民主、自民の党首選挙が終盤を迎える中、事実上国のリーダーを選ぶことになる与党・民主党の代表選がすっかり霞んでしまった。連日、テレビや新聞で報じられるのは自民党の総裁選ばかり、これに比べて民主党代表選の扱いはまるで少数野党並みだ。
支持率低下にあえぐ同党だが、代表選を盛り上げようという意気込みも感じられない。代表選をめぐって、国民はもとより、同党を支える党員、サポーターまでないがしろにする姿勢には、身内からも厳しい批判が上がっている。
国民不在の代表選
民主党の代表選は、野田佳彦という現職首相が立候補しているため、候補者全員が顔をそろえる機会が少なく、この他テレビ出演や街頭演説が抑制されたという事情がある。尖閣をめぐって日中間の緊張が増すという事態が重なったことも事実だ。
しかし、その点を割り引いても、民主党執行部に今回の代表選を国民に向けてアピールしようという強い意志が欠けていることは明らかだ。
同党代表選に立候補したのは、野田首相、原口一博元総務相、赤松広隆元農水相、鹿野道彦前農水相の4人だ。しかし、注目された細野豪志環境相が立候補を断念した時点で、代表選挙そのものが終わっていた観は否めず、早々に野田首相の再選を見通す報道が続いてきた。
さらに、立場の差こそあれ、それぞれの候補者の訴えに大きな違いがあるとは思えず、論戦も低調というしかない。
党員・サポーターと議員だけに選択権がある以上、一般の有権者には関係のない話だと思っているのか、内向きの手法ばかりが目立つ代表選となっている。
17日、福岡市で行われた立会演説会は、街頭ではなく、市内のホテルでの開催。会場を埋めたのは所属議員が動員した関係者ばかりで、一般市民は少なかった。
街頭でのパフォーマンスを繰り返す自民党と大きく違う対応で、民主党がいかに内向きになっているのかを示す証左でもあるが、論戦自体も低調で、期待した人にとっては消化不良の内容となった。
演説会にあたり県内の党員らから募ったという質問は次の3項目だった。
消化試合
そもそも17日の立会演説会そのものが党員やサポーターをバカにしたものだった。
下は同党代表選の投票用紙だが、18日(火)必着で送り返さなければ棄権扱いにすると明記されている。
返送先の住所は東京であるため、17日に福岡県内のポストに投票用紙を入れても、翌日に着く可能性は皆無なのだ。まさに消化試合である。
こうした代表選運営の在り方に、同党の党員、サポーターからは厳しい批判が上がる。
「ふざけているとしか思えない。立会演説会は、投票をするための判断材料を示すために各候補の生の声を聞かせる機会だろう。先に投票を済ませてから候補者の意見を聞きに行くバカな有権者がいるものかね。党を支える党員やサポーターをないがしろにしている証拠だ。単なるパフォーマンスなら街頭でやるべきで、高いカネを払ってホテルの会場を使う必要もない。税金の無駄遣いをなくすと言ってきた政党の姿とはかけ離れた姿勢だ。もう党員も辞める」(福岡市在住。50代男性)。
「テーマの決め方に疑問があります。尖閣問題に触れないのは自民党と対照的ですね。逃げてるとしか思えない。増税についての考え方や原発についても、もっと突っ込んだ議論を期待していたが、それもない。政権を取った当時の勢いはなく、ひたすら言い訳や細かな(政策の)違いを強調してるだけですよね。民主党を再生させるだけの意気込みは感じられなかった。これなら国民の生活が第一の方が分かりやすい」(福岡在住。40代主婦)。
国民の声を無視して原発再稼働、そして消費増税を進めてきた民主党。支えてくれる党員からも愛想尽かしされる始末では、総選挙に向けた態勢など整えることはできまい。