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ゴリ押し県営住宅建設 鹿児島県に批判高まる

2012年11月 2日 09:35

 鹿児島県が、鹿児島市松陽台町に県営住宅300戸の建設を計画している問題をめぐり、同県の強引な姿勢に対する批判が高まりはじめた。
 住宅建設の前提となる都市計画変更にからみ、これまで反対運動を続けてきた戸建住宅「ガーデンヒルズ松陽台」の住民だけでなく、既存の県営住宅自治会までが反対の意思を表明。あわてた県が、同自治会の会長に説明を求めるなど圧力とも取られかねない行動に出ていたことも明らかとなった。
 さらに、県が計画の拠りどころのひとつとして挙げていたアンケート結果についても、HUNTERが報じてきた「捏造」が事実だったことを示す証言が相次ぐ事態となっている。

既存県営住宅からも反対の意思表示
 この問題は、県住宅供給公社が開発・販売している「ガーデンヒルズ松陽台」の販売不振が発端だ。約11haの土地を開発し、平成15年から「最高の住環境」を謳い文句に戸建住宅用地470区画を販売する計画だったが、売れたのは170区画程度(平成23年2月までの実績)。
 困った県は、同地区最大の面積を占める約5.6 haの区画に「県営住宅」を建設することを決め、昨年春、唐突に計画を発表した。地元住民に対する事前説明は一切なかったとされ、戸建住宅住民らが反対運動を続けていた。

gennpatu.jpg 県の計画を実施するには鹿児島市の都市計画変更が必要。このため市は先月27日に変更の前提となる説明会を開催したが、これまた住民との日程調整を拒否しての強行だったため、計画見直しを求めて戸建地区の町内会が市に直訴するなど住民らの反発が強まっていた。

 ところが27日の説明会当日、これまで県営住宅増設に反対していた「松陽台町内会」に加え、既存の県営住宅住民で構成される「県営松陽台団地自治会」が計画に対する市へのお願い文書(右参照)を連名で提出。事実上、計画に反対する姿勢を示していた。
 地元関係者の話によれば、この説明会直後、県営松陽台団地自治会の会長に対し県が説明を聞きたいと申し入れたという。圧力と取られてもおかしくない状況だ。

 お願い文書を手交された市側が話を聞くというのなら話の筋が通るのだが、いきなり県が自治会長に連絡するのはどう考えてもおかしい。反対運動の拡大を避けたい県があわてた証左でもあるが、市長あての文書の内容を県に知らせた鹿児島市の姿勢にも疑問が残る。

 県および市は、年度内決着を図ろうとする役所側の都合を地元に押し付ける構えだが、事はそう簡単に進みそうもない。

アンケート「知らない」―証言続々 
 県は昨年、県議会企画建設委員会に対し、関係住民の声を集計したとするアンケートの結果を報告したが、その結果は、松陽台地区計312戸のうち「賛成、理解、特に意見なし」が256戸となっており、住民の8割以上が建設計画に賛同している形となっていた。

 しかし、県建築課住宅政策室はHUNTERの取材に対し、県議会で報告したのは戸建住宅だけを対象とした調査結果ではなく、松陽台地域にある市営住宅や県営住宅の住民の数を加えていると回答。さらに、県営住宅については自治会役員会の話をまとめただけで、実際に各世帯の意思を確認したものではなかったことを認めていた。(ちなみに、松陽台町の戸建住宅に住む129世帯中111世帯が建設反対の意思を明確にしている)。

 この件に関し、既存の県営住宅住民に改めて取材したところ、大半の住民はアンケートのことさえて知らなかったことが確認された。
「アンケート?聞いたことないですね。いつの話ですか?県営住宅が増えるという話は噂程度には知っていますが、詳しい話は分からないですね。反対でも賛成でもなかったけど、勝手にそんなことをしているのなら県は信用できませんね。胡散臭い」(40代男性)
「県営住宅の増設については、話だけは聞いています。しかし、賛成か反対かの意見を聞かれたことはありません。県は、なんでそんな嘘をつくんでしょうね?」(50代主婦)

 かつて県営松陽台団地自治会の役員を務めたことがある男性でさえ、アンケートのことなど知らなかったとしてこう話す。
「県営住宅の増設について聞かれたことはありません。アンケートはなかった。計画についても、そういえば何かお知らせの紙が来ていたかな、という程度。正直、県営住宅の増設については、関心がありませんでした。計画の話が出たのは、私が自治会の役員を交代した後のことです。ただ、このあたり全部の土地が県営住宅で埋め尽くされても困りますよね。商業施設や公共施設がなければ地域としての充実は図れないですから。戸建住宅の人たちとも仲良くまちづくりをしていくことが理想ですからね」。

増設計画に高まる批判の声
 既存の県営住宅に住む人たちからも、県の方針自体に疑問を投げかける声が上がっている。
 前出の元自治会役員の話。
「私はここ(松陽台)に住んで良かったと思っていますが、お年寄りには大変でしょうね。ここは、駅までの道の勾配が急で、かなりきついと思います。つい最近も、不便だからと引っ越したお年寄りがいました。市街地の県営住宅に住むのが高齢者だとして、ここに移住させられたら大変でしょう。なぜ県は無理して県営住宅を作りたがるんでしょうか?」

 別の県営住宅住民からも、県や市の姿勢を批判する意見が聞こえてきた。
「私達にとって松陽台団地は終の棲家というわけではない。市街地から遠すぎるのは確か。ただし、戸建地区の人たちとも同じまちの住民。スーパーや学校ができるという宣伝文句を信じて土地を買った人たちの気持ちは分かる。県営住宅ばかりの松陽台になれば、資産価値が下がるのは当然で、怒るのは無理もないと思う。これは差別とかそういう話ではない。大体、人の都合も聞かずに計画を変更したり、説明会を開いたりと役所の勝手が過ぎるようだ。私達も税金払っているんだから、皆が納得できるやり方が必要だ。ムダな投資ばかりして、結果的に県営住宅の家賃を上げるという心配もある」。

 一方、県に騙された側の戸建住宅の住民からは、切実な声が上がる。
「希望ヶ丘団地の住民を強引に立ち退かせようとしているらしいですが、希望ヶ丘に住む私の知人は、『松陽台には行かない。車も持っていないのに、なぜ不便な場所に行かなければならないんだ』と怒っています。県の住宅供給公社が赤字だからといって、しわ寄せを住民に持ってくるのは筋違いでしょう。
 県は商業施設ができると言っていたけど、その用地も県営住宅にすることになってしまったわけで、これでは松陽台はただの寝る場所になってしまう。何もデパートを誘致して欲しいと言っているわけではありません。小さな商業施設で結構だし、小学校の分校でもいいですよ。約束したことのひとつくらい実現してもらわないと、このまちは発展しない」。

 これまで計画に反対してきた戸建住宅の町内会だけでなく、既存の県営住宅住民にまで異議を唱えられる事態・・・。
 無理やり計画を進めてきた県や市は、こうした声をどう捉えるのだろうか。



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