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衆院福岡7区 自民候補に虚偽事項公表の疑い
―問われる候補者としての資格―

2012年12月10日 08:15

名刺.jpg 4日に公示された総選挙で、衆院福岡7区から立候補している自民党の新人候補が、選挙の公示前に身分を偽って印刷物を作成・使用していた問題に新たな事実が判明した。
 新人候補が偽って使っていたのは、同選挙区における自民党支部長の肩書き。新人候補は、正式な党機関の決定がないまま、名刺に「自由民主党福岡県第七選挙区支部 支部長」と明記した上で有権者宅などに大量頒布していたほか、選挙に立候補することを前提とした「推薦状」にも支部長の肩書きを使用、企業・団体に提出していたことが分かっていた。
 8日、自民党本部に、新人候補の支部長就任月日を確認したところ、同党七区支部の支部長が正式に決定したのは11月27日(火)だったと明言した。
 これ以前に行われた「支部長」の肩書きを使った一連の文書頒布などは、公職選挙法が禁じる虚偽事項の公表にあたる可能性が高い。
(写真が問題の名刺。加工はHUNTER編集部)

ばら撒かれた名刺と推薦願
 問題の候補者は、衆院福岡7区を地盤としてきた元自民党幹事長・古賀誠氏の後継者で、同氏の前秘書。新人候補陣営では、古賀氏の引退表明が行われた先月17日の直後、少なくとも19日の時点から「自由民主党福岡県第七選挙区支部 支部長」の肩書きを付けた名刺を作成し、選挙区内の有権者宅に頒布。さらに、選挙区内の企業および各種団体に対し、同様の肩書きで「推薦願」を提出していたことが確認されている。
(下は新人候補が企業、団体などに提出した『推薦願』。黒塗りはHUNTER編集部)

推薦状.jpg

 自民党の選挙区支部長になるには、選挙区内にある地域の党組織はもちろん、県連が次期支部長を機関決定し、しかる後に党本部が正式に認める。しかし、先月20日に自民党県連に確認したところ、7区の支部長については古賀氏の急な引退表明を受けたばかりで整理できていないとして明確な回答を避けていた。
 一方、選挙区支部長の最終的な任命権を持つ自民党本部は翌21日、同日時点での衆院福岡7区の支部長が『古賀誠氏』であることを認めていた。 

自民党本部―「支部長就任は27日」
 それでは新人候補の支部長就任はいつか?
 8日、自民党本部に新人候補の支部長就任日について確認を求めたところ、「11月27日に党公認が決定しており、同日付けで支部長に就任したと見なす」と明言した。
 新人候補のそれまでの「支部長」の肩書き使用が、正式なものではなかったことを証明した形だ。

 自民党の新人候補は、少なくともHUNTERの記者が名刺の頒布状況や推薦願の提出について確認し始めた11月20日から同月26日にまでの間、正式な「自由民主党福岡県第七選挙区支部 支部長」ではなかったことになる。

虚偽事項公表の可能性
 公職選挙法は、その第235条で虚偽事項の公表について次のように罰則を定めている。
当選を得又は得させる目的をもって公職の候補者若しくは公職の候補者となろうとする者身分、職業若しくは経歴、その者の政党その他の団体への所属、その者に係る候補者届出政党の候補者の届出、その者に係る参議院名簿届出政党等の届出又はその者に対する人若しくは政党その他の団体の推薦若しくは支持に関し虚偽の事項を公にした者は、二年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金に処する》。

 同候補が行った名刺の頒布や企業・団体への推薦願の提出は、
・《当選を得又は得させる目的をもって》
・《公職の候補者となろうとする者の》《身分》《経歴》
 に関し
・《虚偽の事項を公にした》
 ことに他らない。

 自民党本部が新人候補の選挙区支部長就任を11月27日だったと明らかにしたことで、同氏が身分・経歴を偽ったことは明白。虚偽事項公表の可能性が濃厚となった。
 公職の候補者としての資質、資格が厳しく問われる事態であることは間違いない。



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