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戦争か、平和か
総選挙公示 混乱と見えてきた争点

2012年12月 5日 09:55

 4日、突然の解散を受けての師走選挙が始まった。300の小選挙区と比例代表180の計480議席を争う戦いは、自民、民主の2大政党に加え、公明、社民、共産などの老舗、さらには日本維新や日本未来といった第3極を含め、現行の小選挙区比例代表並立制になってから最多の12党が乱立する構図。これを象徴するように、前日の3日から公示当日にかけ、立候補予定者陣営や立候補届出を受け付ける選挙管理委員会でドタバタ劇が繰り広げられた。
 各党の公約はもちろん、政党名や候補者の名前さえ十分に周知されていないという異例づくめの総選挙。混乱の舞台裏と見えてきた争点について報じる。

混乱した選管―離合集散・候補者乱造の証明
 公示直前まで離合集散を繰り返した政治家たち、とくに日本維新の会と日本未来の党は、立候補届け出の締め切り寸前までスッタモンダを続けた。

 維新、未来ともに比例代表の届け出が夕方までずれ込んだほか、維新・東北ブロックの立候補予定者が公示当日にドタキャン。名簿差し替えを余儀なくされ、候補擁立における粗製乱造ぶりを露呈した。
 選挙慣れしているはずの自民でさえ、近畿ブロックから出馬する予定だった候補者を4日になって四国ブロックに移したため、比例四国ブロックの届け出が午後にずれこむというお粗末さだ。

 選挙に不慣れな新人陣営の増加も混乱の一因だ。
 立候補にあたって必要となる書類は、種類が多いうえに記入上の厳格な決まりごとがある。書き間違いや省略は一切許されず、いざ本番で書類不備のため正式な立候補が認められないというケースもある。
 このため、公示前には各都道府県の選挙管理委員会が「事前審査」といわれる提出書類確認を行い、立候補の届出がスムーズに終わるように配慮されている。ポスターやチラシの内容、大きさなどもチェックの対象だ。
 今回の選挙は、これまでになく新人が多いため、事前審査の段階で必要な書類が揃わなかったり、記入ミス訂正のたびに選管通いを繰り返す陣営が続出。さらに日本未来の党など公示直前に設立された政党では届出に必要な公印の作成が遅れ、ギリギリまで調整がつづくなどこれまでになかった光景が繰り広げられた。

 最終的には12の政党による争いの構図が固まったが、第3極がらみの離合集散と候補者乱造が混乱に拍車をかけた形だ。

見えてきた争点
 原発、TPP、消費増税と重要な課題が山積し、一向に定まらなかった「争点」。しかし、ここに来て国民の中から何を選択の基準にすべきか議論する声が聞こえ始めた。

 数日前、福岡市内を走る電車の中で記者の耳に、ドア付近に居た3人の女子高校生たちの会話が聞こえてきた。
「憲法改正で国防軍!」
「核兵器まで飛び出しとるやん」
「冗談みたいな話やね」
「『やめて下さい』て言いたいよね」
「なんであんなおじいちゃんに人気があるんやろ」
「石原、石原。暴走したまま中国まで飛んでいけばいいのにね」
「徴兵制っていうなら、自分が自衛隊に行けばいい。なんで私たちまで戦争に巻き込むんやろ。ゴッコしてろバカ」(笑い)。
 口は悪いが、近頃の女子高生はなかなか鋭いと感心してしまった。確かに今回の選挙の核心をついている。

 自民党と日本維新の会が打ち出した公約は、ともに憲法改正を全面に打ち出したもので、自民は「国防軍」の創設にまで踏み込んだ。維新の「集団的自衛権の行使」も軍備拡大を伴う主張だ。
 喜んでいるのは、ネット右翼とかいわれる無責任な連中だけかと思っていたが、読売、産経などの右寄り新聞がこぞってこの2党を後押ししている。

 頻繁に行われる世論調査では、比例区の投票先を示す数字を大々的に報道。自民や維新の会が民主などを抑えて優位に立ち、両党連立が実現しそうな勢いであるかの如き記事を垂れ流している。1億人を超える有権者のうち、わずか1,000人程度の回答結果を利用して国を動かすという詐欺的手法の連続だ。世論調査は、質問の仕方によって結果が変わるもので、右寄りメディアの調査結果を鵜呑みにするのは早計である。
 石原慎太郎・維新代表や橋下徹氏を持ち上げる無責任な大手メディアには、戦前、戦中に軍部に追随し、国民に塗炭の苦しみを与えた戦争の片棒を担いだという反省などないらしい。

改憲派の狙いは軍事国家 
 憲法改正を叫ぶ政党の狙いは「9条」にある。改めて日本国憲法第9条を確認しておきたい。
《日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない》。

 尖閣をめぐる日中の緊張関係を背景に、改憲派が勢いを増した状況となっているが、憲法そのものが総選挙の争点に浮上したことで、国民自身が国の未来像について考えざるを得ない状況となってきた。何度も述べてきたが、求められているのは有権者の眼力なのである。

 憲法を改正して軍事国家への道を選ぶか、あるいは現行憲法を守り平和を希求する姿勢を貫くか・・・。自民、維新が一定の議席を獲得した場合、両党は選挙結果を盾に「改憲は国民の了解を得た」と言い出すことが予想される。今回の選挙結果次第で、日本が軍事国家への道を歩み出す可能性が高まっているのは事実だ。

 改憲VS護憲。有権者がどちらの未来像を選ぶのか判然としないが、“民主がだらしないから自民”という安易な選択をした場合、現役世代はもちろん、子どもたちの時代が暗く重苦しいものになることを自覚すべきであろう。

 軍事国家か平和国家か、それが最大の争点だ。



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