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原発安全協定 舞台裏隠蔽を追認
―福岡県情報公開審査会への反論(上)―

2013年1月 4日 09:00

gennpatu 233392436.jpg 昨年11月、福岡県の情報公開審査会が、原発安全協定に関する公文書非開示への異議申し立てに対し、県の隠蔽姿勢を追認する結論を出した。
 不十分な安全協定締結の舞台裏で何があったのか?県民の多くが疑問を抱いている問題に、弁護士や大学教授などで構成される審査会までが背を向けた形だ。
 協定に関するこれまでの経緯を整理した上で、審査会の答申内容について検証していく。

舞台裏隠す福岡県
 昨年4月、福岡県および福岡・糸島の両市が、九州電力との間で玄海原子力発電所(佐賀県玄海町)に関する安全協定と覚書を締結した。
 安全協定は、県民の安全を確保するとともに、原子力行政への不信を取り除くための重要な仕組みだ。しかし、安全協定とは名ばかり、玄海原発で事故が発生した場合、九電が福岡県などに迅速に連絡することを決めたというだけの不十分極まりないものだった。福岡市への連絡に至っては、県を経由するという付け足し程度のものだ。

 福岡市が開示した議事録の要旨によれば、九電側の認識は「安全連絡協定」。原発の運転状況についての情報を迅速に提供するという取り決めを結べば、《万が一の場合に重要な「異常時の連絡」に関する担保が得られ、福岡県民の方々の安全確保と安心にもつながる》(要旨の記述)のだという。
 県民が得るのは『連絡』に関する担保であって、『安全』そのものではない。再稼働の事前同意など立地自治体並みの厳しい内容は、一切盛り込まれていないのである。

 なぜこうした不十分な協定が短兵急に結ばれたのか?当然ながら、県は協定締結までの過程をオープンにして県民の疑問に答えるべきである。
 HUNTERは4月、福岡県および福岡・糸島の両市に対し、協定締結に至るまでの関係自治体と九電との交渉過程を示す文書を情報公開請求した。

非開示.jpg 福岡・糸島の両市が関連文書の全面開示に踏み切る中、県は「開示・非開示の判断に時間を要する」として開示決定期限を2週間延長した末、核心部分の議事録を非開示にし安全協定締結までの過程を隠蔽。さらに、4回の協議のうち2回目・3回目の議事録を作成途中のまま放置し、文書不存在として処理したため、HUNTERは、非開示決定が出された日に県に対し異議申し立てを行っていた。

 県が開示を拒んだ公文書は次の4点、非開示理由は《記録の内容について相手(注・九電のこと)の確認を得ていない》ことに加え、《機微にわたる部分が含まれている》ため《これを開示すれば相手との信頼関係を損なう》というものだった。

  • 「九州電力との協定書協議(第一回)議事録」(H23.11.25)および「第4回協議」(H24.3.9)の議事録
  • 「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」(H23.11.29)
  • 「平常時の連絡項目の取り扱いについて」
  • 「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」(H24.1.16)

HUNTERの意見書
 非開示決定に対し、HUNTERが福岡県情報公開審査会に対して提出した意見書の内容は以下の通りである。

意 見 書

【異議申立てに係る公文書】
1、「九州電力との協定書協議(第一回)議事録」および「第4回協議」議事録       
2、「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」
3、「平常時の連絡項目の取り扱いについて」
4、「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」
5、「県内部の会議録及び本件に関し、小川知事が九州電力側と接触した日時、内容を記した文書

【非開示決定理由に対する反論】
 上記5については文書不存在であるため異議はない。1~4の非開示理由については次のとおり反論する。

 県は、1の九州電力との協議議事録を非開示とした理由について《原子炉運転の機微にわたる内容も含まれている》ことや、《内容の正確性について十分な検討を経たものとは言えない》としているが、この主張は容認できない。
 福島第一原発の事故以降、《原子炉運転の機微にわたる内容》について、完全な情報公開が求められていることは言うまでもなく、原発の仕組みをはじめ運転方針については、電力会社から国に詳細な報告がなされている上、その資料はほとんどが公表されている。
 従って、九電に隠された《原子炉運転の機微》が存在するとは考えにくく、むしろ積極的な情報公開が求められているところである。

 次に、《内容の正確性について十分な検討を経たものとは言えない》との主張については、既に県が当該協定の協議内容を「結果報告」としてまとめ県議会の一部議員に配布していることに加え、情報開示にも応じており、詳しい協議内容を隠す必要はないものと考えられる。

 仮に県が主張するように《十分な検討》もしていない不正確な記録に基づき報告書を作成したのであれば、公開された行政情報に誤りがあったことになる。県が《内容の正確性について十分な検討を経たものとは言えない》とする不確かな文書を基に公表文書を作成したとする以上、公表内容との整合性を得るためにも当該文書の開示が必要となるのは言うまでもない。

 県は、協議議事録が開示されることになれば《協議に参加した各団体・各個人の県に対する信頼を損なう》としている。しかし、協定に参加した福岡市と糸島市は、すでに協議議事録を含むすべての関連文書の情報公開に応じており、そのことは県にも通告している。県だけが協議議事録を隠す必要はないものと考える。

 2~4の非開示文書については、《県内部限りの資料として作成》されたとしており、県職員が職務の一環として作成した文書であることは明らかだ。
 さらに、一連の文書については《会議において配布したものでもない》と述べているが、県の方針を確認するために作成され関係職員らが参考にした時点で“共有”されており、こうしたことから公文書であることは否定できない。

 なお県は、協議議事録等が開示されることになれば《協議に参加した各団体・各個人の県に対する信頼を損なう》としているが、前述の通り、協議に参加した福岡・糸島の両市が同協議の内容を記した協議議事録等を全面開示しており、県のみが非開示にする根拠はなくなっている。

 原発をめぐっては、電力会社と行政への不信が向けられていることが8月22日に政府が公表した「討論型世論調査」の結果報告でも明らかとなっており、九電の都合だけを考慮した公文書非開示決定は、時代の要請に背く行為であると言わざるを得ない。

 以上のことから、非開示扱いにされた1~4の文書について、非開示決定を取り消し、速やかに開示することを求めるものである。
 なお、県側の対象文書の特定には、九州電力側との第2回目・3回目の協議記録が含まれていないが、県は作成途中の当該文書が存在することを認めており、公文書であることは明らかである。これも合わせて開示されることを望むものである。

 以 上

審査会の答申まで半年
 福岡県情報公開条例は、《開示決定等について行政不服審査法による不服申立てがあったときは、当該不服申立てに対する裁決又は決定をすべき実施機関は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、福岡県情報公開審査会に諮問しなければならない》(同条例)とした上で、同条例内で審査会の設置とその役割について定めている。

 審査会は、《地方自治及び情報公開制度に関して優れた識見を有する者》(同条例)の中から知事が委嘱した7人の委員で構成され、県が実施する事務事業を公示する基準を定める場合や情報公開制度の運営に関し意見を述べるほか、開示決定に対する不服申立て(異議申し立て)があった場合に、県の諮問に応じて答申を出す機関とされる。

 HUNTERが異議申し立てを行なったのは非開示決定が出た5月23日だったが、県側の動きは鈍く、県が県情報公開審査会に本件異議申し立てについて諮問したのはそれから3か月も経った8月17日。HUNTERの意見書提出は同月30日だった。

gennpatu 1864410880.jpg 審査会の答申はさらに約3か月後の11月26日。6か月もかけて出てきた答えは事実上のゼロ回答で、県民の知る権利より九電や県の都合を優先した結論だった。

 審査会が開示すべきと結論付けたのは、問題の議事録の日時、場所、出席者と報道陣退出までの各人の挨拶部分のみ。肝心の協議の詳細は非開示が妥当と判断しており、県の隠蔽姿勢を追認した形だ。
 この結果、年末になって送付されてきた約30ページに及ぶ議事録の大半は、右上の写真のような状況となってしまった。すべて黒塗りである。

 審査会はどのような考え方に基づき、県の隠蔽に手を貸したのか。
 送付されてきた審査会の答申を検証する過程で、県側の嘘や議事録の問題点が浮き彫りとなったほか、審査会自体の公平性が疑われる事実まで明らかになった。

つづく



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