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総選挙点描(下)
―祭りのあと―

2012年12月20日 07:45

 戦後最低の投票率のなか、自民党の圧勝に終わった総選挙。小選挙区制特有の現象とはいえ、オセロのように目まぐるしく勢力図が塗り変わる政治に、信頼性を求めることができない状況だ。
 政党乱立が争点をぼかした形となった今回の選挙だが、しらけた有権者をよそに、マスコミとそれぞれの候補者陣営だけが盛り上がった。
 当選を果たし、万歳三唱で沸いた陣営は別として、敗れた候補者の陣営には虚脱感だけが漂う。
 そうした陣営の事務所をいくつか訪ねてみたが、若い選挙スタッフ達はお祭り騒ぎの中で、それなりに何かをつかみ取っていたようだ。
 選挙デビューを飾った20代の若者に話を聞いた。

内幕知った大学生―「次も投票に行く」
 福岡市内の選挙区。公示前に頒布された前職陣営のビラは、2回で約20万枚。印刷代と頒布費用を計算すると、どう見積っても500万円は下らない。
 取材で得た情報によると、特定法人の関係者が大量動員され、ポスティングなどを一手に引き受けたという。事実なら労務の提供、つまり政治家側への寄附であるが、支援の甲斐なくこの陣営の候補者は大差で自民党公認の新人に敗れ去った。

 福岡市内の選挙区で落選した、ある候補者陣営の選挙に関わった大学生は、こう語る。
「とにかく、選挙にはおカネがかかるものだということがよく分かりました。スタッフの賃金だけでも数百万円単位になるんじゃないですかね。それに大量のチラシや封筒といった印刷物、後援会の入会申込書。三つ折の印刷物は『リーフレット』というんだそうですね。始めて知りました。とにかくどこに消えていくのか、大量の印刷物が次から次へと無くなっていきましたね。

 ウグイスさん(車上運動員)たちの人件費が1日15,000円だということにも驚きました。12日間で18万。18万ですよ。本当にいい稼ぎですね。事務所の人が教えてくれましたけど、決められた日当ではやってられないと言って、(1日に)2万も3万も要求するウグイスさんもいるそうです。ウグイスさんの世界には、胴元みたいな人がいて、選挙事務所に何人かウグイスを紹介するだけで、何割かピンハネして楽して儲かる人もいるんだそうです。僕は、ウグイスではなくてエグイスと呼んでましたが。

 とにかく、どこから資金が出てるんだろうと思っていましたが、事務所の人が借金がどうのと言っていたので、多分そうなんでしょうね。負けちゃったので、候補者かわいそうでしたけど、政治に興味が持てたのは事実なんで、感謝しています。次の選挙、必ず投票に行きますよ。政治が身近になりましたから。遠くから批判してるだけじゃだめですよね。いろいろあったけどワーッと夢中でやって、終わっちゃって寂しいですね。祭りのあとみたい」(20代・福岡市在住の大学生)。

目覚める若者
 厚い保守地盤の選挙区で、前職の選挙を手伝ったというフリーターの若者は、冷静に選挙をながめていたようだ。
 「選挙を手伝ってほしいという誘いは、選挙戦が始まる直前にもらいました。『人手が足りないので来てほしい』そう頼まれたんです。
 福岡市内で別のアルバイトをしていましたが、なんとなく断りきれずに引き受けてしまいました。でも、やって良かったと思っています。

 投票には毎回行っていたのですが、候補者やその支援者側から選挙を見るという貴重な経験ができたと思います。
 特に、ボランティアの人たちの優秀さと、献身には頭が下がりましたし、選挙はこういう人たちに支えられているのだと実感しました。
 また、相手陣営の活動のうち、あたりまえだと思っていたことが実は法律スレスレのものであったり、実際のところ法的にもアウトだったりする行為が平然と行われているのにも驚きました。法律を作る国会議員の選挙で、法律が守られないなんておかしいですよね。

 私が手伝った選挙事務所は、イライラするくらいに法律遵守でした。まじめがとりえの候補者だったので仕方がないのですが、有権者から見ると、その違いは理解できないと思います。何が良くて、なにがいけないのか、普通の市民には分からないことばかりなんです。

 例えば、個人演説会のチラシに候補者名を入れてはいけないと聞いていたけど、相手候補のチラシにはきちんと名前が入っているし、朝早くから相手候補陣営のスタッフジャンパーを着た人たちが、何人もキャッチコピー入りの旗を持って道路に立ってる。だれの陣営かすぐ分かるから違反なんでしょうけど、選挙の最終日まで毎日立っていました。選挙事務所の前にヤクザが相手陣営のジャンパーを着てビラまきに来たこともありました。警察は何も言わないんですね。やっぱりおかしいと思います。フェアじゃない。まじめにやっている候補者とそうでない候補者について、新聞やテレビは報じるべきです。当落予想だけが記事じゃないでしょう。

 公示日に、県庁から第一声の場所まで夢中で『七つ道具』を届けました。それから2週間。本当に濃密な時間を過ごすことが出来ました。うまくいかないことの方が多かったような気もしますが、それでもお祭りのような楽しい時間であった事は間違いないと思います。
 投票に行って下さい。そう叫ぶ陣営の人たちの気持ちが分かったのも事実です」。

 このフリーター君の陣営も自民党候補の陣営に敗れたが、支えた候補者の人柄が彼に転機をもたらしたのは確かのようだ。
 「政治を身近に感じた」と言うフリーター君は、「何かの形で候補者のお手伝いがしてみたい。できればもっと候補者と政治の話がしてみたい。一歩踏み出せば、僕たちも政治に関わることができるんですからね」と目を輝かせた。

 祭りのあとに残ったのは、民主惨敗という選挙結果だけではなかった。



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