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川内原発支える経済団体の胡散臭さ
軽視されるフクシマの悲劇

2012年10月11日 10:05

 大飯原発(福井県)の再稼働に続いて、ストップしていた大間原発(青森県)の建設を電源開発(Jパワー)が再開した。
 2030年代に稼働原発をゼロにするという野田政権の方針とは相反するものだが、福島第一原発の事故後、原子力ムラの反転攻勢は凄まじいばかり。原発推進の自民党が政権に返り咲く可能性が取り沙汰される事態となって、その勢いが増している。
 大飯原発(福島県)再稼働に続く大間原発(青森県)の建設再開、いずれも原発反対の声を無視した現実が進行しており、なし崩し的に全国で停止中の原発が動き出す可能性が高い。
 結局、この国の政・官や電力会社はフクシマから何も学んでいないのだが、地方レベルでも公然と目先の利益を求める動きが顕在化しはじめている。
(写真は川内原子力発電所)

川内原発再稼働を要望した商工会議所の身勝手
 鹿児島県薩摩川内市の川内商工会議所は3日、九州電力川内原子力発電所1、2号機の早期再稼働を求める要望書を九電に提出した。
 運転停止が長期化したことにともない、地元経済が打撃を受けているという理由だが、周辺自治体のことにはお構いなしの姿勢は、フクシマ以前と何ら変わっていない。

川内商工会議所 要望書を提出した商工会議所自体が胡散臭い。
 同会議所の会頭は、薩摩川内市に本社を置く電気工事業「川北電工」の田中憲夫会長だ。
 年商60億円以上を誇る同社は、戦後、九電の肥大化に合わせて業容を拡大してきた。同社が鹿児島県に提出した工事経歴書によれば、平成22年2月から23年2月までの1年間で68件・約21億5,000万円もの工事を九電から受注している。
 九電なしでは存続すら危うくなる企業なのだ。

川北電工 計画が頓挫した川内原発3号機だが、増設を決めるまでの過程で重要な役割を果たしたのが、薩摩川内市や鹿児島県に対する3号機増設の「賛成陳情」だった。
 その中核を担ったのは川内商工会議所であり、「川内原子力発電所3号機建設促進期成会」の会長も兼任していた田中憲夫・川北電工会長が重要な役回りを果たしたことは言うまでもない。
 川内商工会議所が九電に要望したのは、原発の早期再稼働と九電発注工事の地元優先だったが、薩摩川内市の事業所の中で一番これを望んでいたのは他ならぬ川北電工だったのではないだろうか。

商工会議所アンケートへの疑問
 田中会頭は、原発停止による地元経済への打撃を早期再稼働の理由として挙げているが、拠りどころとなったのは市や川内商工会議所が今年夏におこなった地元事業者へのアンケート調査だったと見られる。
 ところが、同会議所がホームページ上で公表しているアンケート調査の結果を見ると、影響を受けているのが特定の事業所だけであることがわかる。

 商工会議所が行ったアンケートの対象は1,396事業所とされているが、回答したのは403事業所。対象全体の28.9%に過ぎない。
 回答した3割弱の事業所のうち「影響があった」と回答したのは51.9%、「影響がなかった」と回答した事業所の数は46.9%となっており、数字は拮抗している。

 業種別では、ホテル・旅館業が100%、飲食業では87.5%の事業所で「影響があった」と回答する一方、建設業の52.1%、製造業では80%が「影響はなかった」と答えている。

 原発に関連する仕事に就いている人たちの訪問が、薩摩川内市の宿泊業や飲食業を支えていることは明らかだ。定期点検中などは、多くの作業員で同市内のホテルが満杯になってしまい、当日の予約など難しくなるのが通例だった。現在、同市内にあるホテルが満室になることは少なく、そうした意味で打撃を受けているのは事実だろう。
 しかし、再び「原発」に頼る姿勢に、多くの国民の共感を得ることができるのだろうか?

 矛盾しているのは、《あなたの事業所の経営改善も含め、地域経済が活性化するために、今後、必要なことは何だと思いますか。(最大3つまで)》としたアンケート質問に対する回答結果だ。
 回答した事業所全体では「原発の再稼動」を挙げたものが最も多く、次いで「流入人口の増加」、「公共工事の増」となっている。
 しかし、フクシマ以降、原発近くの職場や学校を選ぶ人が増えるとは思えず、川内商工会議所のアンケート結果である「原発の再稼動」と「流入人口の増加」には整合性がなくなっている。もはや原発のあるまちで、原発関係者以外の流入人口が増えることは考えにくい状況なのだ。
 真剣に人口増を望むというのなら、原発以外の振興策を模索するべきである。。

 最大の問題は、短絡的に原発再稼働を訴える商工会議所などの経済団体に対し、多くの国民が嫌悪感を抱いていることを意識していない点だ。
 川内商工会議所の九電への要望は、一部業者の目先の利益追求であって、周辺自治体の住民はもちろん、自らの地域社会の次代に対する配慮など皆無。立地自治体(しかも一部)だけ潤えば良いという考え方に立脚しており、これでは原発関係者以外の訪問を遠ざけてしまう。
川内原発の現況 犠牲を払って電力の供給地になっているという思いあがりは、反発しか招かないということに気付くべきである。

 右の写真は現在の川内原発の現況である。海岸線には防潮堤など津波に対する備えさえない。見ての通り、誰でも入れる状態はテロ対策の不備も雄弁に物語っている。
 この原発で事故が起きた場合、九電や川内商工会議所に責任を取ることができるのだろうか?

軽視されるフクシマの悲劇
 大飯原発の再稼働を求めた福井県おおい町、大間原発の建設再開を認めた青森県大間町、いずれも地元自治体は原発推進の意向を示してきた。
 建設が難しくなったと言われる上関原発の地元、山口県上関町でも原発建設を願う町民は存在する。
 原発からより遠いところに居を移す東北や原発立地自治体の住民が増えた一方で、いまだに原発信仰を捨てぬ人々が多いのも現実である。
 フクシマの悲劇は、軽視されているとしか思えない。

 財界や読売、産経といった原発推進勢力の声が大きくなっている中、国民に求められているのはフクシマで起きていることを見つめ直すことだ。
 目先の利益に目がくらみ、後世に禍根を残すことが許されるとは思えないが・・・。



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