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むなしきトリプル選挙
原発のまち・薩摩川内市の現実

2012年10月24日 10:55

 取材で訪れている鹿児島県薩摩川内市で、数十台の選挙カーが走り回っている。同市の市長選、市議選に加え、衆議院議員の死去に伴う補欠選挙が重なったためだが、候補者の数が多い割には「投票したい候補者がいない」という現実に困惑する有権者は少なくない。原発に関する政治家の意識が変わっておらず、有力候補は皆「原発推進」なのだ。
 有権者の思いを託すことのできない選挙ほどむなしいものはないが、福島第一原発の事故を経ても、原発立地自治体の権力構造は変わっていないのである。
 原発のまち・薩摩川内市の有権者を取り巻く選挙区事情は複雑で、一部の市民にとっては憂鬱な毎日が続いている。

候補者の数は多いけど・・・
 もともと予定されていたのは、薩摩川内市長選、同市議選の二つの選挙だったが、同市を選挙区に抱える衆院鹿児島3区の松下忠洋前郵政改革・金融相が死去したため、補欠選挙が加わることになった。

 市長選に2名、市議選(定数26)には34人が立候補、さらに衆院補選に4人が立候補しており、「次から次に選挙カーがやって来るが、何がなんだか分からない」(同市50代主婦)という状況。
 しかし、一部の有権者の最大の悩みは、「投票したい候補者がいない」という市長選、衆院補選の現実なのだという。

 市長選、衆院補選ともに、原発再稼働反対を明言しているのは共産党系の候補のみ。九電・川内原子力発電所の立地自治体である同市の市民にとって、投票先を決める重要なポイントであるはずだが、有力候補の大半が「原発推進」の立場を鮮明にしているのである。

 同市在住の60代男性の話。「正直、補選も市長選も投票したいとは思わない。市長選は事実上の信任投票。補選は、当選しそうな自民党の候補者も国民新党の候補者も原発推進。共産党さんには悪いけど、心が萎えてしまう。なんで建設業者や九電の意向ばかりを優先させるのか・・・」。

 野田内閣の改造後、初の国政選挙とあって、各党の大物が次々に選挙区入り。鹿児島3区には、「○○来る!」の捨て看板が林立する状況となっており、選挙戦は白熱する一方なのだが、原発問題についての議論は一向に盛り上がらないのだという。
 共産党系を除く他の陣営は、原発再稼働を進める考えを打ち出しており、争点になっていないのだ。

有力候補は「原発推進」
 8万人以上の有権者を抱える薩摩川内市は、地場ゼネコン植村組や九電と関係の深い川北電工といった県内有力企業の影響力が強い。
 市長や市議、県議に至るまで「原発信者」ばかりとなっており、その構図は現在も続く。大型選挙で当選するのは、地方版原子力ムラの住人ばかりなのだ。

 今回のトリプル選挙でも同様で、原発について厳しい見方をする市民が増えたとはいえ、肝心の有力候補者が原発信仰を捨てられずにいるのだから始末が悪い。投票先がないという現実に落胆する市民の気持ちは十分理解できる。

 自民、民主、国民新党、いずれも議席の獲得には狂奔するが、この国の未来について真剣に考えているとは思えない。票のためなら原発礼賛も辞さない連中ばかりなのだ。
 ある意味、この国の現状をうつし出しているのが鹿児島3区の選挙戦なのである。



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