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福岡7区・自民新人 地元紙に隠した東京の億ション
藤丸敏衆院議員の姑息な選挙手法

2013年2月12日 08:30

 昨年暮の総選挙公示にともない掲載された新聞の候補者紹介欄で、地元紙「有明新報」だけが初当選した自民党・藤丸敏衆院議員(52)の住所を、選挙区内のみやま市としていたことが分かった。
 有明新報を除くすべての新聞が、藤丸候補(当時)の住所を「東京都江東区豊洲」と明記しており、藤丸陣営が意図的に地元紙対策を行った疑いが濃い。
 地元紙に隠された形となった江東区豊洲の住所地は、藤丸氏が議員秘書時代に購入した1億円近いと見られる超高級マンションのもので、有権者―とくに地元意識の強い土地柄を睨んだ選挙戦術の一環だった可能性もある。(写真は、選挙後に出された藤丸陣営の違法な「当選御礼」)

地元紙だけに自宅は「みやま市」
 昨年12月4日の総選挙公示の翌日、新聞各紙に立候補者の顔ぶれが掲載された。顔写真に加え、所属政党、年齢、簡単な経歴などが記されているが、そこには現住所を記載するのが通例だ。

 下は、公示日翌日5日の朝刊のうち、「有明新報」と「朝日新聞」の藤丸氏紹介の欄を切り取ったものだ。「有明新報」は、藤丸氏が立候補した福岡7区で最大の有権者を擁する大牟田市をはじめ、近接するみやま市、柳川市などに多くの購読者を持つ有力地元紙である。

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(平成24年12月5日の、左から「有明新報」、「朝日新聞」の紙面)

 右側、朝日新聞に記された藤丸氏の住所は、『東京都江東区豊洲2丁目』だが、有明新報の方は『みやま市瀬高町上庄』。じつは、有明新報以外の主要紙(読売、毎日、西日本)に記載された藤丸氏の住所は、すべて『東京都江東区豊洲』となっていたのである。

正式な住所は東京都江東区豊洲の超高級マンション 
 新聞各紙は藤丸氏側が記入した「調査票」と呼ばれる候補者の経歴などを記した文書の記述内容に従って正確に候補者欄を作成しており、有明新報が勝手に藤丸氏の住所を「みやま市」としたのではない。藤丸氏側が、東京の自宅の存在を伏せ、現住所を「みやま市瀬高町上庄」と書いたことは確かだ。

 朝日新聞に掲載された『江東区豊洲2丁目』が、先週報じた藤丸氏所有の超高級マンションの所在地であることは言うまでもないが、『みやま市瀬高町上庄』は、藤丸氏の正式な「現住所」ではない。地元の住民に聞くと、「瀬高の住所は藤丸さんの実家」(みやま市民)という答えが返ってきた。

 東京都江東区とみやま市、どちらが正式な現住所かは、すぐに分かった。選挙の立候補届出書類に記されていた藤丸氏の正式な住所は、そのまま選挙運動費用収支報告書に反映される。同氏の報告書を県選挙管理委員会で確認したところ、藤丸氏の正式な住所は、『江東区豊洲2丁目』だったことが判明した(下は住所が記された報告書の表紙)。

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地元意識に対する選挙戦術
 大牟田、みやま、柳川の各市は、衆院選における福岡七区での勝敗を左右する重要な都市だ。そこで愛読される「有明新報」だけを選んだ形で、自宅住所を『みやま市瀬高町上庄』と書いて提出したことに、地元候補としての色を出そうとした藤丸陣営の意図が透けて見える。

 選挙前、福岡7区の有権者に取材した時点では、、藤丸氏の一般有権者への知名度はかなり低かったことが分かっている。
「藤丸さんって誰」(筑後市・50代主婦)。
「地元の担当秘書は顔も名前も知っているが、藤丸という秘書は知らない。そんな人いたんだ」(大牟田市・40代会社員)。

 長い間、藤丸氏が相手にしていたのは建設業界と東京で接待を受けていた農協関係者ばかりだったため、選挙区の有権者には知られていない存在だったのだ。このため、地元とのつながりを強調する必要が生じ、意図的に有力地元紙が記載する住所をみやま市の実家とした可能性がある。そうなると、選挙目当ての姑息な手法というしかない。

問われる政治家としての資格
 藤丸氏は、秘書として仕えてきた古賀誠元自民党幹事長の引退にともない、福岡七区の後継者として登場した。しかし、自民党内の正式手続きが済まないうちに、勝手に「自由民主党福岡県第七選挙区支部 支部長」の肩書を使用、この肩書が入った名刺を有権者宅などに大量頒布していたほか、選挙に立候補することを前提とした「推薦願い」にも支部長を名乗り、企業・団体に提出していたことが分かっている。明らかな虚偽事項の公表である。

 有明新報に事実とは違う現住所を書かせたことも、厳密に言えば虚偽事項の公表だ。選挙のためとはいえ、姑息な手段ばかり使う人物に、政治家としての資格があるとは思えない。

 藤丸氏が平成20年3月に購入した東京都江東区豊洲2丁目のマンションは、超高層52階建ての50階にある一室。コンシェルジュサービスのほか、ジェットバス付きプール、ゲストルーム、キッズルーム、コンビニ、保育所に加えスカイラウンジまで完備したシティホテル並みの豪華さを誇るマンションの最上級クラスの物件である。
 マニア垂涎のクラシックカーやクルーザーまで所有してきたとされる藤丸氏。一介の秘書が、どうやってそれらを購入したのか是非聞いてみたいが・・・。



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