないです。

モーターボートをめぐる嘘―船舶登録から露見
 論より証拠と格言がある。HUNTERは今月20日、20トン未満の船舶が、小型船舶登録法により、「日本小型船舶検査機構」に登録されることから、同機構鹿児島支部に問題のモーターボートの登録事項証明書を請求した。下が疑惑のボートの船舶登録番号、そして開示された証明書の原本である。

鹿児島 044.jpgのサムネール画像

開示された証明書の原本

 証明書によれば、平成19年7月にモーターボートを新規登録したのは、原幸一オリエンタル商事社長。平成22年に「売買」によって同船を取得したのが森田俊彦南大隅町長であることが、それぞれの自宅住所地から明白となった。両人の嘘が露見した瞬間だった。

オリエンタル商事指宿支店―じつは豪華別荘
 日本小型船舶検査機構の登録証明によれば、問題のモーターボートの新規登録は平成19年、「指宿市」となっている。森田町長が同船を取得した平成22年からは、南大隅町に変更されている。

日本小型船舶検査機構の登録証明

 じつは、この指宿市にオリエンタル商事の支店があることが、同社の法人登記簿によって分かっていた。
 記載された住所を訪ねたが、そこは観光名所「長崎鼻」近く、国の天然記念物に指定されているソテツの自生地を抜けた海沿いの豪華別荘だった。

鹿児島 048.jpgのサムネール画像

 たまたま別荘の門の前に居たオリエンタル商事の従業員だという2人の男性に話を聞いたところ、ここは別荘だが、同社の鹿児島支店でもあると言う。従業員は3名だが、同社が何の仕事をしているのかは、原氏から聞いたことがなく分からないとした上で、自分達の仕事が別荘の手入れを含む管理業務だと明かしてくれた。
 オリエンタル商事は、従業員でさえ営業実態が掴めない会社なのである。

堕ちた町政トップ
森田町長 一連の裏付け取材を終えた記者は26日、再度南大隅町役場に森田町長を訪ねた。以下、町長室での、前回同様に総務課長を交えての取材記録である。

 記者:町長は友人が居て、その人が倒産したと。お金を貸していたから、そのカタにモーターボートを取ったとおっしゃった。町長はいくらくらいお金を貸していたんですか?
 町長:そこそこですね。

 記者:ほう、そこそこ?ところで、これが船舶の記録。あなた、嘘をつきましたよね。元の持ち主は原さんじゃないですか。売買になってますがね?
 町長:・・・・・・。

 記者:借金のカタですかね、本当に?
 町長:ええ・・・・。

 記者:違うでしょう。確認取れてますよ。平成19年に原さんが買って、22年に町長に売ってますよね。公式な記録ですよね。なぜ嘘をつきました?
 町長:いや、私がお金を貸して・・・・。

 記者:誰にですか?確認できますか?こちらはあなたの言い分を信用したでしょう。友人を助けたみたいな話をして、美談だと思ったが、真っ赤な嘘じゃないか。最初の船舶登録は指宿ですよ。あなた、指宿の別荘にも行ったことがあるでしょう。行きましたよね。
 町長:ありますね。

 記者:東京でも会ってますよね。町長になってからも。赤坂プリンス。忘れたとは言わせませんよ。
 町長:・・・・・・。

 記者:なぜ嘘をついたのか、正直に話してもらえませんか?
 町長:ハァァァァーーーーー。

 記者:噂になったから、嘘をついたということですか?
 町長:そうです。

 記者:よくないと思いますよ。
 町長:よくない。

 記者:これから先は嘘はつかないで下さいよ。いくらで買ったものですか?
 町長:15万。

 記者:15万?これ100万以上するんじゃないですか?なぜ嘘ばかりつくんですか?
 町長:・・・・・・。

 記者:町長になって、何回原さんと会いましたか?
 町長:・・・・・・。

 記者:あなた、調子に乗って、さっき『そこそこ貸した』と言いましたよね。
 町長:私は買ったつもりで・・・・。

 記者:これで選挙に出れますか?
 町長:これはもう突っ返します。

 記者:何を?ボートを?それは遅いですよ。選挙前だから突っ返す?それはないでしょう。買ったんでしょう?
 町長:・・・・・・。

 記者:原さんと密約でもあるんじゃないですか?なにか一筆入れたとか。
 町長:ないです。

 記者:なければ隠す必要などないじゃないですか。
 町長:変に疑われるからです。

 記者、いや、“疑い”じゃなかったではないですか。
 町長:・・・・・・。

 記者:オリエンタル商事の東京の麹町の事務所に行かれたことありますよね。ビルの7階の。
 町長:あります。

 記者:ありますよね。きれいな事務所ですよね。
 町長:はい。

 記者:原さんって、どんな人ですか?何をやっている人ですか?
 町長:それは分かりません。

 記者:分からないのに付き合ってたんですか?
 町長:・・・・・・。

 記者:もう一度聞きますよ。原さんはどんな人ですか?
 町長:前に町長からね、核廃棄物の処分場をこちらの方に持ってこようという話を取り次がれた人だということで、ご紹介を受けました。

 記者:誰から取り次がれたんですか?電気事業連合会ですか、ニューモですか?
 町長:分かりません。

 記者:原さんはどんな人間か分かりますか?
 町長:分かりません。本人は何も言ってません。

 記者:おかしな話ですね?なぜ嘘をついたのですか?
 町長:攻撃材料に使われたので否定すべきと考えた。

 記者:李下に冠、瓜田に履という。まさにそれでしょう。選挙どころではない。

 ちなみに、オリエンタル商事が現在の所在地に移転したのは、平成23年11月のことだ。現在の同社がビルの7階にあることを知っているということは、少なくともこの時期以降に町長が原氏と接触していたことを示している。平成21年に町長になってから、原氏とは会っていないと主張していた森田町長の話は、まったくの嘘だったということだ。

 モーターボートが友人への借金のカタだったという話は嘘、町長就任後は原氏と会っていないという主張も嘘。森田町長の言い分は、すべて崩れたことになる。
 そればかりではない。モーターボートを「突っ返す」と言い出したことで、じつは無償で譲渡された可能性があるだけでなく、こっそり別荘を訪問したり、東京で会っていたりという事実から、飲食などの接待を受けていた疑いも出てきた。

 町長の話から、オリエンタル商事の原氏が、電力業界―とりわけ「原子力発電環境整備機構」(ニューモ)と深いつながりを有していることも浮き彫りとなった。
 南大隅町では、平成19年に町や町議会関係者らが「高レベル放射性廃棄物最終処分場」の誘致に動き、ニューモの人間を呼んで説明会を開いていたのである。
 町長の話にあった『前に町長からね、核廃棄物の処分場をこちらのほうに持ってこようという話を取り次がれた人だということで、ご紹介を受けました』という原氏についての説明が事実なら、原氏にはニューモを動かせるだけの力があるということ。そうなると、同氏が原子力ムラの関係者である可能性が高くなる。

収賄への疑念
 南大隅町で起きている疑惑は、福島第一原発の事故によって発生した放射性廃棄物汚染土の処分地に限ったものではなく、さらに深刻な事態をもたらす「高レベル放射性廃棄物」の最終処分にからむ話である。

 実態がよく分からないオリエンタル商事という会社の社長が、前町長に処分場誘致を働きかけ、さらに現町長の就任後にモーターボートを譲り、自身の別荘に招いたり、東京で会うなどしていたことは明白。原子力ムラの暗躍は、現在も続いているのである。

 これまでの直接取材の結果から言って、モーターボートの無料譲渡や接待が疑われる事態であり、収賄の疑いを持たれてもおかしくない格好だ。
 一連の原氏との関係を隠蔽したあげく、モーターボート所得過程を友人への貸付金のカタだったなどという嘘をつく町長。HUNTERの取材結果を知った南大隅町の住民からは、刑事告発を検討する声も上がっている。



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