民主党という政党は、どこまでも有権者をバカにした集団らしい。
マニフェストを反故にした上、やらないと言った増税に道筋をつけ、福島第一原発の事故究明も終わらぬうちに原発再稼働を認めた同党。
理屈は後からついて来るとでも思っているのだろうが、有権者無視の暴走は地方組織でも同じのようだ。
総選挙を控え、空白区となった選挙区の候補者選定を進めていた同党福岡県連が、政治資金で遊び狂い、法令を無視する参院議員を鞍替えさせようと動き出した。
有権者不在の候補者選定には呆れるばかりだが、同党県連に所属する政治家たちの思惑も透けて見える。
強制的な鞍替え勧告
今月８日、常任幹事会を開いた民主党福岡県連は、消費増税法案に反対し離党した古賀敬章衆院議員（国民の生活が第一。当選２回）に替わる候補者として、衆院福岡４区に岩本司農水副大臣を擁立する方針を決め、出馬要請を行った。
古賀氏への刺客として白羽の矢を立てられた岩本氏は固辞する構えだが、県連所属の国会議員や地方議員たちは、ほとんど全員が岩本氏の鞍替えに大賛成なのだという。
岩本氏に対し、４区への鞍替え出馬を求める意見は、前回の常任幹事会でも上がっていたが、嫌がる岩本氏を擁護する意見は皆無だったという。そればかりか岩本氏の政治活動と私生活を混同した振る舞いに厳しい批判が出るなど、外堀が埋められた状況だ。
来年夏に改選を迎える岩本氏にとって、県連所属の各級議員の支援は不可欠。その議員たちが揃って同氏の福岡４区への鞍替えを主張するということは、岩本氏に対する事実上の不信任を意味しているのだ。
しかも、岩本氏が福岡４区で当選する確立は限りなく「ゼロ」に近い。現職の古賀氏が一定の票を集めるのは確実で、自民党も新人を擁立し必勝体制。岩本氏が付け入る隙などない選挙区なのである。
民主県連は、こうした情勢を承知の上で体よく岩本氏を４区に押し付けようというのである。これほど有権者をバカにした話はあるまい。
岩本氏の悪行
岩本氏の政治資金処理をめぐっては、自身の資金管理団体「岩本つかさ後援会」を使って政治資金パーティーで集めたカネを、牛丼やちゃんぽんといった自身の食事代や妻の給料といった生活費のほか、頻繁な沖縄旅行、さらにはキャバクラをはじめとする夜の遊興費にも充てていたことが分かっている。
さらに、岩本氏が代表を務める「民主党福岡県参議院選挙区第一総支部」が、政治資金規正法で義務付けられた支出を証明する書類の保存を怠り、福岡県選挙管理委員会から指導を受けながら１か月以上もこれを放置。違法な状態は現在も続いている。立派な政治資金規正法違反であり、会計責任者が処罰されてもおかしくない状況なのだ。
県連幹部は、こうした事実を把握したうえで福岡４区の候補者として岩本氏を推すというのである。有権者をなめ切った同党の姿勢を如実に示したケースといえよう。
背景
県連所属議員たちがこぞって岩本氏の鞍替えを進める構図の背景には、岩本氏を見放した松本龍元環境相の動向がある。
同党福岡県連の大物と言えば、松本氏を置いて他にはいない。民主党結党時から県連を支え、組織を育ててきた松本氏の意向は、県連所属の議員たちがもっとも気にかけるところ。ところが岩本氏が、その松本氏と不仲になったため、岩本氏に遠慮する必要がなくなったのだという。
もうひとつ見逃せないのは、予定される総選挙で落選が相次ぐことが予想される衆院議員たちの思惑だ。
衆院の解散時期は不透明になっているが、来年夏の衆・参ダブル選挙になることはないとされる。先行する衆院選で落選しても、岩本氏がいなくなれば参院に空席ができ、転身への道がひらけるという寸法だ。政治家はどこまでも利己主義である。
岩本氏の鞍替えを画策したのは、県連幹事長を務める自治労出身の県議だというが、かかる手法は福岡４区の有権者を愚弄するだけのものだ。
ばら撒かれた岩本氏の名刺―公選法に抵触か？
今月に入って、「岩本氏の名刺が郵便ポストに投げ込まれていたが、法律的に問題ではないのか」といった問い合わせメールが複数寄せられた。
調べてみると福岡市内はもちろん、周辺都市でも名刺がばら撒かれている。冒頭の名刺はそのうちの１枚であるが、どう見ても政治活動用のビラのたぐいではない。
公職選挙法は選挙区内での売名行為を禁じており、岩本氏の名刺頒布がこれにあたるとする見方もある。鞍替え要請を尻目に、参院選対策を始めたということのようだが、これまで報じてきた通り、岩本氏には政治家としての資格自体がない。
政治倫理や法を無視する政治家を、組織の都合で鞍替えさせようという民主党福岡県連・・・。
選挙前から勝敗の行方が見えているようだが、有権者を愚弄する身勝手な民主福岡県連に未来はないということを明言しておきたい。
