鹿児島県薩摩川内市で県が建設を進める産業廃棄物管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称)の工事が開始されて1年。
公表された工事の手順を守らず建設現場から汚水をたれ流したり、汚泥を不法に持ち出すなど違法・脱法行為が続く同工事の現場だが、この間、大量の建設残土を持ち出すためなどの目的で通過したダンプの数が計16万台を越えていることが、地元住民の粘り強い調査で分かった。
環境破壊が確実視される迷惑施設の建設段階で、既に地元の自然が冒されるという現実・・・。地元住民らからは、怒りの声が上がっている。
(写真は、昨年10月4日の処分場工事現場で地元住民を取り囲み、威圧する県庁職員ら)
違法・脱法工事が常態化
先週、同処分場工事現場において、夜間に汚泥や汚泥混じりの石を建設残土置き場に運んだ上、翌日そのまま搬出するという産業廃棄物処理法違反と思われる行為が行われていることを報じた。(下の写真左は場内の汚泥、右は夜間作業で汚水を投棄する瞬間)
本来、同処分場の工事においては、建設現場内で発生する汚水を濁水処理して放流するとされていた。しかし、現場では場内直下を流れる阿茂瀬川に直接汚水を放流するための放水口を密かに設置。大量の汚水を垂れ流してきたという事実が明らかになっていた。
鹿児島県最大の河川「川内川」につながる阿茂瀬川が、大量の汚水で白く変色する日が続いている。
法令違反が問われる事態であることは言うまでもないが、公表された作業手順がまったく守られていないことは確かなのだ。
(下の写真左が隠されていた放水口、右が濁った阿茂瀬川)
1年で16万台のダンプ
説明を求める地元住民らを力ずくで排除し、工事を開始したのが昨年の10月4日。それからは、工事現場で大量に発生する建設残土や汚泥を搬出するため、ダンプが走り回る状況が続いてきた。
現地取材の度、行き交うダンプの数の多さに圧倒されてきたが、改めてその数を示されると、建設業者のための公共工事という処分場の実相が浮かび上がる。
ある地元住民が、処分場の実態を記録するため、工事開始から毎日現場に出入りするダンプカーの台数を記録し続けてきた。この工事をめぐる県や業者の横暴ぶりを、どうにかして知ってもらいたいとの一心からだという。
地元住民らはこのほか、工事を監視するための拠点に交代で寝泊りするなど、それぞれの立場で県の横暴と対峙してきたのである。
記録場所は、一般車両が通行する県道から処分場に通じる道に入ったすぐの場所で、小さな小屋が設置されている。ここから処分場までの道筋には数件の民家が散在し、畑や田んぼも残っているが、ダンプが通れる道はこの一本しかない。
住民の記録によると、記録小屋の前を一日に通過するダンプは800~1,100台。作業休みの日曜を除き、一番少ない通過台数の日でも384台が記録されていた。
最多は1,116台を記録した今年4月23日。この前後は連日1,000台を越えるダンプが走りまわっていた。
稼働しているダンプは約60台程だというが、工事現場と残土搬出先とを1日約8回以上往復するため、通過する回数自体は数百回に上ることになる。環境にとって好ましい状況であるはずがない。
地元住民からも怒りの声
ある地元住民は、次のように話す。「これだけダンプが走り回れば、空気も汚れるし、震動も凄い。(通過車両の)数字を聞いて、改めてこの処分場工事が建設業界のためのものであることを思い知らされる。薩摩川内の市民にとって、何一ついいことはない」。
別の関係者も憤りを隠そうとしない。「鹿児島の片隅で、こんな状況が何年も続いているんです。伊藤(祐一郎)知事は住民の声を無視して、産廃処分場を作るというが、その過程で川や自然は限りなく汚されている。県民の思いややふるさとの環境は二の次にして、こんなことが許されるんでしょうか!」。
処分場の事業主体は県の外郭団体「鹿児島県環境整備公社」、施工は大成建設と地場ゼネコン植村組を中心とした「大成・植村・田島・クボタ」特定建設工事共同企業体(JV)だが、この連中の傲慢な姿勢は、無法な工事手法に顕著となって現れている。次稿で、その実態を詳しく報じる予定だ。