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高島福岡市長 辞任説広がる

2013年1月22日 08:20

 21日、高島宗一郎福岡市長が辞任するとの観測が広がり、福岡市関係者の間に衝撃が走った。
 辞任の理由が判然としないまま、辞表を出す日取りや、市長選が行われた場合の立候補者の名前まで取り沙汰される騒ぎだが、あながちただの噂と片付けられない理由もある。
 背景にあるのは、今夏の参院選と、マスコミをも巻き込んだ市長の私生活。そして、市政運営で目に見える成果を上げることが出来ず、行き詰まったタレント市長の焦りであろう。
(写真は福岡市役所)

広がった23日辞任説
 一部の市議会関係者や経済人の話によると、高島市長が辞任するのは今月23日とされ、理由は明らかにされていない。
 すでに他県の経済人などにも市長辞任の話が広まっており、関係者が情報収集に走っているが、話の出所が定かではなく、裏づけが取れない状況だ。
 辞任話に信憑性があると思われるのには、いくつかの理由がある。

総選挙前、東国原氏と密談
 昨年のことだが、総選挙の数ヶ月前、高島市長は元宮崎県知事の東国原英夫衆院議員(比例近畿ブロック選出)と少なくとも3回の会談を行なっている。
 話題は、日本維新の会との連携による互いの衆院選出馬問題だったとされ、高島氏が福岡2区、東国原氏は同1区からの立候補を模索していたという。高島市長の国政進出は規定路線とも言われており、「タイミングの問題」だと話す市関係者も少なくない。
 ただし、総選挙の結果、福岡市内を選挙区とする衆院福岡1区、同2区、同3区で自民党の若手が初当選を果たしており、高島市長が自民党もしくは日本維新の会公認で衆院選に出る可能性はなくなったと見られている。残された可能性は、参院への転身である。

麻生氏復権と自民党の事情
 今年の夏、憲法改正を公約に掲げた安倍自民党は、参院で3分の2の議席を得るための政治決戦に臨まざるを得ない。このため、全国で31ある1人区での全勝はもとより、定数2以上の選挙区では複数の候補者を擁立し、しゃにむに議席を増やしに行く必要が生じている。

 福岡選挙区は定数2。改選を迎える自民現職は、引退した古賀誠元幹事長に近い松山政司参院議員(当選2回)で、副総理兼財務相として復権した麻生太郎元首相にとっては目障りな存在だ。麻生氏が、2議席独占の大義名分を掲げ、新たな候補者を擁立するとの見方が出始めていた。
 高島市長の後ろ盾とされてきた麻生氏が、国政進出を夢見ていた高島氏に白羽の矢を立ててもおかしくはない。高島氏のタレント性、知名度は確かに魅力だろう。
 参院選における“勝てる候補”が欲しい麻生氏と、国政進出を狙う高島市長の思惑が一致したとするなら、突然の市長辞任も十分に考えられることなのだ。

 ある市議会関係者は、次のように話している。
「辞任の話は聞いた。ことの真偽は定かではないが、ずいぶん広まっている。事実なら参議院選挙への出馬を決意した可能性が高い。もともと国政狙いなんだから不思議ではないが、市政運営に自信がなくなった証拠だろう。この2年間、お遊びばかりで、重要事項はすべて審議会やらナントカ委員会だのに任せてきた。市民の暮らしを良くしようという姿勢は皆無だった。あれだけ自信を持っていた『発信力』とやらも影を潜めており、行き詰まってしまった結果だろう。無責任な話だが、その程度の人間を市長にしてしまったということだ。(辞任が)噂に過ぎないとしても、信憑性があると見られてもおかしくない状況なんだ」。

絶えぬスキャンダルの噂
高島氏リーフレット (1)-thumb-280x197-2279.jpg 市政記者クラブに記者を送っているメディアは報道しなかったが、高島市長は就任の数ヶ月後に婦人と離婚、選挙時に印刷物にまで登場させた家族と別れている(右がその印刷物。一部加工)。

 その後、市役所周辺では高島市長の女性関係にまつわる話が絶えず、最近では、複数のマスコミ関係者との関係をめぐって、一部の報道機関が市長周辺を取材しているとの情報が飛び交っていた。
 高島市長が、スキャンダル報道前に先手を打って辞任し、参院選に出馬する条件整備に入ったとする見方さえあるほどだ。
 スキャンダルが辞任の理由とは思えないが、市政トップの私生活に疑問の声が上がっていたのは事実である。

月末の政治資金パーティを前に
 23日とされる辞表提出日にも意味がないわけではない。
 今月末、福岡市内のホテルで高島市長の政治資金パーティが開催される。昨年12月に予定されていたものだが、急な衆院解散で延期された経緯があった。

 パーティの場で、市長が何らかの“政策的発言”をすることに期待していた向きも多く、まさかその日に参院選への決意を表明するわけにはいかない。市長としての政治資金集めで、参院への転身を明かせば批判は必至だからだ。
 そのため、少しでも手前で市長辞任を表明し、月末のパーティを決起集会の場に変えるとの見立てを披露する市関係者もいる。

 辞任話は単なる噂か、あるいは市長周辺が国政進出を図る前に観測気球を上げてみただけなのか定かではない。しかし、21日夜にかけて、様々な人の間で「市長辞任」が語られたのは間違いない。

 重要課題は人任せにし、公約になかった市役所の改装や2階建てバスの導入に億単位の公費を投入してはしゃいできた高島市長。出張ばかり繰り返し、市民の暮らし向きには目もくれない市政トップに、国政参画の資格があるとは思えないが・・・。



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