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鹿児島・産廃処分場工事で廃棄法違反の疑い
汚水・汚泥ばら撒き 建設残土に偽装

2012年10月10日 10:20

 鹿児島県薩摩川内市で、県が建設を強行している産業廃棄物の管理型最終処分場「エコパークかごしま」(仮称・事業主体は鹿児島県環境整備公社)の工事現場で、汚泥処理をめぐって産業廃棄物処理法に抵触すると見られる行為が行われていた実態を、HUNTERの取材班が捉えた。

 先月28日から今月4日にかけての取材では、業者が夜間工事において汚泥や汚泥混じりの石を建設残土置き場に運んだ上、翌日そのまま搬出する状況を確認。さらに、汲み上げた濁った汚水も残土置き場に捨て、通常の建設残土と混ぜ偽装するなどの悪質な手口も目撃し、一連の行為の全貌を画像に残していた。

 法令違反以前に、公表された作業手順がまったく守られていないことは確か。環境破壊を懸念してきた地元住民らの声が、間違っていないことを証明した形だ。

夜中の工事で何が?
 同処分場工事現場では、雨水や大量の湧水の影響で工事が停滞、先月までは工程の18%程度しか進捗していなかった。
 建設工事を請負っているのは、大成建設と 地場ゼネコン「植村組」を中心とするJV(特定建設工事共同企業体)。
 現場では先月20日過ぎから処分場の基底部分の平坦化作業が進められていたが、溜まった石や汚泥の処理のため、午前4時頃まで夜間工事を行なっていた(下の写真)。

午前4時頃まで夜間工事を…

 夜間工事の開始直後、現場内の一角ではライトも点けずに作業をしていたため、これに気付いた地元住民らが注意するなど、業者の不可解な行動が目立っていた。

産廃汚泥を堂々と搬出
産廃汚泥を堂々と搬出1 現場で確認すると、夜陰にまぎれて行われた行為とそれに続く昼間の工事は、処分場工事に関わるすべての業者や県環境整備公社が承知していなければできないものであることが分かる。

 その手口はこうだ。
 まず、夜間工事で汚泥が付着した石や汚泥そのものを、いったんトラックに積み込み、処分場端にある残土置き場に直行して投棄。
 次いで昼間の作業で、こうした汚泥や石を通常の建設残土と混ぜて偽装し、県内にある別の建設残土捨て場に搬出していたのである。
 夜間工事開始から数日は、汚泥混じりの石をそのままトラックに積載し、泥水を垂れ流しながら公道を走るという悪質な行為も確認されている(下の写真参照)。

汚泥や石を通常の建設残土と混ぜて偽装 → 泥水を垂れ流しながら公道を走るトラック

どう見ても産廃汚泥
 この場合、問題の汚泥を建設現場から出る「産業廃棄物」と見るかどうかであるが、処分場内には、土地の所有者である砕石業者「ガイアテック」が事業活動に伴って生み出した「汚泥」が山積みされている。

 これまで県は、場内の汚泥について、山積みにして乾燥したあと資材置き場の土壌として使用されていたから、この時点で産廃ではなくなった。もとは産廃汚泥であっても、いったん処理され"有価物"になっていると強弁してきた。
 しかし、下の写真でも明らかな通り、山積みされた汚泥は、雨水や湧水のために崩れて流れ出していたのである。県の言う有価物とは程遠いものである上、汚泥を固化するために「石灰」を大量に混ぜており、明らかに“産業廃棄物である汚泥”が堆積する事態となっていた。

DSC00225-thumb-270x152-4647.jpg

有価物:ここで言う"有価物"とは、汚泥を中間処理したのち、セメント材料や路盤材などとして2次使用が可能な状態になったものを指す。つまり「売りもの」ということだが、有価物と判断するにはいくつもの条件を満たさなければならず、 "有価物だから産廃ではない"とする県側の主張にはもともと無理がある。〕

汚水投棄の瞬間
 この夜間工事で記者がもっとも注目したのは、前掲の夜間工事写真にある黄色い車両のうち、バキューム車の方である。このバキューム車は、溜まった汚泥混じりの濁水を吸い上げる作業を行っている。
 公表された作業手順に従えば、汚水を処分場内の所定の場所に捨て、濁水処理を施したあと、きれいになった水だけを放流する“はず”だった。
 しかし、夜間工事で稼働しているバキューム車はまったく違う動きを見せる。 

 4日午後9時40分、記者は場内の基底部から建設残土が積み上げられた場所に登るバキューム車を確認。同50分には水と石が大きな音とともに投棄される場面をしっかりと撮影していた。下がその瞬間の写真である。

バキューム車

 現場にある3台のバキューム車は、連日、現場周辺が暗くなりはじめた午後7時以降に動き出し、午前3時から4時頃に汚水を排出するという行為を繰り返していた。
 離れた場所から取材していた記者は、汚水排出の場面を捉えることができなかったのだが、4日は1台のバキューム車が早い時間に写真の行為を行ない、処分場工事現場のフェンス脇にいた記者が画像に収めていた。

 夜間工事で汚泥混じりの汚水を通常の建設残土と一体化させ、昼間、乾燥状態になった部分から搬出しているものと見られる。
 本来、産廃として扱わなければならないものを通常の建設残土に偽装して搬出することは、産業廃棄物処理法に抵触する可能性がある。

傲慢な公社職員―「ここには汚泥はない」 
 早い段階で夜間工事と汚泥の不法投棄の実態を掴んでいた記者は、4日になって現場を訪れた県環境整備公社の職員に話を聞いた。
 応対したのは同公社の建設課長・福永氏である。県から出向している福永課長は歴とした公務員なのだが、役人特有の傲慢な姿勢に終始した。

 処分場工事現場は、危険であるとして地元住民はもとより取材の記者も立ち入りを禁じられている。しかし、取材で話を聞くためには、工事現場のはずれにある事務所棟に向かうしかない。
 この日は、たまたま道路に面した事務所棟入り口で福永課長と出会ったため、道路から敷地内に入ってもいいか聞いてみた。だが、開口一番「お断りします」とにべもない。
 税金で取得された土地であるにもかかわらず、わずか数歩中に入ることにさえ過剰に反応する始末。まるでガキのケンカである。
 やむなく入り口の外から話を聞くことになったが、やり取りはおおよそ次のようなものだった。

 記者:このところ夜間工事が続いているが、工期の遅れが原因か?
 福永:梅雨で水が溜まったからですね。

 記者:汚泥が付着した岩や石を不法投棄していないか?
 福永:岩ですか?

 記者:岩や石、汚泥が付着したものだ。
 福永:そういうことはやっていませんね。

 記者:場内の底のところで濁水を吸い上げているが?
 福永:バキュームですね。

 記者:バキュームした濁水や汚泥混じりの石を、あそこ(残土捨て場を指す)に捨てているが?
 福永:ここには汚泥はないですよ。あれが汚泥に見えますか?

 記者:近くに行かなければ分からない。だが、汚泥ではないか。
 福永:汚泥とは産業廃棄物処理法でいう汚泥のことですか?

 記者:そうだ。あなたは産廃汚泥はないと言うが、大量の石灰を混ぜた汚泥が雨水や湧水で流れ出したものは立派な産廃ではないか。国の通知では水分を含んでそのままトラックに積載できない状態、足で踏んで歩けない状態を汚泥だとしている。そのまま捨てれば廃棄法違反ではないか?
 福永:そのまま捨ててるかどうかは把握していませんね。調べてお返事することになる。

 ちなみに、平成23年3月に環境省が各都道府県などに出した「建設工事から生ずる廃棄物の適正処理について(通知)」には、汚泥の定義について次のように明記している。
《泥状の状態とは、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態をいい、この状態を土の強度を示す指標でいえば、コーン指数がおおむね200kN/㎡以下又は一軸圧縮強度がおおむね50kN/㎡以下である。
 しかし、掘削物を標準仕様ダンプトラック等に積み込んだ時には泥状を呈していない掘削物であっても、運搬中の練り返しにより泥状を呈するものもあるので、これらの掘削物は「汚泥」として取り扱う必要がある。なお、地山の掘削により生じる掘削物は土砂であり、土砂は廃棄物処理法の対象外である》。

 問題の汚泥はシルト状であり、積載されたトラックから流れ落ちる状態。さらに、処分場の基底部に溜まった汚泥は、もともと山積みされていた汚泥が崩れて堆積したものであり、掘削によって生じたわけではない。工事現場の汚泥が産廃であることはこの通知から見ても明らかだ。

 敷地内へ足を踏み入れることを拒否したうえ、あくまでもとぼける構えの福永課長。やむなく事業を所管する県環境林務部 廃棄物・リサイクル対策課に見解を求めることになった。

県へ取材で現場一変
 5日、取材に対応した同課の職員は、事情を聞いた後、現地に確認し回答するとしていたが、県庁を訪ねた効果はすぐに現われた。
 翌日夜の工事現場、煌々とライトに照らし出された中で、バキューム車に汲み上げられた汚水を、これみよがしに所定の場所へと捨て始めたのである。
 県への取材で現場写真などを提示した後だけに、違法が疑われる行為は止めざるを得なかったのだろう。

 県廃棄物・リサイクル対策課は10日、現地に確認したところ違法な行為は行っていないとの報告があったとしながら、現在も事実関係を確認中であることと、問題の汚泥についての法的な解釈を行っていることを明かしている。
 いずれにしろ、定められた手順を無視して、汚水を建設残土に混ぜたり、汚泥まみれの石などを搬出したのは事実だ。
 工事業者や事実関係を否定した公社側に、地元住民に対する説明責任があるのは言うまでもない。



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