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大物政治家の呪縛
~衆院福岡7区の現状~

2012年12月 7日 11:16

 自民党の大物・古賀誠元幹事長が引退した衆院福岡7区。県南とよばれるこの地域は大牟田、柳川、みやま、八女、筑後の各市と八女郡広川町を選挙区とする典型的な保守地盤だ。

 全国的に自民優勢が伝えられる中、改めて福岡7区で取材したところ、大物政治家の呪縛から脱しきれない同地域の現状が浮き彫りとなった。

恐怖政治
 古賀氏は福岡県瀬高町出身。参議院議員秘書を経て昭和55年の総選挙で初当選して以来、10回の当選を重ねた重鎮だ。衆院初挑戦の選挙では敗れたもののその後は一度も敗れることなく連続当選、この間、他の候補者の追随を許さぬ強固な地盤を築き上げてきた。
 逆風下の前回総選挙でも選挙区中に張り巡らされた組織がフル回転、民主党候補を抑えて選挙区での当選を果たしている。

 古賀氏をピラミッドの頂点にした福岡7区の組織は、系列の地方議員、農政連や建設業界、さらには独自の後援組織が縦横に絡み合い、容易に崩れぬ結束を保ってきた。
 古賀氏のカリスマ性に加え、莫大な政治資金が「古賀王国」を形作ってきたのは確かだ。しかし、「絶対権力は絶対的に腐敗する」という格言の通り、福岡7区では利権をめぐる黒い噂が絶えない。
 そのため“反古賀”を標榜する地方議員や有力者は少なくないが、周囲が力で押さえ込まれてしまうため、多数を占めることができなかったという。
 古賀氏本人の意思にかかわらず恐怖政治が蔓延、造反を許さぬ空気が選挙区全体を支配してきたのもまた事実である。

 前回の選挙を取材した記者のメモには、次のような記述が残っている。
《50代主婦・農家『新人候補を応援したくても表立ってはできない。周囲の人々は皆古賀さんの支援者ばかり。おかしな動きをしたら何をされるか分からない』》

《60代男性・建設業『仕事の関係で古賀さんを裏切れない。裏切ったが最後、仕事は取れなくなる』》

 こう話していた人たちを、約3年半ぶりに訪ねてみた。前回取材時に周囲の目を気にしていた農家の主婦は、いくぶん明るい表情になっていた。
「古賀さんが引退されたそうで、なんか楽な気持ちになりました。他の候補を応援したからといって白い目で見られることもなさそうです。古賀さんには地域がお世話になりましたが、(古賀氏の後継となった)秘書の人に世話になったわけではないですから。ただ、周りの人たちは、自民党を応援しなければ人じゃないみたいなことを言いだしている。またかという感じですが・・・」。
 うれしさも半分といったところなのだという。

 一方、建設業者はこれまで以上に締め付けがきついとこぼす。
「前回の選挙はとにかく動員やら集票やらきつかった。今度は楽かと思っていたら、前回以上にうるさく言ってくる。古賀さんの後継は建設業界では知らぬ者がいないくらいの実力者。業界を仕切ってきた人が選挙に出るのだから、裏切るわけにはいかない。うしろには古賀さんが控えてるんだから。7区は何も変わらないよ」。

解けぬ呪縛
 「表裏一体」。古賀元幹事長の事務所の内情を知る関係者の大半が、古賀氏と古賀氏の後継となった前秘書の関係をそう語る。その後継の前秘書は、地盤だけでなく、古賀氏譲りの力の選挙手法も引き継いでいる。

 自民党の選挙区支部長になるには、選挙区内にある地域の党組織はもちろん、県連が次期支部長を機関決定し、しかる後に党本部が正式に認めるという決まりだ。当然、党としての決定がないまま「支部長」を名乗るのは“肩書詐称”であるが、後継氏は平然と正式決定前に名刺や印刷物をばら撒いていたことが分かっている。法やルールは無視してもいいと思っているのだろうが、これでは恐怖政治の継続である。

 取材を進めると、「古賀さんから解放された」と晴々とした表情で語る人が数多くいる一方で、「何も変わらないどころか、7区はこれまで以上の土建屋選挙区になる」と明言する向きもある。ただし、どこに行っても話の主役は「古賀さん」である。
 福岡7区で、引退したはずの古賀氏の呪縛が解けるのはまだまだ先のことになりそうだが、利権政治の継続だけは断ち切らねばなるまい。



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