山崎拓元自民党副総裁の出馬断念にともない、候補者の公募を行なっている衆院福岡2区の自民党公認候補に、噂される地方議員以外を擁立する動きがあることが分かった。
自民党の候補者公募に応じると見られているのは福岡県出身の商社マン。新・旧の県政トップが擁立に向けて動いているとされ、事実だとすれば政党の候補者選定に他党相乗りの首長が手を突っ込んだ形だ。
「近いうち」の解散・総選挙が予想される中、山崎氏の後継をめぐる駆け引きが活発化しており、候補者公募の締め切りとされる今月末までに複数が手を挙げる可能性がある。
山崎元副総裁の出馬辞退で火がついた後継争い
衆院福岡2区は、現在も派閥の領袖である山崎元副総裁の地盤だったが、先月15日に同氏が次期総選挙への不出馬を表明、自民党として後継者を公募する方針となっていた。
福岡2区での出馬に意欲を燃やしているとされてきたのは、中央区選出の鬼木誠県議と城南区選出の阿部真之助市議。いずれも山崎氏に強く引退を迫り、山崎氏自身だけでなく周囲の不興まで買っていたとされ、関係者の間からは新たな候補者を望む声も上がっていた。
これまでの過程で、南区選出の県議や大学教授を推す話もあったが、いずれも早い段階で消滅。代わって浮上したのが取材で判明した人物である。
第3の後継候補は、修猷館高校から東大に進み、現在は商社に勤務する30代の男性。山崎氏や小川知事の高校の後輩にあたり、スポーツの世界で鍛えられた好青年だという。ただし、擁立に関わっているとされる面々に問題があった。
商社マンの候補者公募参加を画策してきたのが、麻生渡前知事と小川洋現知事のラインだと見られているのである。
背景に県政界の暗闘
背景にあるのは、昨年の知事選以来続く県政界の暗闘だ。
公募に応じることが確実視されてきた鬼木県議や名前の挙がった南区の県議は、ともに現在の自民党県議団の主流派に近いとされる。
主流派の中心は、昨年4月の県知事選挙における候補者選定で小川知事と最後までその座を争った蔵内勇夫県議団会長(元議長)だ。
麻生前知事は、かつて県議会での質疑において麻生知事(当時)に厳しい質問を行った鬼木氏や、最終的に対立した蔵内氏を敵対視しているとされ、前知事の後継指名を受けた形で現在の地位を得た小川知事は、板ばさみ状態が続いているのだという。
小川知事が就任した後、麻生前知事による院政を排除しようとした県議会側が県執行部に対し厳しい姿勢をとってきたことは事実だが、一方でこれが県政を活気付けた格好になり、県の無駄遣い削減や議会改革につながっている。馴れ合いを止め、院政排除を行った県議会の動きは正解だったということだ。
ただし、引退したはずの麻生前知事は未だに枯れていないらしく、暗闘はまだ続いているとしてある県議会関係者は次のように話す。
「麻生さんはもう一回知事をやりたかったんだ。ところが、腹心の副知事が収賄事件で逮捕されて再選戦略が狂った。出馬断念に追い込んだのは県議会側で、麻生さんは蔵内さんが主犯だと思ってる。それならとばかりに、院政を狙って通産省(現・経済産業省)の後輩(小川現知事)を後釜に据えようとしたんだが、麻生太郎や九電の松尾会長を抱きこんで相当無理な工作をやった。県議会側はそれぞれの支持基盤である学会(創価学会)や連合にまで手を回されたんだから、面白いわけがない。小川知事の就任後も何かと県に注文をつけているのはご承知の通り。だけどね、麻生さんは執念深い。どうにかして影響力を保ちたいらしく、折にふれ小川知事に指示を出していると聞いている。いつ、どこで2人(麻生、小川)が会っているかの情報も入ってくる。闘いは終わっていない」。
新・旧知事コンビに牽制の声
こうした動きの中で、麻生―小川ラインが自民党県議団主流派の力を削ぐことに力を入れたとしても不思議ではないのだが、それが福岡2区での自民候補擁立劇への関与だとすれば話は別だ。
事情を知る県政界関係者からは、早くも「新・旧の首長が自民党の候補者選定に首を突っ込むのか。議会で質問する」とこの動きを牽制する発言が出始めている。
福岡2区の候補者公募は今月末が期限。最後の最後で手を挙げさせるという商社マン擁立計画だが、話が漏れたことで流れが変わる可能性もある。