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豊富な地下水―産廃処分場を葬る可能性
土建国家の象徴 ― 鹿児島・産廃処分場工事の現実(4)

2013年1月25日 09:15

 住民の反対を無視して建設が進められる産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)をめぐり、鹿児島県側が建設工事が遅れる本当の原因を隠している疑いが濃くなった。
 平成25年度に竣工、同年度中に稼働させると公表してきた同処分場だが、作日報じた通り、工事が難航し予定の工期を大幅に延長せざるを得ない状況だ。
 完成時期さえ見通せない事態を招いた原因は、自然の恵みである「水」の豊富さにあるのだが、これについて事業主体である鹿児島県環境整備公社は、「雨水」が原因で「湧水」ではないと強弁し始めている。
 「湧水」の存在を否定する背景には、処分場自体の危険性が公になるのを恐れる県の隠蔽姿勢があると見られる。

杜撰な契約
gennpatu 1864410938.jpg 平成22年10月に結ばれた当初の請負契約によれば、処分場建設工事の工期は、平成22年10月13日から平成25年5月31日となっていた。
 しかし、処分場の事業主体である鹿児島県環境整備公社への情報公開請求によって入手した「変更契約書」では、平成23年7月に工期を3ヶ月延長し、改めて5月31日が8月31日に変えられている。右がその伺い文書(決済文書)だが、なぜか契約変更の理由が記されていない。

 変更契約の理由について公社に聞いたところ、即答ができない状況で、しばらく経ってから「交付金の決定時期が遅れた」などと、訳の分からないことを言う。交付金の決定時期と工期の延長とは関係ないはずだが、公社側の回答は最後まであやふやなままだった。

 契約変更に伴う決済文書には、変更に至った理由が明示されているものだが、この伺いには何も記されていない。公社の部内で、口頭による変更理由の説明があったとしか思えず、そうだとすれば不適切極まりない。
 そもそも公文書とは、公的機関が説明責任を果たすために作成するもので、単なるアリバイであってはいけないはずだ。

 県にも同様の質問をぶつけてみたが、「公社のやっていることはこちら(県)では分からない」と、ふざけた回答だった。100億円もの公費を投入する事業だという自覚が皆無なのである。
 結局、請負契約が変更された理由について、納得できる説明はないままだ。

「湧水」を否定する環境整備公社
 HUNTERの記者が請負契約の変更にこだわったのには狙いがあった。
 処分場工事が遅れ、工期が大幅に延びる以上、変更契約が必要だ。さらに、数ヶ月続いた夜間工事や発破作業は当初の施工計画には一切含まれておらず、この分の変更契約も必要だったはず。複数の変更契約がなされるからには、更なる公費支出が見込まれるため、その金額を確認するため情報公開請求を行っていた。
 しかし、出てきたのは当初の契約内容と問題の変更契約だけ。それ以外の変更契約は結ばれていないという。

 それでは追加工事や工期延長の契約はいつ結ぶのか?その点を質したところ、公社側の思惑が浮かび上がってきた。

 記者:夜間工事や発破についての変更契約がないまま、作業が進んだのか?
 公社:もともとの契約の中でのやり繰りだ。これから作業内容を精査する中で、追加工事等についての変更契約が上がってくると思う。

 記者:工期はどの程度延びるのか?つまり処分場の完成はいつか?
 公社:精査中のため答えられない。

 記者:工期が延びる理由は何か?
 公社:雨水が多かったため、窪地の水を抜くことに手間取ったということもある。

 記者:雨水だけではないだろう。湧水もあるではないか。
 公社:湧水はない。雨水だけだ。

 記者:それはおかしい。これまで公社は、雨水と湧水が多く、濁水処理設備で処理しきれないから、やむなくポンプアップして阿茂瀬川に放出しているとしてきたではないか。なぜ湧水がなくなるのか?
 公社:そんなことは言っていないはずだ。

 記者:ポンプアップしていることに間違いはないか?
 公社:ポンプアップしているのは雨水だけだ。

 記者:そういう嘘はよくない。湧水が多いと言ったのは公社ではないか。
 公社:湧水はない。

 つまり、公社は、これまで認めていた湧水の存在を完全否定し、処分場工事現場には湧水など出ていないというのである。ポンプアップしているのは雨水と言い張るしかない状況なのだ。

湧水対策―自ら公表の矛盾
 しかし、これは到底通用しない暴論で、公社のこれまでの公表事項とも矛盾する。
 下は、公社が発行している「環境整備公社だより」(vol.7)の一部だが、「地下水集排水施設」の欄には、《埋立地内への地下水・湧水の浸入を防止するため、集排水管・排水材・砕石により集水し、水質を確認した上で、阿茂瀬川へ放流します》とある。

 また、「濁水処理設備」の説明には、《工事現場から発生する濁水や窪地に溜まっている水については、濁水処理設備で処理した後、阿茂瀬川へ排水しています》と明記してある。

(3) 地下水集排水施設

(4) 濁水処理設備

 いずれの記述も「湧水」の存在を前提としており、とくに「地下水集排水施設」を設置していることは、「湧水」が工事に多大な影響を与えていることを自ら証明しているようなものなのだ。

 それでは、なぜ公社は「湧水」の存在を否定するのだろう?

地下水、湧水が処分場を葬る
 下の2枚は、処分場の実施設計の概要書から抜き出したページだ。地下を流れる「地下水」と湧き出る「湧水」を区別しており、それぞれにおける設計上の対応が記してある。施設設計の前提に、地下水や湧水の存在を置いているのは間違いないことで、工事期間中だけ「湧水」が消えることなどあり得ない。

 それでも公社が「湧水はない」と主張するのは、工事が遅れた原因が湧水にあると認めた段階で、設計上のミスがあることを宣伝する形になってしまうからなのだ。
 想定を超えた地下水量は、処分場自体の危険性を示す結果につながる。

gennpatu 1864410939.jpg  gennpatu 1864410940.jpg

 他県の産業廃棄物処理業者に聞いてみたが、まず「エコパークかごしま」(仮称)のように、固い岩盤上に管理型の処分場施設を造ることはないという。さらに、地下水や湧水が豊富な場所であればなおさら建設は難しいと断言する。 

 岩盤が固ければ固いほど、遮水シート破損の可能性が高まる。また、地下水の量は一定ではなく、雨季やゲリラ豪雨の後には必ず増えてしまうため、施設内に浸入するのが確実なのだという。
 周辺に水源地があれば、近隣住民に被害を与える可能性も生じるため、はなから薩摩川内市の処分場予定地のような場所は選ばないというのだ。

 ある産廃業者は、「エコパークかごしま」(仮称)の将来について、次のように予言している。「薩摩川内の施設は『水』に葬られますよ。地下水が豊富、しかも工事を遅らせるほどの湧水が出るというんじゃ、施設がもたない。工事が終わっても、湧水は止まらないんですよ。どんなに頑丈な建造物でも、水には勝てない。海底トンネルを歩いてみれば分かるでしょう。絶えず水が滴り落ちてる。わずかな隙間からしみ込むし、重い分、空気よりタチが悪いんだから。鹿児島県は立地の不利を承知でやった(処分場誘致を決定した)んだな。裏に何かあるということでしょう。うちの県では考えられない」。

 「エコパークかごしま」(仮称)の建設工事において、湧水が工事を遅らせたのは紛れもない事実だ。豊富な地下水は、処分場自体を破壊する力さえ秘めている。さらに、処分場内に侵入した水が、汚染物質の浸出を招き、県民の健康に害をもたらすことも否定できない。
 工事が遅れ、予定の工期が大幅に延長されるということは、設計上で予定された水量をはるかに超える地下水の存在があったということに他ならない。だからこそ、県側は「湧水」の存在を否定せざるを得なくなったのだ。

 地元住民が崇拝してきた霊峰・冠嶽の自然や水源をつぶそうという伊藤祐一郎鹿児島県知事の傲慢が、巨額の公費をどぶに捨てることにつながるのは確実のようだ。もちろん、知事のマニフェストにある「環境先進県」が、真っ赤な嘘であることは言うまでもない。



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