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破綻必至! 薩摩川内100億円産廃処分場の虚構 
業者に丸投げの試算―現状無視の高額処分料

2013年2月14日 09:20

 鹿児島県が住民の反対を力でねじ伏せ、薩摩川内市で建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の事業が、でたらめな事業計画を基に進められていたことが明らかとなった。
 県は、計画段階でコンサル業者が行った事業の収支見込みしか持ち合わせておらず、独自に公共事業として成り立つかどうかの試算を行っていない。
 さらに、コンサル業者が作成した事業収支は、産廃1トンあたりの処分料を他の処分場より極端に高く設定しており、産廃業界の実情はまったく反映されていなかった。九州における産廃処分料の相場をはるかに上回る「1トンあたり1万7,000円」という料金設定でも、事業としては成り立たないことが明記されており、建設ありきでことを進めたツケが県民に回されるのは必至。改めて100億円の公費を投入する公共事業の在り方が問われる事態だ。

事業収支の試算、コンサル業者に丸投げ
 HUNTERは昨年10月、同事業に関するすべての文書について鹿児島県に情報公開請求を行った。決定期間の延長や「補正命令」を出すなど抵抗した県だったが、年を越えた1月、これまでHUNTERが入手していなかった平成24年度分の関連文書とともに、県が保有する処分場がらみの公文書が開示された。

 このうち、HUNTERが注目したのは、県が本事業における収支の試算を行っていたかどうかの一点。そこで、該当する文書はどれか所管する県環境林務部 廃棄物・ リサイクル対策課に確認したところ、収支についての県独自の試算は行っておらず、計画段階で作成されたコンサル業者の整備計画に掲載された「事業収支検討」がそれにあたるという。

現状無視―作為的な処分料設定
 100億円の公費を投入する事業収支の試算を民間業者に丸投げしただけでなく、開示された「事業収支検討」そのものが、景気や周辺の産廃施設の整備状況などによって変化する経営環境などを無視した、形式的な試算に過ぎなかった。。

 下は、「事業収支検討」の中に記載されている産廃の処理料金ごとのケース設定だが、埋立期間を15年とし、トンあたりの平均処分料を1万7,000円、1万8,000円、2万1,000円とする3パターンと、埋立期間10年で1万8,000円/tとしたパターンのわずか4つのケースでしか収支を計算していない。埋立期間10年の場合の試算はひとつしかなく、同15年の想定でもなぜか2万円/tのケースが省かれており、まともな試算とは言い難い。

試算1.jpg


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 実際の埋立期間は15年となっているため、ケース4を除外し、ケース1から3までを注視してみよう。ケース1は、1万7,000円/t。この場合だと《毎年度損失を計上する結果》となり、《建設費にかかる長期借入金の返済財源が確保できない》ため、《毎年度借入金で運営資金を調達する》という状況になるとしている。簡単に言えば、赤字になるから税金で借金や運営資金を賄わざるを得ないということだ。

 ケース2の1万8,000円/tでようやく利益が確保され、借金の返済が可能となり、ケース3の2万1,000円/tだと高額な収入が確保できるという。
 九州管内の産廃業者に幅広くあたってみたところ、管理型処分場におけるトンあたりの平均的な処理料金は1万2,000円程度で、安いところでは1万円前後の処分場もある。鹿児島県は、公共関与の処分場はどこも高い処理料金だと言いたいらしいが、佐賀県の公共関与型処分場「クリーンパークさが」がホームページ上に掲載している処理料金をよく見ると、鹿児島との大きな違いに気付く。一部を抜粋すると次のような料金設定だ。

有機性汚泥         17,600円/t 焼却・溶融
下水汚泥(含水率85%)  17,400円/t  焼却・溶融
下水汚泥(含水率20%)  17,500円/t  焼却・溶融

無機性汚泥・建設汚泥   7,700円/t  埋立処分
その他の汚泥        16,000円/t 埋立処分
上水汚泥           16,000円/t 埋立処分

 これに対し、鹿児島県の「エコパークかごしま」(仮称)におけるコンサル業者の事業収支試算のうち、産廃の種類ごとの価格設定はこうだ。

価格設定.jpg

 佐賀では、焼却・溶融処分となる有機性汚泥が1万7,600円/t、これに対し鹿児島県の想定は3万円/tという法外な金額を設定している。佐賀で埋立処分にされる無機性汚泥7,700円/tに対し、鹿児島はその2.5倍以上の2万円/t。これほどデタラメな想定があるだろうか。
 その他の公共関与型処分場はどうか。財団法人山口県環境保全事業団が設置し、宇部興産コンサルタント株式会社が管理運営一式を受託している山口県の公共関与型処分場「宇部港東見初広域最終処分場」は、平成20年から供用を開始しているが、汚泥は1トンあたり8,400円となっている。
 九州以外だと、同じく公共関与型で土地代などが高い横浜市中区にある「南本牧廃棄物最終処分場」の処理料金を見てみると、建設汚泥なら1万3,000円/t、その他の汚泥でも1万5,500円/tとなっている。どの公共関与型と比べても、「エコパークかごしま」の業者試算と同じ水準の処理料金は見当たらない。
 「エコパークかごしま」におけるコンサルの試算は、ただの虚構なのである。

「ありえない」―コンサル試算の民間処分場の料金
 「事業収支検討」に記された民間の管理型処分場の処理料金も随分デタラメに近いようだ。

民間.jpg

 前述した通り、九州管内の民間の管理型処分場はこの金額より5,000から7,000程度安いところが大半である。ある民間の産廃業者は、コンサル業者の試算を見てこう話す。「民間が平均1万7,000円なんて冗談じゃない。ありえない。こんな処理料金だったら、どこの業者も来ませんよ。産廃の種類にもよるが、平均するとトンあたり1万2,000円程度がいいところ。鹿児島県が使ったコンサル業者は、実態を知らないか、あるいは知っていて意図的に数字を偽っているかのどちらかでしかない。公共関与の管理型処分場を造るために、無理やり現実とは違う数字を並べたというのなら、それは鹿児島県民を騙していることになりますよ」。

 あまりに高い処理料金は、事業の早期破綻だけでなく、「エコパークかごしま」での産廃処分を嫌う業者の不法投棄を助長する可能性も指摘されている。ある産廃業者はこう話す。「公共関与の処分場は処理料金が高すぎるため、敬遠されているのが現状だ。近くに民間の処分場があれば、当然安いわけだからそちらに行く。鹿児島の産廃運搬業者は、宮崎や鹿児島の処分場に行っているはずだから、この試算(コンサル業者の試算)を見たら、腰が抜けるだろうね。結局、ここ(「エコパークかごしま」)は儲からないで、さらに税金投入という結末が見えている。一番やばいのは、不法投棄が増えること。公共関与しか処分場がないとなれば、どこかに不法投棄してしまおうという不心得者が出てくるもの。鹿児島県民はよくこんなデタラメを許してるな」。

 杜撰というより虚構と言った方が妥当な試算の上に立って、100億円の公費を投じる処分場建設を決めた伊藤祐一郎知事。税金のムダ遣いに加え、貴重な自然環境をも破壊していく愚行の責任を、この傲慢な政治家が取るとは思えないが・・・。



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