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新日本科学の動物実験事業に暗雲
―鹿児島・メディポリス構想の闇―

2013年2月 1日 08:55

 先月、海外メディアの報道で、米国立衛生研究所(US National Institutes of Health、NIH)が、実験動物に「チンパンジー」を使用した医学研究への出資を打ち切る方針であることが明らかとなった。
 アメリカや日本では、いまだにサルを使った前臨床試験が続けられており、報道が事実なら、今回の決定が波紋を呼ぶのは必至だ。
 とくに懸念されるのは、鹿児島県指宿市で60億円もの公費を投入して運営されている「メディポリス医学研究財団」の中心企業、「新日本科学」(本社:鹿児島市)への影響である。(写真は新日本科学本社)

動物虐待とデータ改ざん
 米国立衛生研究所の決定は、生物医学界で開発された新たな手法や技術によって、研究分野におけるチンパンジーの使用に替わる方法が提供されている実情を受けてのものだという。

 霊長類の実験使用は、EUで「実験動物保護指令」などによって、大型霊長類の実験使用を禁止したり、その他のサルについても「できるだけ代替法に」といった規制がある程度。日本ではチンパンジーとその他の大型霊長類(オランウータン、ゴリラ等)の侵襲的実験はないものの、カニクイザルなどその他の霊長類の多くが実験に供されているのが実情だ。

 鹿児島県指宿市で「がん粒子線治療研究センター」を運営している「メディポリス医学研究財団」の中心企業である新日本科学は、霊長類であるサルを実験用動物にもっとも適していると公言してきた会社である。
 このため米国や中国のほか、日本国内では鹿児島県、和歌山県に実験用サルの飼育施設を有しており、毎年大量のサルを輸入している。
 下の文書は新日本科学の決算報告会資料だ(黄色いアンダーラインと矢印はHUNTER編集部)。

国内前臨床事業の今期計画(新日本科学)   差別化戦略・競争優位性の強化 (3) (新日本科学)

 サルについて、「豊富な品揃え」と自慢した上、年間1,000匹以上を輸入していることが誇らしげに記されている。集められたサルは、前臨床といわれる薬の実験に使われるのである。

 この新日本科学には、実験動物の殺処分で生きたビーグル犬の皮を剥いだり、いきなり首を切断するなどの虐待行為が行われていたことや、実験データの改ざんが常態化していた時期があったことを、元社員が告発している。

懸念される影響 
 米国立衛生研究所が、チンパンジーの動物実験を止める方針を打ち出したことで、動物虐待の温床とも言われる前臨床試験における霊長類の使用にブレーキがかかる可能性もある。そうなると、動物を使った前臨床試験で急成長した新日本科学の事業が、極めて深刻な影響を受けることになる。

 懸念材料はまだある。昨年、新日本科学の米国法人「SNBL U.S.A」に、動物虐待の疑いが浮上、これが原因でイスラエルの裁判所が新日本科学に輸出される予定だった子ザルの出荷停止を決めたことを海外の動物愛護団体が公表している。

 また、「SNBL U.S.A」には平成22年10月にアメリカ食品医薬品局(FDA)から実験施設の不備について改善を指示する「WARNING LETTER」(警告状)が出されていた(右はその1ページ目)。そこには、データ改ざんとしか言いようのない行為を繰り返していたことが記されており、日本国内なら会社存続が危ぶまれるほどの事態だったと見られている。このため「SNBL U.S.A」は、大きな損失を出していた。

 「SNBL U.S.A」の不振が本体の経営を圧迫していたのは事実で、新日本科学は巨額の赤字を計上し、昨年6月には主力行の鹿児島銀行から財務担当役員を迎え入れている。
 米国立衛生研究所の方針決定がきっかけとなり動物愛護の声が高まれば、「SNBL U.S.A」の事業が縮小、さらには本体の新日本科学を追い詰めるというシナリオが、現実味を帯びる。
 動物愛護運動の消長が、新日本科学という会社の存続に決定的なかかわりを持っているのだ。

動物愛護の広がり恐れる新日本科学 
jpg 新日本科学の有価証券報告書には、「実験動物の安定的確保」として、以下のような記述がある。(写真はメディポリスの敷地内で飼育されているカニクイザル)

 《当社の前臨床試験において最も重要な実験動物はサル(主にカニクイザル)であります。サルはヒトとの遺伝子的類似性が高いことから前臨床試験において他の動物と比較して優位性が最も高いとされており、当社の前臨床事業の特色の一つであります。
 クオリティーの高い実験動物を安定的に確保するために、戦略的統括拠点として香港に新日本科学(亜州)有限公司を、さらに中国広東省並びにカンボジア王国内の連結子会社に実験動物の繁殖・育成・検疫施設を有している他、中国、インドネシアの繁殖事業者にも調達ルートを確保しております。
 加えて、日本国内では鹿児島に、米国ではテキサス州に繁殖施設を設け、積極的に現地生産に取り組み、クオリティーの高い実験動物の安定的確保に取り組んでまいります》。

 また、同社の主業務である前臨床事業におけるリスク要因については、こう記されている。
《我が国又は輸出国の法規制改正や伝染病の発生等により、カニクイザルの確保及び輸入に支障が生じた場合は、円滑な前臨床試験の実施に支障が生じ、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります》。

 さらに、動物愛護をめぐる動きについて、重大な懸念があることも明かしている。

《生命の尊厳等の観点から動物実験全体を否定する立場もあり、仮に日本において動物愛護の風潮が高まる等により前臨床試験における動物の利用に対して社会的評価が著しく低下した場合には、当社グループのイメージに悪影響を与え、状況によっては実験用動物の取得が困難になる等、前臨床事業の円滑な遂行に支障を来たし、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります》。

 日本国内で動物愛護運動が広がりを見せた場合、同社の経営が圧迫されることは必定なのである。そうなると、同社が中心となって設立され、「がん粒子線治療研究センター」を運営している「メディポリス医学研究財団」の先行きもあやしくなってくる。

 「メディポリス医学研究財団」の治験部門「シーピーシー治験病院」をめぐっては、中国人ら海外からの留学生に金銭を渡し、薬剤の人体治験を行っていた実態も明らかになっているが、じつは、そのメディポリス財団の財務状況について、新たな疑問が生じている。



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