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薩摩川内産廃処分場 夜陰に紛れ脱法工事
― 背景に工期の遅れ ―

2012年12月21日 07:55

汚水が溜まっていた今年夏頃の処分場予定地 鹿児島県薩摩川内市で、県が建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称・事業主体は鹿児島県環境整備公社)の工事現場で、ライトも点けずに夜間工事が行なわれていることが確認された。

 同工事の現場では、バキューム車で汲み上げた工事現場内の汚水を残土置き場に捨て、偽装のため通常の建設残土と混ぜ搬出するという行為を繰り返してきており、法を無視した工事の現状について報じた直後は是正した形を見せるものの、しばらく経つと平然と脱法行為を行なうといった“いたちごっこ”が繰り返されている。
(写真は、汚水が溜まっていた今年夏頃の処分場予定地)

確信犯的に脱法行為
 今年10月から11月ににかけての取材では、建設業者が夜間工事において汚泥や汚泥混じりの石を建設残土置き場に運んだ上、翌日そのまま搬出する状況を確認。さらに、汲み上げた汚水も残土置き場に捨て、通常の建設残土と混ぜ偽装するなどの悪質な手口を確認、一連の行為の全貌を報じていた。産廃汚泥を勝手に捨てることは、明らかな違法行為である。

 同事業を所管する県環境林務部 廃棄物・リサイクル対策課に取材を行った直後は、周辺に見えるように工事現場をライトで照らし出し、汚水を所定の池に捨て濁水処理機を通すという定められた工事手法をこれ見よがしに実施するなどしていたが、記者が現地を引き上げたその日から、再び夜間の脱法行為を始めていた。

 確信犯的に脱法工事を行っていることは確かで、同工事の事業主体である鹿児島県環境整備公社、施工業者である「大成・植村・田島・クボタ」で構成された特定建設工事共同企業体(JV)がぐるになっているものと見られれる。

 下の写真は先月、暗闇の中でバキューム車が汲み上げた汚水を残土の上に放出する瞬間を捉えたものである。バキューム車の後方から流れ出す汚水が写っている。
 ライトを点けることで、工事内容を目視されることを避けているとしか思えない。夜陰に紛れての作業は、すなわち違法な汚泥搬出を確認されたくないからだ。

薩摩川内の処分場(1)

湧水で工事難航
 脱法工事の背景にあるのは、計画の甘さに起因する処分場工事の大幅な遅れである。
 薩摩川内市川永野にある処分場建設予定地は、直下に阿茂瀬川という川内川の支流が通っている。工事現場の真下が川なのだ。
 さらに、処分場予定地を抱く「冠嶽」は、周辺地域の水源地にもなっている豊富な地下水の供給源。当然、湧水がいたるところから湧き出ており、県による事前の地元説明会では、地元住民から「湧水が多く工事は困難」とする意見が出されていた。

 地元住民らの反対を無視したうえで、地場ゼネコン「植村組」の救済策としか思えない計画を強行した伊藤祐一郎鹿児島県知事だったが、自然の怒りには勝てなかった。湧水の多さに工事は難航、湧き出る水の処理が追いつかず汚水を川にタレ流したり、夜間に脱法工事を行うなどの対応をしてきたものの、工期は遅れるばかりとなっている。

 現場では、予定になかった「発破」(火薬を用いた爆破作業)まで用いて工事の遅れを取り戻そうと必死になっているが、湧水が枯れるはずもなく、今後も何か起きるか分からない状況だ。
 工期の遅れは税金のムダ遣いに直結する。すでに何度かの変更契約が行われているというが、このままいけば億単位の工事費が上乗せされる見込みで、改めて伊藤県政の杜撰な計画に批判が出そうだ。



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