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原発安全協定 九電擁護の証明
―福岡県情報公開審査会への反論(下)―

2013年1月 7日 09:40

 福岡県が福岡・糸島の両市と共に九電との間に結んだ原発の「安全協定」。締結までの過程を記した協議議事録などの情報公開請求に対し、県が大半の文書を非開示にしたことへのHUNTERの異議申し立てを、県情報公開審査会が事実上却下した。

 審査会が出した答申内容を検証したところ様々な問題点が浮き彫りとなったが、まずは県と審査会が九電擁護の姿勢を鮮明にしていることを明らかにしておきたい。

九電擁護―隠蔽姿勢追認の審査会答申
 知事が委嘱した7人の委員で構成された「福岡県情報公開審査会」が“開示すべき”と結論付けたのは、問題の議事録の日時、場所、出席者と報道陣退出までの各人の挨拶部分のみ。肝心の議事の詳細は非開示が妥当と判断しており、県の隠蔽姿勢を追認した形だ。

 九電と県および福岡・糸島両市の間で行われた安全協定に関する正式協議は計4回。このうち県が情報公開請求に対して開示・非開示の判断を下し、結果非開示としたのが情報公開請求時に完成していた1回目と4回目の協議議事録である。

 2回目と3回目の協議議事録は「未完」(県側の表現)のままであったため、「不完全な文書は公文書ではない」(同)として、開示・非開示の判断対象にもしていなかった。

 このほか、「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」、「平常時の連絡項目の取り扱いについて」、「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」などの公文書が非開示となっている。

 HUNTERによる異議申立てを受けた県から諮問され、福岡県情報公開審査会が昨年11月に出した答申はA4版で全8ページ。冒頭に審議会の結論を記した上で、事実関係を列挙し、次いでHUNTERと県の主張を並べた後、『審査会の判断』として非開示決定の是非を論じている。

 下の文書は答申の冒頭部分だが、「審査会結論」だけを読むと、非開示決定を《妥当ではない》と結論付け、2回目・3回目の未完の議事録を公文書として特定し、開示・非開示の判断を下すよう促しており、あたかも異議申立てを認めたかのような内容だ。

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 しかし、結論の中で特定した答申後段の“開示すべき部分”を確認すると、この答申が子どもだましであることが分かる。

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 上に示した文書中、赤いアンダーライン部分(HUNTER編集部による)が「結論」の指摘した開示すべき内容なのだが、《文書取り扱いに関する記載部分》、《公文書の表題》、《協議の日時》、《場所及び出席者》、《冒頭挨拶部分及び第1回協議の記録中、実施機関が報道機関に退室を促すまでの部分》の5箇所だけで、肝心の協議内容は以下の理由で非開示が妥当と結論付けている。

  • 開示したことで九電との信頼関係が損なわれる
  • 今後の協議実施が困難になる
  • 協議が実施されても議論が形骸化する

 県側の非開示理由をそのまま踏襲した形で、どう見ても九電の立場を重く見た格好だ。 

 福島第一原発の事故以来、国だけでなく地方自治体や電力会社に対し原発がらみの情報公開が求められてきたのは周知の通りだ。
 原発の「安全神話」が、嘘と隠蔽で成り立っていたことを考えれば当然のことで、とりわけ地域住民の安全に関わる重要な事項―「安全協定」などに関する九電と自治体との協議過程―などは、隠さず公開すべきである。また、そうでなければ国民の信頼は得られないはずだ。
 協議議事録を隠蔽する県や審査会の姿勢は、明らかに時代の流れに逆行しており、九電擁護としか映らない。

 県や審査会が非開示にあたっての根拠として挙げたのは、県情報公開条例第7条第一項第4号である。
 条例第7条は公開対象となる公文書について規定したもので、同条の第一項第4号は、公開の対象外となるものについて以下のように定めている。

《県の機関又は国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人若しくは地方三公社が行う事務又は事業に関する情報であって、公にすることにより、次に掲げるおそれその他当該事務又は事業の性質上、当該事務又は事業の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあるもの》

 その上で、例外となる5項目を列記しているが、このうち本件のケースに該当するのは、《契約、交渉又は争訟に係る事務に関し、国、独立行政法人等、他の地方公共団体、地方独立行政法人又は地方三公社の財産上の利益又は当事者としての地位を不当に害するおそれ》であると見られる。
 安全協定に関する今後の九電との交渉に支障を来すとする考え方だが、公益企業である九電にそこまで配慮する必要があるとは思えない。何より大切なのは、原発に関する事柄の情報公開なのだ。

県の焦り―公表された内容まで隠蔽
 審査会の答申は県側の主張をほぼ全面的に認めたもので、開示が妥当と判断したのは、会見などの形ですでに公表された部分だけだった。
 裏を返せば、公表された内容まで非開示にしていた県の姿勢は、いかに協議議事録自体が表沙汰になることを嫌がっているのかを示したものと言えよう。
 県の主張を追認した審査会も、住民の知る権利を守るという本来の目的を果たしておらず、隠蔽に加担したも同然だ。

杜撰な審査会答申
 審査会の委員には弁護士2名のほか、法学を専門とする大学教授2名も含まれているのだが、答申の結論に至るまでの論の組み立ては極めて杜撰としか言いようがない。

 県が問題の議事録を非開示にしたことの一番の問題点は、同様の公文書を福岡・糸島の両市が全面開示していることを承知で、あくまでも隠蔽を続けていることだ。
 これに対し、審査会は次のようなお粗末な論拠で県の主張を容認している。

 下は、答申の記述を順番に並べたものだが、県の協議議事録に対する評価と、糸島市や福岡市が開示した議事録要旨に対する評価がまるで違う。(以下、赤いアンダーラインはすべてHUNTER編集部)

 答申には、県が保有する4回目の協議に冠する記録が《発言の要約》であると明記してあるのだが、《随所に、本件法人等との関係上、機微にわたる情報が含まれていることが認められる》と断定。

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 一方、糸島市の記録は同じく要約されたものでありながら《協議の詳細な内容が分かるようなものではない》としており、公文書としての存在意義を否定してしまっている。

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 福岡市の記録文書については、前提で《協議における発言者やその発言の一部を要約して記録したもの》と認めながら、県との《位置付けが異なる》などとした上で、福岡市と九電との《信頼関係が損なわれたかどうかはともかく》と情報を全面開示した市の姿勢を揶揄し、議事録を隠蔽した県と九電との信頼関係が損なわれていないことを強調していた。

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 糸島、福岡両市の役人が作成した公文書は、県の審査会によって存在意義を否定されただけでなく、情報公開に応じなかった県だけが九電との信頼関係を保持できるというのである。
 こうした論拠で県側の非開示決定を支持した審査会の程度を疑わざるを得ないが、県だけでなく審査会の九電寄りの姿勢も鮮明になっており、公平性に疑問を投げかける事態だ。

背景 
 4回にわたる九電との協議には、協定を結ぶ当事者となった福岡県、福岡市、糸島市の担当職員が参加していたが、福岡市が開示した議事録からは、協議を主導した福岡県の山野謙総務部長(総務省から出向)が、異常なまでに協定の締結を急いでいたことが分かっている。

 交渉を仕切った県の総務部長は、平成23年11月25日に開かれた1回目の協議から早期締結を強く要求。「『年内にも締結すべし』との議会の強い意見」(福岡市の記録より)をその理由に挙げていた。

 2回目(同年12月21日)の協議でも「議員からは『年内に締結すべき』との意見もある」として再び早期締結を促し、3回目(24年1月18日)では「再三言っていることだが、できるだけ早期に締結できるように協力をお願いしたい」と苛立ちを露わにする。協定の内容などどうでも良いと言わんばかりの姿勢だったのである。

 年度内の協定締結にこだわった県は、この3回目の協議で早くも九電に協定書の案を提示するよう求めており、早期締結に向けて作業を急ぐ意向をより鮮明にさせていた。

 4回目の協議は昨年3月9日。九電から提示された協定書の案についてやり取りを行なっていたのだが、最終的な文案は完成されないまま、県の総務部長が年度末を目途に締結することを宣言し会議を閉じていた。ただし、この時点でも「異常時の連絡、損害の補償」といった再検討すべき事項を積み残していたことが福岡市の記録に明記されている。
 重要視されたのは“協定の内容”ではなく、"締結時期"だったということだ。

 九電玄海原発(佐賀県玄海町)の再稼働を容易にするためには、周辺自治体と間で折り合いをつけておく必要が生じていたことも事実。県や九電が原発事故時の連絡についての取り決めに過ぎないものを、「安全協定」などと称して急いでまとめたのは、佐賀、長崎の関係自治体向けに、先行事例が必要だったからに他ならない。福岡県は、九電の後押しをしたかっただけなのである。

 協議過程の詳細が公表されれば、小川県政の九電寄りの姿勢が鮮明になると見られるが、県や県が設置した情報公開審査会は、あくまでもこれを阻止したいらしい。 

 しかし、審査会が出した答申の内容からは、さらなる疑惑が生じており、協定をめぐる重大な問題点について、明日から個別に報じていく。



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