玄海原発(佐賀県玄海町)の「安全協定」をめぐって、福岡県情報公開審査会が、先に福岡市が開示した協議記録の内容を否定する見解を示していた。
HUNTERが県に提出した非開示決定への異議申立てに対する「答申」の中の記述から分かったもので、安全協定に対する県と福岡市のスタンスに大きな違いがあったことを示す事実だ。
どちらの記録が正確なものか分からない事態となっており、県民にとっては不十分としかいえない“名ばかり安全協定”の締結過程は、益々不透明なものになった。
福岡市の記録を一方的に否定
福岡県情報公開審査会は、HUNTERが県に原発安全協定の協議議事録を非開示にしたことに対し提出した異議申立てに伴い、県の諮問を受けて昨年11月に答申を出した。
答申は、協定締結までの過程を記した協議議事録などの情報公開を拒んだ県側の主張を追認。肝心の議事の詳細については非開示を妥当と判断し、事実上、異議申立てを却下した形となっていた。
下が、答申の中の問題の記述である。(赤いアンダーラインはHUNTER編集部)
安全協定を締結するまでに開催された協議は計4回。答申では、福岡市が開示した協議記録について、《協議における発言者やその発言の一部を要約して記載したもの》であることを認めた上で、《実施機関(注:福岡県)が作成した本件公文書1(注:第1回と第4回の議事録)とは、発言の取捨選択やその趣旨等、随所で記載内容が異なることが認められ》と断定し、福岡市側の記録が不正確であるとの見解を示していた。
県側の記録を一方的に信頼した判断だ。
正確だった福岡市の記録
福岡市がHUNTERに開示した第1回と第4回の協議の記録は、協議が行われた日時と場所、参加者の所属と氏名のほか、当日の協議の結論及び発言の要約を議事録の形式にして残したものだった。
下は、福岡市が作成した4回目の会議の記録である(3ページの内の1~2ページを掲載。クリックして拡大)。
県の情報公開審査会が出した答申の記述では、福岡市の記録の中の、どの部分が《発言の取捨選択やその趣旨等、随所で記載内容が異なる》のか明示しておらず、主張の根拠が曖昧なままだ。
しかし、福岡市側は昨年の情報公開にあたって、「隠すべき文書ではない」として、自信を持って議事要旨を開示しており、その内容に嘘や間違いがあったとは思えない。
同市の記録は、各参加者の発言について、ポイントとなる部分を簡潔に要約しており、全体の流れを見る限り、実際の協議内容と大きく違うとは考えられないのだ。
仮に福岡市の記録が不正確であったとすれば、市が作成し、市民や議会に報告した内容が嘘だったことにもなりかねない。開示された福岡市の記録は、十分に信頼できると見る方が自然だ。
一方、県は非開示決定時から一貫して隠蔽姿勢を露わにしており、主張への信頼度はゼロ。県側の主張を追認し、九電擁護とも取れる結論を出した県情報公開審査会の答申も信用できるものではない。
組織的な県の隠蔽―その訳は・・・
審査会が、どのような検証過程を経て答申を導き出したのか明確にしていない上、県の記録が非開示となっているため両自治体の記録を比較することはできない。
しかし、述べてきた通り、市側の記録には信頼性があり、県および審査会の主張には確かな根拠さえない。
審査会は、県の非開示理由を正当化するため、無理やり市の記録を否定してみせたのではないか。その場合の筋立てはこうだ。
強引な筋立ての理由はひとつしかない。
福岡市の記録が正確だった場合、同様の内容を非開示として隠蔽した県の決定を覆す必要が生じる。福岡市が開示した情報を、県だけが隠すことは不適切だからだ。
審査会は、そうした事態を恐れ、ことさら福岡市の記録を否定するしかなかったのではないか。だとすれば、県の情報公開審査会もグルになって、組織的に安全協定の裏舞台を隠蔽していることになる。
原発安全協定が締結されるまでの県側の急ぎようや、原発事故時の連絡の約束に過ぎない協定の内容を考えると、県民のためではなく、“九電のための早期協定締結”という目的がいよいよ真実味を増す。
県が隠したいのは、協定が九電のためのものだったという実相なのだ。