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「失われる水源」 
土建国家の象徴 ― 鹿児島・産廃処分場工事の現実(2)

2013年1月23日 08:00

 公共事業などで発生する廃棄物を捨てるため、豊かな自然を壊すという滑稽な事業が、選挙公約に"環境先進県"を掲げた知事の下で進められている。

 鹿児島県薩摩川内市で県が建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)。エコパークとは名ばかりで、じつは確実に環境を悪化させる施設であることは明らかだ。

 これまでHUNTERでは、処分場建設工事にともなう汚水の垂れ流しや汚泥の不法投棄が続いている現状を報じてきたが、その状況は何も変わっていない。

 先週の取材では、完成した処分場が稼働した場合、貴重な水源が汚染物質でつぶされることを、県側が十分に認識していたことが明らかとなった。  
 伊藤祐一郎鹿児島県知事が主張する安全な産廃処分場など、存在しないことの証左である。

なくなる地下水利用の水道
 下の写真は、「エコパークかごしま」(仮称)の工事現場から車で約3分の場所にある簡易水道施設である。

簡易水道施設

 処分場予定地は、地元の霊峰・冠嶽の山麓。このあたりは豊富な地下水に恵まれているため、周辺地域の貴重な水源地となってきた。写真の水道施設は、そうした地下水を利用した簡易水道で、現在も地元住民の生活水として利用されている。
 薩摩川内市の水道事業を所管する同市水道局に聞いたところ、周辺の百数十世帯がこの簡易水道の恩恵を受けているという。

 ところが、この簡易水道施設は、来年にも使用が禁止される運命にある。
 同市水道局に確認したところ、もともと市内すべての簡易水道を上水道に切り替える方針だったという。しかし、切り替えを予定していたのは平成28年度で、問題の簡易水道だけを、平成25年度に前倒しして上水道に切り替えることを明かした。

 平成25年度といえば、県側が処分場を完成させ、供用開始を予定している時期だ。つまり、処分場完成に合わせて、地下水を利用した水道をなくすということなのだ。
 処分場建設にともない、地下に汚染物質が浸出する危険性があるからに他ならない。 

環境破壊―認識していた県
 県側はこれまで、二重の遮水シートで汚染水が漏れ出すことを防止すると説明してきたが、浸出水対策のため漏水感知システムなどのバックアップ機能を備えることを公表している。つまり、絶対的な安全などないということを、はじめから県側が認めているのである。

 処分場工事が始まる数年前の住民説明会の記録には、次のような記述がある。

 住民:飲用をはじめ全ての水を地下水で対応しているが、地下水への影響はないのか。
 県側:処分場においては、遮水工により浸出水の地下水への汚染を防止することとしており、遮水工については、2重の遮水シートによる遮水構造とすることを基本としている。また、この遮水工に加え、万が一に備え、漏水感知システム及び自己修復機能をバックアップ機能として備えることとしている。

 県側の記述にある《万が一》は、自然環境を破壊する可能性を県が認識していたことを示している。

 また、別のページからは、県が上水道への切り替えを明言していたことが分かる。

 住民:飲用は簡易水道を使用している。
 県側:簡易水道については、上水道に切り替えることとしている。

 住民:井戸水を飲用として利用しているが、上水道に切り替えてもらえるのか。
 県側:上水道に切り替えることとしている。それに伴う経費は、初期費用は県で負担し、水道利用料については、受益者で負担してもらうことになる。

 県側は、豊富な地下水を利用した簡易水道や井戸水を飲用に利用してきた住民に対し、すべてを川内川の水による上水道に切り替えることを計画段階で約束しており、ここでも汚染物資の浸出が想定内となっていたことは明らかだ。

地元住民らの水源への思い
 地元住民らが、処分場建設工事が進む現在も反対運動を続けている理由のひとつが、水源となっている冠嶽の地下水が汚染されることへの不安であることは間違いない。

 処分場建設現場のそばにある地元住民らの工事監視施設には、彼らの思いを記した看板などが掲示されているが、そこにはこうある(下の写真参照)。
霊山冠嶽と水を守ろう
5km以内に9ヶ所水源地がある

霊山冠嶽と水を守ろう  5km以内に9ヶ所水源地がある

 冠嶽山麓にある処分場予定地の周囲には、少なくとも9箇所以上の水源地があるとされる。
 管理型の最終処分場が完成して稼働した場合、前述したように汚染物質が地下に浸出するのは必至。そうなれば前出の簡易水道施設はもちろん、すべての水源が失われることになる。
 ふるさとを育んできた自然の恵みを、土建国家が出すゴミで破壊する構図だ。

 下の写真は、今月19日に薩摩川内市で開かれた処分場建設に反対する地元住民らと弁護団との集会だ。
 100名あまりの人たちが、チームを組む弁護士らの話を熱心に聞き入っていたが、夜遅くまで続いた集会では誰一人帰ろうとしなかった。

処分場建設に反対する地元住民らと弁護団との集会(1月19日)

 「子どもや孫たちの世代に、汚染された郷土を残すわけにはいかない」(地元の60代男性)。そうした強い思いが、処分場建設反対運動を続ける多くの人たちを支えているのは事実だ。

 そうした住民らの思いが届いたかのように、処分場建設工事は、冠嶽が育む「水」に苦しめられ、厳しい状況に追い込まれていた。

つづく



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