衆院福岡4区から出馬を予定している自民党の新人支部長が、建設会社から給与を受け取っていた期間がありながら、意図的に経歴から省いていた可能性が高まった。
選挙後に“経歴詐称”と言われてもおかしくない状況だが、一定期間は複数の建設会社から給与を得ていたことが分かっているほか、勤務実態を伴わない報酬受け取りだったことも判明している。この分については、明らかな“闇報酬”であり、自民党と建設業界の癒着を示すケースと言えそうだ。
また、支部長が給与を受け取っていた建設会社のうち、1社については国土交通省が口利きをしていた疑いも浮上している。
9日、HUNTERの取材に応じた支部長は、一連の事実について認める話をしている。
議員秘書歴25年で支部長へ
建設会社から給与を得ていたのは、「自由民主党福岡県第4選挙区支部」の支部長で、次期総選挙への出馬を表明している宮内秀樹氏(50)。
同氏は愛媛県出身、大学卒業後に総務庁長官などの要職を歴任した塩崎潤元衆議院議員の秘書となり、以来25年間を永田町で過ごした人物だ。議員会館勤務時代に秘書会の会長となるなど、永田町でも知られた存在だった。
平成8年から14年間、福岡4区選出の渡辺具能前衆院議員の政策秘書を務めた縁で渡辺氏引退後の同区支部長に名乗りを上げ、候補者選考を経た昨年12月、正式に支部長に就任していた。自民党選挙区支部の支部長は、次期総選挙におけるの事実上の公認候補である。
建設業界との深い関係
HUNTERの調べによれば、宮内氏は平成8年、塩崎潤氏の長男・恭久氏(元官房長官)の秘書を辞して渡辺前衆院議員の政策秘書になるまでの7か月間、東京都内の建設会社社員として働いていた。
さらに、平成21年9月から今年9月までの3年間、関東地方にある建設会社から給与を受け取っていたほか、同じく21年の同時期から22年の夏ごろにかけて、別の建設会社からも報酬を得ていた。この時期の2件が“闇報酬”である。
秘書時代を通じ、海洋土木を専門分野とするいわゆる“マリコン”をはじめ業界とのつながりが深く、報酬をもらっていた会社はすべて建設会社だった。
しかし、次に示した宮内氏のホームページにあるプロフィールを見ても分かる通り、建設会社勤務については一切触れられていない。
なかった勤務実態
宮内氏のケースにおける問題点は三つ。
まず、平成21年から報酬を得ていた建設会社においては、2社とも勤務実態がなかったということだ。
宮内氏は、同年7月の解散・総選挙以来、渡辺前衆院議員の秘書として活動していたほか、昨年からはほとんど自分の政治活動に時間を費やしてきている。建設会社の仕事をこなす余裕などなかったはずだ。
とくに、昨年12月に自民党福岡4区の支部長になってから現在までは、選挙区内を走り回る毎日が続いており、別の仕事ができる環境にはない。
この間、勤務実態がないまま今年の9月まで給与だけを受け取る関係(1社は平成22年まで)が続いていたことになり、“闇報酬”であったことが歴然としている。
業界との関係、意図的に隠蔽か
次に問題視されるのは、建設業界との密接な関係を、意図的に隠した疑いがあるという点だ。
前掲の宮内氏のホームページの経歴を見ての通り、秘書としての経歴以外は記されていない。
政治一筋を強調したかったということらしいが、少なくとも平成平成8年4月から同年10月までの7か月間余りは、専業で海洋土木専門の建設会社に勤務しており、永田町との関係は切れていたことがハッキリしている。
経歴として「建設会社勤務」程度のことを入れても良かったはずだが、これも記載されていない。
後述するが、宮内氏はマスコミ各社に提出した「調査表」と呼ばれる立候補予定者向けの経歴書にも、建設会社勤務の事実を記入していなかったことを認めている。
平成21年以降に報酬を得るようになった2社については、勤務実態に見合わぬ“闇報酬”だったため、意図的に「なかったこと」にしたと見る方が自然だ。
浮上した国交省の口利き
最大の問題と見られるのは、宮内氏が平成21年から22年にかけて報酬を得ていた建設会社とのつながりだ。
ある永田町関係者の話によれば、大手建設会社の下請け企業に宮内氏を紹介し、「捨扶持」(同関係者)を得られるよう口利きをしたのは、国土交通省の役人だったという。
別の関係者も同様の話をしており、国交省側は宮内氏以外の人間にも建設会社を世話することを打診してきたとされる。
事実だとすれば、政・官・業の癒着を示す典型的な事例であり、批判は免れない。
闇報酬、否定してみたものの・・・
今月9日、周辺取材を終えたため、建設会社との関係、さらには闇報酬を受け取っていたかどうかについて宮内氏本人に話を聞いた。
取材場所は指定された福岡4区内にあるホテルのロビー。当初は建設会社からの報酬の存在さえ否定していた宮内氏だったが・・・・。