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僭越ながら:論

石原新党の危険性
~問われるこの国の“民度”~

2012年10月30日 10:15

 日本維新の会に続いて石原新党の発足が確実となった。民主、自民の体たらくに辟易した有権者から一定の支持を集めると見られているようだが、それぞれの主張はこの国を危険な方向に導く危険性をはらんでいる。前提にあるのが「憲法改正」だからだ。
 国の統治機構を変えると言う日本維新の会、中央主権体制の打破を叫ぶ石原新党。いずれも明治以来の「官」に対する敵意をむき出しにしているが、霞ヶ関を解体するだけで日本が良くなるとは思えない。ましてや憲法を改正することが、国を救う唯一の道であるとは到底思えない。
 石原氏の主張が持つ危険性について考えた。

石原氏への疑問
 石原慎太郎氏が東京都知事を辞めて新党を作ると言い出した。掲げたのは中央集権体制の打破で、その前提となるのは「憲法改正」である。「改正より破棄」とまで言い切る石原氏だが、憲法を変えることで中央集権の主体とされる霞ヶ関を解体できるのかは疑問だ。

 官僚主権とも言われる現状をもたらしたのは、政治家の質が低下したことに起因している。官僚を使いこなせない政治の現状が、霞ヶ関の力を増大させたことに議論の余地はあるまい。少なくとも三角大福中(三木武夫、田中角栄、大平正芳、福田赳夫、中曽根康弘)の時代くらいまでは、政治主導によってことが運んでいたのは事実だ。
 政治の劣化が官僚をのさばらせ、中央集権の弊害を生んだとすれば、責任はむしろ国会にこそ在るのであって、憲法が悪いわけではあるまい。

 そして、今の低レベルな政治を生み出したのは、他ならぬこの国の「民度」ではなかったのか。「民度以上の政治家は持てない」という西洋の格言が間違いでなければ、問われるべきは憲法ではなく、教育や社会構造、そして民意形成に大きな影響力を持つマスコミの在り方だ。憲法を変えても、民度を上げるための取り組みがなされなければ状況は同じということになる。

 現行憲法を否定してかかる石原氏は80歳。昭和7年の生まれであるから、戦前・戦中を知る世代ということになる。戦後の復興、そして高度経済成長期を経て現在に至る過程で、憲法がこの国を戦争から遠ざけてきたことを知らぬはずはない。平和の尊さを次代に伝えていくという責任感が、この老政治家には欠けているのだろう。

 中国、韓国をはじめ、他国をことさら卑下する姿勢もいただけない。石原氏が尖閣を都で買い取ると言い出したことで、日中両国の緊張を招いたのは紛れもない事実である。国が買っても都が買っても結果は同じだったはずだが、当の石原氏は武力衝突も辞さずという考え方を変えるそぶりさえない。同じことが米国に言えるのか?
 石原氏が中国、韓国に対し強硬な姿勢を示すのは、アジア諸国を一段低く見ているからではないのだろうか。
 成長を続けるアジアの経済を前に、“国益”とやらを損なっているのは誰か?言わずとも知れた話だ。

軍国主義国家 
 こうした石原氏が注目を集め続けてきたのは、歯切れのいい物言い―つまりは言いたい放題―ができる数少ない政治家だからなのだが、政党のトップとして国政の場で同じことをやった場合、アジア諸国の対日感情は悪化する一方となるだろう。

 タカ派と呼ばれる方々の特徴ではあるが、石原氏の口から、かつての日本が他国の領土を軍靴で蹂躙し、あまたの生命・財産を奪ったことに思いを致す発言など聞いたことがない。これは従軍慰安婦以前の話のはずだ。
 敗戦ショックの反作用なのか自国の侵略行為に対する意識が薄いことが、どれほど諸外国から冷やかに見られる原因となっているか、いま一度振り返るべきだろう。

 石原氏が言うように憲法を改正したとする。さらに主張通りの方針に進めば、その先に見えているのは軍備拡大だ。新たな「戦前」の時代を作り出すことに他ならず、この国は再び“いつか来た道” を歩むことになる。石原氏の目指す日本は、まさに軍国主義国家なのである。

問われる“民度”
 理念なのか政策なのかよく分からない「維新八策」を打ち出した日本維新の会、自民党の総裁に返り咲いた安倍晋三氏、いずれの主張も「改憲」を前提としており、石原氏の方向性と同じだ。

 原発や増税を「ささいな事」と言い切る石原氏が真っ先に提唱したのが“大連合”なのだが、ラブコールを送られた橋下維新の会代表や大村愛知県知事は、この構想を支持する可能性が高い。
 安倍総裁が持論の憲法改正を実現するために、維新や石原新党などと手を組むことになれば、国際社会は日本に対する警戒感を露わにするだろう。

 はっきりとものを言う政治家は、たしかにテレビ映りがいい。しかし、この国の国民に求められているのは、それぞれの政党、政治家の主張が実現可能な道筋を示しているのか、そしてその結果どのような国の姿になるのかを見極めることだ。
 次の総選挙、まさに“民度”が問われるのである。



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