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選挙の不平等

2012年12月 6日 11:30

自動押印機による表示 4日に公示された衆議院議員選挙でメディアが取り上げるのは、選挙戦における節目ごとの選挙風景や情勢分析、各党・各候補者の主張などが主だ。
 テレビなら、解散直後の立候補者説明会や届出書類事前審査の状況などがニュースになり、次いで公示日の立候補届出、各党党首の第一声、注目選挙区での候補者の出陣式風景などが映像で流される。
 選挙準備で多忙を極める選挙事務所の様子も報じられるが、硬直化した選挙制度のせいで、思わぬ苦労を強いられるケースがある。
 選挙制度の不備について取材したが、有権者が知らない各陣営の苦労があった。

選管まで5分 かたや1時間半
 例えば福岡県のケース。同県内には11の選挙区があるが、出馬するすべての候補者が福岡県庁内にある選挙管理委員会に立候補の届け出を行う。この立候補届をめぐって、地域間で天国と地獄ほどの違いが生じるのである。

 県庁所在地は福岡市で、同市内を含む三つの選挙区にある陣営事務所なら距離が近くさほど対応に苦労しない。もっとも近い候補者事務所と県庁を結ぶ時間は、車で5~10分ほどだ。
 一方、悲惨なのが筑後、筑豊といった地域や北九州市にある選挙区の陣営。福岡市からは遠く離れており、選管への対応に相当の時間と労力をかけざるを得ない。車で1時間半、電車利用ならそれ以上といった陣営事務所も少なくない。
 立候補届の提出までには、必要書類などの「事前審査」が必要なのだが、この段階で訂正や不備が相次げば、選挙前の貴重な時間や人を県庁との往復で消耗させることになるのだ。

 同県内の陣営事務所では都合4回、県庁との往復を重ねたという。担当者はこう話す。
「福岡市内の陣営なら往復しても1時間はかからないでしょう。うちは車で1時間半、電車なら2時間かかることもある。おカネがないので贅沢なことはできないから、電車利用になりました。事前審査ではほんの些細なことでも『もう一度』ということになり、その度に県庁に行くことになってしまいました。せめて事前審査くらいは県庁以外の自治体でやってもらいたい。ネットも発達しているのだから、データを送って審査してもいいんじゃないでしょうか」。

時間との勝負 ヒヤヒヤの第一声
 同じく県庁から遠い選挙区の別の陣営では、候補者の第一声が遅れ、関係者が肝を冷やすシーンも。
この陣営は、第一声を出陣式と切り離して選挙区を象徴する場所で行ったため、通常より厳しい時間設定で選挙戦初日に臨んでいた。
 平成21年の総選挙のケースを参考に、選挙の七つ道具を受け取った部隊が、県庁を出て第一声の現場に到着する時刻を想定していたのだが、肝心の県庁スタートが予定より30分以上遅れたからさあ大変。陣営幹部が時計を見ながら担当者とやりとりする緊迫した状況となってしまった。結局、第一声は30分近く遅れたが、なんとか乗り切ったという。
 県庁からの距離が遠いばかりに起きたハプニングだが、たしかにこれでは平等とはいえない。

不平等さらに
 不平等なのは、選管がらみの話だけではない。選挙期間中に、定められた枚数を郵送することが許される各陣営の選挙はがき(法定はがき)でも同じようなことがある。

 制度上、候補者たちが出すことを許される選挙はがきはそれぞれ35,000枚。福岡県内11選挙区に総49人が立候補しており、すべての候補者が制度を利用すると選挙期間中に171万5,000枚が集中することになる。
あて名書きが済んだ分から順次郵便局に持ち込まれ、「選挙用」であることを示すスタンプが明示されたあと、有権者に配達される。ちなみに、郵送費用は公費負担、つまり税金で賄われている。

 候補者陣営が選挙はがきを持ち込む先は郵便局なのだが、どこの局でもOKというわけではない。じつは選挙ごとに、持ち込み郵便局がひとつに限定されてしまうのだ。
福岡県の場合、今回の選挙では「博多北郵便局」が指定されており、他の郵便局は受け付けない。
 福岡市から離れた地域の選挙区で戦う候補者陣営は、ここでもまた選挙中の貴重な時間を消費しなければならないのである。明らかな不平等だ。

 選挙制度上の地域格差について触れた報道は少ないが、以前からこうした不平等を指摘する声は絶えない。



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