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鹿児島県 処分場工事の汚泥処理で開き直り
動かぬ証拠も無視 100億円かけて環境破壊

2012年10月25日 09:35

 間違いを認めないのはこの国の役所の陋習なのだが、鹿児島県(伊藤祐一郎知事)のそれは度を越えている。
 薩摩川内市で同県が住民の反対を黙殺して強行している産業廃棄物最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の建設工事現場において違法な汚泥処理を行っている問題をめぐり、県が開き直る姿勢を鮮明にした。
 右の写真に写っているのは、多量の水分を含んだ「汚泥」である。これをダンプに積んで搬出し、道路上に汚泥を垂れ流して走ることに、県は「何の問題もない」と明言。発生経過から見て産廃であるはずの汚泥を「産廃ではない」と強弁しており、自ら産廃行政の信頼性を崩した形だ。
 動かぬ証拠を突きつけられてもしらを切る鹿児島県。産廃の指導・監督権限を悪用して法や制度を歪める暴挙である。

動かぬ証拠
 下の写真は、同処分場工事現場で現在も行われている夜間工事のひとコマ。バキューム車(黄色の車両)で吸い上げた処分場の基底部分に溜まった汚泥混じりの水―つまり「汚水」を、建設土砂の仮置き場に放出した瞬間だ。大音響と共に、汚水や汚泥まみれの小石が勢いよく流れ出ているのが分かる。
 これまで度々報じてきたきた行為であるが、今回の取材ではより鮮明に捉えることができた。「動かぬ証拠」である。

夜間工事現場(1)

夜間工事現場(2)

 こうして放出された汚水は、当然のことながら通常の建設土砂と交じり合う。県側は、建設土砂の仮行き場直下の沈砂池に流れ落ちると主張しているが、いったん建設土砂の上に放出された汚水が直接沈砂池に向かうはずがない。

 こうして夜間工事で積み上げられた汚泥まみれの石や汚泥は、昼間堂々とダンプで搬出され、近くの採石場などに通常の建設土砂として捨てられているのである。

開き直る鹿児島県
 ― 汚泥搬出や場内の汚水処理は、これまで県が公表してきた工事手法を逸脱してはいないか、また、搬出されている汚泥は産業廃棄物ではないのか?
 今月5日に県環境林務部廃棄物・リサイクル対策課に取材し、回答を求めていたが、24日、HUNTERの再確認に対する県側の回答はおよそ次のようなものだった。

  1. 工事現場内の濁水(汚水)は、バキュームしたのち、沈砂池に向けて捨てている。直接沈砂池に放水するのは地形上危険なので(落車するという意)、土砂の仮置き場から流し込み、濁水処理することで適正に処理している。
  2. 場内の汚泥は産業廃棄物ではない。乾かした後、いったん資材置き場の土台として使用され、汚泥そのものが「資材」となっており、この時点で産廃ではなく「有価物」となっている。これが雨水などの影響を受けて流れ出てもただの汚泥に過ぎず、通常の土砂として搬出しても問題ではない。
 20日あまりも「調査」して出した回答がこの程度なのかと呆れてしまうが、いずれも予想通りの内容ではある。
 鹿児島県はこれまで、一貫して場内の汚泥を「産廃ではない」と強弁してきており、いまさら非を認めるわけにはいかない状況。開き直るしかなかったということだ。

明らかに産廃―県は否定
 昨年4月に汚泥処理の問題点を県に指摘した折、場内の汚泥を「産廃ではない」とする判断根拠を示すよう求めたところ、県側は「総合的に判断した」の一点張り。
 明確な根拠を示すよう求めたが、「資材置き場の土台に使ったから有価物」という無理な理屈を繰り返すだけだった。
 汚泥のPH(ペーハー)値を確認したのか追及したが、測定さえやっていなかったことを認めていた。

 前述の"有価物"とは、汚泥を中間処理したのち、セメント材料や路盤材などとして2次使用が可能な状態になったものを指す。つまり「売りもの」ということだが、当然、有価物と判断するには国の指針に基づくいくつもの条件を満たさなければならない。
 "有価物だから産廃ではない"とする県側の主張だが、環境破壊を招く有害物質を含有していないかどうかを確かめるためには、最低限の検査が必要なはずだ。
 酸・アルカリの性質を確かめるPH値の測定さえやっていないようでは、判断を下すことなどできるはずがない。

 建設現場にあった汚泥は、処分用地の持ち主である砕石業者「ガイアテック」が、砕石プラントを稼働させていたために生じたもの。つまり立派な産業廃棄物なのだが、県は乾燥させた後、資材置き場の土台として使用されたため、「有価物」になったと主張する。
 だが、資材置き場の土台として使われたのは一部であり、長年の事業活動によって山積みされた場内の汚泥が、すべて有価物に変身するわけがない。ガイアテックの資材置き場は、処分場予定地のほんのわずかな面積でしかないのだ。

 環境省が平成17年に全国の都道府県および政令市に対して出した廃棄物処分の判断基準を定めた「行政処分の指針について(通知)」には、次のように記されている。
《廃棄物とは、占有者が自ら利用し、又は他人に有償で譲渡することができないために不要となったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断すべき》。
《再生後に自ら利用又は有償譲渡が予定される物であっても、再生前においてそれ自体は自ら利用又は有償譲渡がされない物であるから、廃棄物として規制する必要があり、当該物の再生は廃棄物の処理として扱うこと》(環境省ホームページへリンク→)。
 ガイアテックが事業活動で生み出した「汚泥」は、明らかに「産業廃棄物」なのである。

 さらに平成23年3月に環境省が各都道府県などに出した「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について(通知)」には、汚泥の定義について次のように明記している。
《泥状の状態とは、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態をいい、この状態を土の強度を示す指標でいえば、コーン指数がおおむね200kN/㎡以下又は一軸圧縮強度がおおむね50kN/㎡以下である。
 しかし、掘削物を標準仕様ダンプトラック等に積み込んだ時には泥状を呈していない掘削物であっても、運搬中の練り返しにより泥状を呈するものもあるので、これらの掘削物は「汚泥」として取り扱う必要がある。なお、地山の掘削により生じる掘削物は土砂であり、土砂は廃棄物処理法の対象外である》(環境省ホームページへリンク→)。

 この通知を見ても、「エコパークかごしま」の建設工事現場で行われている汚泥処理が違法であることは歴然であろう。

産廃の指導・監督権限を悪用
 問題は、こうした指針を守らせるために与えられた産廃行政の指導・監督権限を「県」が有していることで、鹿児島県が「産廃汚泥ではない」と言い張れば、警察も手を出せないという現実だ。
 つまり、鹿児島県のやっていることは、犯罪者が自らの裁判で裁判長を務めているようなもので、法や制度をかえりみない暴挙なのである。

 実際の裁判では「動かぬ証拠」がものをいうが、鹿児島ではこの常識さえ通用しない。まさに無法地帯と化した同県で、100億円もの税金をかけて環境破壊が進む。



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