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総選挙 求められる有権者の眼力

2012年11月26日 09:20

gennpatu 1864410755.jpg 小党乱立という異例の事態の中、政策や理念を置き去りに総選挙の前哨戦だけが激しさを増している。
 小泉・郵政選挙の結果生じた「格差」。政権交代選挙でもたらされた「政治不信」。いずれも提示された課題や公約を承知で有権者が選んだ結果である。失敗だったことは潔く認めるしかない。だが、騙した方の自民、民主、公明の政治家達は、何の責任も取らず、性懲りもなく党利・党略、個利・個略の明け暮れる。こうした政治家達を前に、問われているのは有権者の政治家を選ぶ眼力ではないだろうか。

混迷示す離合集散 
 事実上の2大政党時代になったとばかり思っていたが、いざ解散と同時に16もの政党が出現、その後は離合集散を重ねて26日現在は「14」。日替わりで政党の数が変わり、整理するのが大変なほどの騒ぎで、混迷を絵に描いたようなドタバタぶりだ。

 新聞の立候補予定者一覧表を見ると、担当記者の苦労がしのばれる。一覧には、自=自民党、みんな=みんなの党、生活=国民の生活が第一などと注釈欄を設けるのが常だが、政党の数が多すぎて、これだけでかなりのスペースをとってしまう。さらに、次々と新党が出現しては合流という事態が続いており、そのたびに所属政党名の確認が必要となっている。選挙担当記者でさえ、即座に政党名を答えられないという前代未聞の選挙なのだ。
 
 衆院解散の日には「太陽の党」と表記されていた立候補予定者は、数日後の報道では「日本維新の会」。山田正彦・亀井静香両氏が立ち上げた「反TPP」に合流した「減税日本」の立候補予定者も同様である。政党間の連携をめぐる動きは続いており、来月4日の公示の時点で、再び候補者の所属政党が変わっているケースも予想される。

 価値観が多様化した時代とはいえ、政治家の都合で政党が乱立するのは、好ましいことではない。民主党から維新の会に移った国会議員達のように、目先の利益(選挙での勝利)のために主義主張を変えるようでは政治への信頼が薄れるばかりだ。

定まらぬ争点―「憲法」が焦点に浮上
 政党の数だけではなく、肝心の「争点」も定まらない。
 TPP、原発、消費増税、いずれも国の未来を決定付ける重要な争点なのだが、14(26日現在)もの政党がバラバラに主張を展開しており、有権者にとっての最大の判断基準が何なのか判然としないまま、立候補者陣営の動きだけが激しさを増すという奇妙な状況だ。

 ここにきて「国民の生活が第一」を中心としてTPP、原発、消費増税に反対するグループの連携が進み始めており、維新の会との違いが鮮明になり始めたが、自民、民主がこうした諸課題に対する党内の意見をまとめきれておらず、有権者にっとっては分かりにくい選挙となりそうだ。

 そうした中、浮上してきたのが「憲法改正」の是非である。右を選ぶか中道か、はたまた左か、そうした見方をした方がよさそうな総選挙の構図となってきたのは事実だ。

 自民党と維新は現行憲法を否定、全面改正(石原氏は『破棄』)によって集団的自衛権を確立し、軍備拡大を目指すのだという。両党は、自衛隊を正式な「軍隊」にし、周辺諸国に武威を示すことを目的としており、国際社会の冷たい視線もお構いなしだ。何かといえば「国益」の重要性を叫ぶ連中ほど、じつは国益をを損なっているという現実がそこにある。

 自民や維新といった改憲勢力が議席を伸ばし、衆院の3分の2を押さえる事態となれば、この国が一気に“新たな戦前”になることは必至。改憲の目的が軍備拡大であるだけに、それが現実となれば子どもたちや孫たちの世代にとんでもない世の中を引き継がせることとなる。

 軍備強化に莫大な税金が必要となることは言うまでもない。自民党は土建国家の再来を目論み、国土強靭化計画に10年間で200兆円などとはしゃいでいるが、これに軍備強化まで加えればけた外れの予算が必要となる。もちろん消費税率10%程度で事が済む話ではない。

 3年間に政権を奪われた自民党だが、赤字国債を乱発し、国家財政を危機的状況に陥らせてきた反省をするどころか、より先鋭化して国民への犠牲をいとわない集団になったようだ。

 繰り返すが、自民や維新の主張は、憲法改正を前提としている。改憲の是非が選挙の大きな争点になったことは明らかである。

失速した「維新」―色あせた主張
 台風の目になると予想されていた「日本維新の会」だが、公示を前に失速した。原因は自らの変節である。11月17日、結党直後の「太陽の党」(旧・たちあがれ日本)と維新の会が“野合”し、石原慎太郎氏が維新の新代表に就任した。

 政党同士が連携する条件として、しつこいほどに『政策と理念の一致』を強調していた橋下徹大阪市長だったが、首都圏での人気を誇る石原氏のラブコールをあっさりと受け入れ、『政策』も『理念』も放り出してしまった。パフォーマンス重視による議席数確保に走った結果だ。

 あれだけ騒いでいた“脱原発”や“消費増税反対”といった主張は影をひそめ、すべて推進という格好。呆れたことに、増税については民・自・公が決めた10%どころか、11%に増やして地方税化するのだという。さらに、維新八策に明記していた企業・団体献金も容認に転じており、目玉政策のすべてが180度の方針転換だ。

 橋下市長は、「政治にとって必要なのは、政策を語ることではない」とまで言い出す始末で、これはもう“前言撤回”程度の話ではない。選挙の後で公約違反を咎められるのは政治の常だが、維新の会は戦う前に嘘つきであることを満天下に示した形だ。

 候補者選定の主導権も旧太陽の党側に握られ、首を傾げたくなるような公認候補擁立が続いており、発表される候補者名簿も極めて杜撰。公認候補の肩書きもあやふやなら、報道関係者が記された電話にかけてももつながらないケースが多いという。維新の会は、政党の体を成していないのだ。

 実現困難ながら世間受けする高い位置の政策や方向性を打ち出し、次々にハードルを下げてなし崩し的に平坦化する手法は橋下氏の専売特許である。問題提起して世間の耳目を集め、難しいと見るや、別の政治課題を作り出すのが橋下流なのだ。相変わらずマスコミが扇動する劇場型政治が幅を利かせているが、さすがに維新の会の変節に対しては厳しい記事が目立ち始めている。

極右の台頭
 尖閣の買収を言い出したのは維新の会の新代表となった石原慎太郎前東京都知事だ。昭和47年の日中国交正常化以来、最悪となった現在の状況を招いたのはまぎれもなく石原氏であり、責任がないとは言えない。しかし、“暴走老人”は平然と憲法破棄を公言し、軍備倍増を唱えて掲げて悦に入る。
 同氏は20日、外国特派員協会で講演し、外交で発言力を確保するためには軍事的な抑止力が必要とした上で「核兵器に関するシミュレーションぐらいしたらいい。これが一つの抑止力になる」と述べ、核兵器保有を容認する姿勢を示した。狂気の沙汰である。

 暴走の果てが戦争だとすれば、それは日本人全体にとっての不幸でしかない。が、大手マスコミはその点の危険性を伝えようとせず、石原―橋下の連携という茶番劇を大見出しで伝えるだけ。軍部のお先棒を担ぎ、国民を煽った戦前、戦中の反省など皆無なのである。極右の台頭に危機感を募らせる人は少なくあるまい。

右傾化強める自民
 右傾化のもう一人の立役者で、すっかり宰相気取りになっている自民党・安倍総裁だが、最後の党首討論では、野田佳彦首相の勢いに飲まれてしまい、ちぐはぐな答弁を披露。すっかり評価を下げてしまった。劣勢挽回のため勇ましい発言を連発してはいるが、勇み足としか言いようのないものが目立つ。

 安倍氏が憲法改正、軍備拡張を持論とするタカ派であることは周知の通りだ。発表された同党の公約も、憲法改正を前提に「国防軍」の創設を明記、友党である公明党が腰を引く事態を招来した。
 さらに、金融政策をめぐり、無制限の金融緩和や日銀による建設国債の直接引き受けを提言、財政秩序の崩壊を招きかねない愚行であることを無視して、円相場が下がったことを自画自賛する能天気ぶりだ。

 原発推進、増税容認、公共事業のばら撒き・・・。安倍自民党の主張はハッキリしている。TPPについては、選挙前だけ慎重姿勢だが、政権に返り咲いたとたん、交渉参加に前向きになることは言うまでもない。自民党最大のパトロンである「財界」が背中を押すからである。

 3年間の野党暮らしで懐が乏しくなった同党は、TPPと増税、そして原発の3点セットを意欲的に進めることが予想される。いずれも財界が推進を強く主張していることで、自民党が政権に返り咲けば、国民の生命・財産より大企業の利益が優先される時代への回帰が顕著となるだろう。もちろん、それが国民のためになるとは思えない。

問われるのは有権者の眼力
 誰がやっても同じ。何度も裏切られてばかり。そうしたあきらめムードを払拭したのは3年前の民主党だった。結果、政権交代が実現したのだが、3年間で3回も首相が代わり、迷走を続けた末に、追い込まれた形で解散してしまった。逆風を招いたのが、同党の稚拙な政権運営と、歴代首相の軽さであったことは否定できない。

 霞が関の軍門に下り、期待を裏切った民主党の責任は重い。しかし、公共事業を利用して票とカネを吸い上げるシステムの上に居座り続けた自民党よりはましであることは確かだ。自民党が右傾化していく以上、民主党やそこを飛び出した国民の生活が第一といった政党には、立ち直る時間を与えるべきで、そうでなければこの国はバランスを欠いた危険国家への道をたどることになる。

 TPP、原発、増税、いずれも重要な争点だ。有権者の一人一人が、しっかりと各政党の提示した具体策を吟味せねばならない。しかし、憲法を改正して軍事国家になるような選択は、子どもたちの世代に、重く危険な時代をもたらすということを忘れてはなるまい。
 政治家個人の資質や能力を見抜く目―すなわち眼力が求められている。



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