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鹿児島・メディポリスの人体実験 留学生の証言

2012年12月 4日 11:15

 鹿児島県指宿市で、陽子線を利用したがん治療施設「がん粒子線治療研究センター」を運営している財団法人「メディポリス医学研究財団」(永田良一理事長)の治験部門「シーピーシー治験病院」が、中国人ら海外からの留学生に金銭を渡し、薬剤の治験を行っていた実態が明らかになった。
 大学生を対象とした治験は、カネの力で若い人たちを釣っているようなもので、決して好ましいこととは思えない。とくに日本での滞在費に苦労する留学生を狙って口コミでアルバイトを募集する手法は、諸外国からの批判を招く危険性さえある。
 背景に日本人大学生の「治験離れ」があるというが、他国からわざわざ日本を選んで学びに来た留学生を、事実上の人体実験に誘い込むことは日本人の倫理観を問われかねない行為だ。
 HUNTERの取材に応えた留学生らの証言を報じる。

高額アルバイト料で勧誘
 短期間で高額な報酬がもらえるアルバイトがあると声をかけてきたのは、中国から来日していた留学生OBだったという。話を聞くために集められたのは、ある大学の構内にある食堂。7~8人の留学生が集まったところに、「シーピーシークリニック」(話の当時。現在は『シーピーシー治験病院』)の人間が説明に来たという。
 この時は、インフルエンザ用薬剤の治験という触れ込みだったといい、留学生たちは指定された期日に鹿児島市内の「シーピーシークリニック」で事前の検査を受けるよう指示されていた。

 検査を受けた留学生は、説明会時の人数より増え10人以上。身長、体重の測定に加え、採血、検尿などが行われ、検査が終わった時点で「5,000円」が配られていた。
 採用者には電話連絡が来る手はずになっていたというが、「人体実験」だということを重く見た留学生たちは治験参加を断念。ほとんどがシーピーシー側からの電話に出ることはなかったという。ある留学生が、参加をやめるよう皆を説得した結果だった。

 別の留学生は次のように話す。「アルバイト料は15万円。高額なアルバイト料をもらえるチャンスだと思っていたが、薬の実験台になることには抵抗があった。シーピーシーから電話があったが、結局出なかった。1週間程度拘束されるのもいやだった。両親に話したらものすごく叱られた。今考えると止めてよかったと思う」。

 またある留学生からは、実際に治験に参加した別の留学生の話を聞くことができた。
 「今年の夏だった。『シーピーシークリニック』の治験かどうかは分からないが、ある留学生が治験に参加した。謝礼は40万円だった。2週間くらいの期間を要したと言っていた。留学生にとって10万、20万の金額は大きい。最初は躊躇しても、金額の大きさは魅力で、自分もつい説明だけでも聞いてみようと思ってしまった。(シーピーシー側から)電話がかかってきたが、怖くなったので出なかった。二度と関わりたくない」。

狙われる留学生
 前稿で報じた通り、被治験者は「ボランティア」と呼ばれており、ネットで「ボランティアパネル」と検索すれば、募集のページが数多く閲覧可能だ。中には数十万円の謝礼がもらえることを明示している書き込みもある。
 大学時代、治験に誘われた経験を持つ人がこう話す。
「大学時代、治験のアルバイトに誘われたことがあります。1週間カンヅメにされて薬を投与され、20万円という話でした。治験というけど、人体実験ですよね。やっぱり断りますよね」。
 この証言者の話の通り、治験を行う場合は施設の中に被治験者を囲い込み、投薬して状態の変化を確認していくのだという。

錠剤イメージ じつは近年、薬の治験に積極的に参加する日本人大学生が減っているという。多種・多様なアルバイトがあることに加え、身体を犠牲にする治験に対し拒絶反応が強くなっていることが原因とされ、被治験者を海外からの留学生に求める傾向が高くなっているのだという。

 HUNTERが注視したのは、メディポリス医学研究財団がターゲットにしてきたのが中国人留学生だったという点だ。
 これも前稿で指摘したが、第二次大戦中、旧日本陸軍の731部隊(石井部隊)が病原菌の感染実験などを目的として、数多くの中国人を抗日組織の一員として拘束、「マルタ」と称して人体実験を繰り返してたことが知られている。
 中国人を人体実験の対象として虐待したことに対し、同国の人々の激しい怒りが存在することは言うまでもなく、その中国からの留学生を、いかなる理由があれ人体実験に等しい「治験」に利用することが許されるとは思えない。
 メディポリス財団に属する「シーピーシー治験病院」は、高額な謝礼を提示して中国人をはじめとする外国人留学生を実験に利用しており、国際問題になりかねない危険性さえはらんでいる。

 メディポリス医学研究財団は、指宿市で運営するがん治療施設や研究費に国や県から60億円もの公費投入を受けており、公的色彩の強い組織となっている。しかし、敷地内に動物実験用のサルを大量に飼育したり、財団の中核企業「新日本科学」に動物虐待や前臨床試験のデータ改ざん疑惑が持ち上がるなど、倫理観が問われる事態となっている。



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