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落日の永田町
民主代表選 投票率3割の裏
~民主・自民 党首選の実態~

2012年9月27日 09:50

国会議事堂 民主、自民の党首選が終わり、2大政党の“選挙の顔”が決まった。26日に行われた自民党総裁選では、地方票で石破茂前政調会長が安倍晋三元首相を2倍近く引き離して圧勝しながら、決選投票で安倍氏が逆転。国会議員が、民意により近い地方党員の声をつぶした格好となった。

 永田町と国民の乖離を示す結果としか言いようがないが、先に行われた民主党代表選はさらに酷く、党員の投票権さえ十分に担保されていなかったことが明らかとなった。

7割近くが死んだ「党員・サポーター票」
 右の文書は、民主党代表選挙の開票結果だ。注視したのは野田佳彦首相再選の流れを作った党員・サポーター票の動きである。

gennpatu 1864410752.jpg 同党代表戦における有権者数(党員・サポーター数)は326,974人。このうち投票したのは110,250人で、無効票(3,175票)を除く有効投票数は107,075となっている。つまり、投票したのは党員・サポーター34%程度に過ぎなかったことになる。有効投票数はさらに下がって32.7%だ。7割近くの党員・サポーター票は、死んだ形となっていたのである。

 代表選告示直前に、期待を集めた細野豪志環境省が出馬を見送った上、立候補者の顔ぶれが地味だったこともマイナスに作用したのだろうが、事実上の総理大臣選びとなる与党の代表選としてはあまりに低すぎる投票率ではないか。
 もう一度代表選の流れを整理しながら取材を進めたところ、民主党執行部の党員・サポーターを軽視した姿勢が浮き彫りとなった。

投票できない無理な日程
 民主党代表選の告示は9月の10日である。同党関係者によれば、党員・サポーターに向けて投票用紙の発送作業が行なわれたのが11日から12日にかけてのことだったという。郵便物の到着は、早いところで12日、遅いところでは15日という例もあったとされる。
 カレンダーを確認すると、15日は土曜日。日曜をはさみ17日が敬老の日であることから、ほぼ3連休の形となっていた。

 一方、下は民主代表選の投票用紙だが、民主党本部に返送する投票用紙は「18日(火)必着」とある。翌日以降の到着分は棄権扱いするとも記されているが、郵便切手は貼るなとある。
 大都市は別として、地方の郵便事情を考えると、14日か遅くとも15日には投函しなければ1票が生かされない。

民主党代表選挙 投票用紙

 地方の党員・サポーターに投票用紙が届けられたのが14日前後だったとしたら、考える暇もなく返送しなければならなかったことになる。民主党執行部は、代表選に立候補した面々の主張をじっくりと確認する時間を与えていなかったのである。

民主党 実際、地方の党員・サポーターの中からは次のような怒りの声が聞かれる。
「(党本部は)地方の党員をバカにしている。投票用紙が送られてきたと思ったら、18日必着となっていた。他には何も来ない。3連休を挟んで間に合うはずがない。民主党は、下々の声を聞く姿勢を失っている。選挙前から野田再選の報道ばかりで、投票する意欲さえ湧かなかった。どうせ、自分の立場を良くするために党員やサポーターを集めただけ。本当に党員のことを重視するのなら、判断材料と考える時間をきちんと提示すべきだろう。もう民主党は終わっている」(60代党員・会社経営者)。

「投票するなといわんばかりの仕打ちですよね。連休直前に投票用紙が送られてきたけど、旅行に行くので週明けに返送しようと思っていた。だって選挙は21日だったじゃないですか。20日までに着けばいいと思ってました。よく読まなかった私も悪いけど、あまりに勝手な日程の設定でしょう。地方のサポーターのこととか、まるで考えてない証拠ですよ。次(の選挙)は絶対民主党には投票しない」(40代サポーター・主婦)。

 代表選に立候補したある陣営の議員秘書はこう語る。「意図的に野田さん有利の選挙日程を組んだとしか思えない。党員・サポーター向けには投票用紙を送っただけで、あとは知らん顔だった。各候補の主張を広く知らせ、代表選を盛り上げる努力さえしていない。当初、首相は現職であることを盾に民放番組への出演を拒否。割を食ったのは他の候補者で、公平性を欠くということで討論番組に呼ばれる機会が極端に減った。おかげで少数野党の党首選並みの扱いだった。盛り上がったのは自民党総裁選だけ。民主党はもうだめだ」。

国民軽視の永田町
自民党 結果的に見れば、民主党も自民党も地方の声を無視したことに変わりはない。しょせん消費増税という国民いじめには大賛成の両党なのである。原発にしても、「再稼働容認」であることは一致している。

 違っているのは、自民が選んだ安倍氏が危険過ぎるほど右に傾いた思想の持ち主である点くらいだろう。
 自民党総裁選が行われた26日、同党本部の前では“安倍氏を首相に”と書いたプラカードを持った数十人の集団が大声を張り上げていた。対外関係における強硬姿勢を期待する集団であることは間違いなさそうだったが、ぞっとしたというのが正直なところである。過度の右傾化はこの国の未来を誤らせるからで、そのことは昭和の歴史が証明している。
 国益だの憲法改正だのと勇ましいことを言う安倍氏が、じつは国民の安全など考えていないことを忘れてはならない。

 既成政党の国民軽視の結果が、現在の政治不信である。しかし、2大政党の代表選の在り方を見る限り、反省も学習もなされていないことは明白だ。
 両党の党首選で賑わった永田町だったが、この国の落日を象徴する1か月だった。



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