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九州7県・県庁記者クラブの実態
「記者クラブ」検証 -3-

2012年8月17日 09:35

 九州7県の県庁記者クラブに行ったアンケート形式の質問取材によって、それぞれの記者クラブに関する問題点が明らかとなった。
 誠実な対応を見せる記者クラブがある一方、問われたことに対するまともな回答さえ出そうとしない低レベルの組織もある。
 とりわけ、長崎、佐賀、鹿児島の県庁にたむろする記者たちには、報道に携わる人間としての矜持のかけらさえないことが分かった。
 「日本新聞協会」が公表した記者クラブや会見に関する「見解」と大きくかけ離れた実態に、大手メディアの傲慢さが浮かび上がる。

各記者クラブからの回答
 各記者クラブから寄せられた回答を紹介するにあたって、九州7県の県庁記者クラブに対するHUNTERの質問を再掲しておきたい。

  1. 記者会見の主催は記者クラブ、県のいずれでしょうか?
  2. フリーランスの記者をはじめ、貴記者クラブ所属ではないメディアの記者の会見参加を認めておられますか?認めている場合と認めていない場合、それぞれの理由も合わせてご回答下さい。
  3. 記者クラブ所属以外の記者が会見に参加する場合、質問することも可能ですか?質問ができない場合はその理由をご回答下さい。
  4. 貴記者クラブの運営に、どの程度の金額の公費が費消されているかご存知でしょう?ご存知でしたらお教え下さい。
   以下、回答は原文のままである。

大分県政記者クラブ
回答1
会見によって異なります。定例知事会見は、大分県政記者クラブの主催で実施されていますが、臨時知事会見は県の主催です。また、記者室での会見は、基本会見する側の主催です。
回答2
定例知事会見は、大分県政記者クラブ主催で行われていて、加盟社以外の出席は、認められません。
ただし、県のホームページで動画や内容は公開されています。その他の会見については、現在も所属していない社も出席しています。
回答3
大分県政記者クラブが主催する定例知事会見以外は、加盟社以外の人物(記者に限らず)が参加するケースもあり、質問も行なっています。
回答4
記者クラブの運営に関しては、加盟社が負担するクラブ費で運営されています。また、記者室の使用に関しては、電気代等が公費負担となっていますが、算定はできていません。ただし、この記者室の設置については、公的機関にかかわる情報を迅速・的確に報道するためのワーキングルームとして、行政上の責務と考えています。また、この記者室での会見に関しては、基本会見する側の主催であり、その参加は、クラブ加盟社に限定していません。

宮崎県政記者クラブ】(注・回答は、加盟社の記者が集まる機会の見通しが当面たたないということで、幹事社判断によるもの)
1、記者クラブ主催です。
2、加盟社以外も参加できます。参加申込を受けてクラブの総意を確認しますが、過去3年間で断ったことはありません。
3、質問も可能です(加盟社の質問後)
4、事務担当の臨時職員1人、電気料金、一斉送信用ファックスの料金です。大まかな金額は記憶しておりますが、正確かどうか確認していないのでお答えできません。

福岡県政記者会
1、基本的に記者会見は県政記者会が主催しています。
2、県政記者会主催の会見に、県政記者会所属でないメディアの記者が参加を求めた場合について定めた規定は、記者会規約にはありません。参加希望の具体的事例があった場合、その都度、県政記者会加盟各社で協議するなどして、状況に応じて柔軟に対応しています。
3、2の回答と同じです。
4、記者クラブ(記者室)の利用に付随してかかる費用については報道機関側が応分の負担をし、自主的に運営していますが、公費については応える立場にありません。

熊本県政記者会
①基本的に記者クラブ(記者会)が主催だが、知事会見については県との共催。
②幹事社が認めれば、会見の参加を認めている。
③幹事社が認めれば、質問は可能。
④記者クラブの運営にかかる費用については、加盟各社が応分の負担をして自主的な運営をしているが、公費については答える立場にない。

佐賀県政記者クラブ
1.定例記者会見は記者クラブと佐賀県の共催となっています。
2~4については、日本新聞協会の見解に沿って運営しています。

長崎県政記者クラブ
当記者クラブは、「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定)に準じて運営を行っております。

鹿児島県庁記者クラブ】 
当記者クラブ(青潮会)は「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定)に準じて運営を行っております。 

 回答のうち、知事定例会見に対する各記者クラブの対応と、クラブ運営にかかる公費についての認識をまとめたのが下の表である。

各県庁記者クラブの回答(知事定例会見への対応)

知事会見の在り方―「共催」への疑問
 日本新聞協会が公表している「日本新聞協会編集委員会の見解」(2002年1月17日、2006年3月9日一部改定。以下『見解』)では、会見の主催について次のように述べている。
《97年見解は公的機関の記者クラブがかかわる記者会見について「原則としてクラブ側が主催する」とした。新見解はネット社会到来という時代状況を踏まえ公的機関が主催する記者会見を一律に否定しないことにした。しかし、公的機関による恣意(しい)的な運用を防ぐ意味から、記者会見を記者クラブが主催することの重要性を強調した。》。
 しかし、佐賀、熊本の県庁記者クラブでは知事会見を県とクラブが共催しており、「見解」の趣旨が軽んじられている状況だ。
 佐賀では共催の弊害が顕在化している。やらせメール事件における古川康佐賀県知事の会見をめぐって、佐賀県庁がこの「共催」を盾に記者クラブ非加盟者の知事会見参加を拒否していたのである。
 「見解」が危惧した《公的機関による恣意(しい)的な運用》が現実となった形で、会見を共催することの危険性を浮き彫りにしている。
 記者クラブが公権力の監視という役割を担うのなら、知事会見の主催はあくまでも記者クラブでなければならない。多様なメディアの会見参加機会を増やすためにも、県に会見を主催させることには反対である。

求められる会見参加への基準
 大分県政記者クラブの誠実な対応とありのままを率直に回答する姿勢は、評価に値するものだった。
 しかし、《定例知事会見は、大分県政記者クラブ主催で行われていて、加盟社以外の出席は、認められません》とする現状については、残念というしかない。

 一方、宮崎県政記者クラブの回答が事実なら、同クラブの開放度は九州一ということになる。
 前知事が東国原英夫氏で、在任中に全国の耳目を集めたことも影響しているのだろうが、記者クラブ非加盟でも会見への参加や質問を認めてきたという点は大いに評価すべきであろう。

 福岡、熊本の場合は微妙だ。
 福岡の回答にあるような《県政記者会所属でないメディアの記者が参加を求めた場合について定めた規定は、記者会規約にはありません》といった状態では、クラブ側のその時々の恣意的判断で会見に入れる、入れないが決められることになってしまう。
 熊本も同様で、幹事社の裁量で記者クラブ非加盟者の会見への参加や質問を認めるとしており、一見開放的なようだが、判断基準は示されておらず、どのようなメディア(もしくは個人)なら会見への参加が認められるのか分からない。

 じつは数年前、福岡市役所での記者会見に参加していた地元ネットメディアが、福岡県政記者クラブに知事会見への出席を拒絶されるという出来事があった。
 参加を拒否された理由を尋ねても回答はなかったとされ、問題視したネットメディアが記者クラブへの反論記事の掲載。さらに在京メディアまで記者クラブ側を批判するという騒ぎになっていた。
 現在はネットメディアの会見参加が黙認されているらしいが、クラブの構成員によって対応が違うということには疑問を覚える。

 県庁ごとに記者クラブの歴史があるのだろうが、記者クラブ非加盟者が会見参加を申し込んだ場合の判断基準を設けるべきだろう。

会見での質問権―オブザーバー参加には与えず 
 記者クラブ非加盟者が運良く会見に参加しても、質問を認めないというケースが少なくない。今回の取材対象ではないが、福岡市役所における市長会見では、現在もネットメディアをオブザーバー参加にとどめており、会見中の質問は許されていない。
 後述するが、鹿児島県庁記者クラブでは、オブザーバー参加を認めたフリーランスの記者が質問することを頑なに拒否している。
 各記者クラブの回答では、そのあたりを曖昧にして表面化するのを避けたとしか思えないものがあるのは事実だ。
 会見に参加させる以上、質問を許すのが「見解」の趣旨に沿った運営ではないのだろうか。

公費支出への意識は希薄
 どの回答にも、記者クラブ運営にかかる公費の金額が明記されていなかった。
 唯一、宮崎県庁記者クラブの幹事社の記者だけが、大雑把ながら実態を把握しているようで、意識の高さがうかがえた。
 しかし、福岡、熊本の県庁記者クラブの回答は《公費については応える立場にありません》。当の記者クラブ以外に誰が答える立場なのか分からないが、公費支出の在り方を厳しく追及する記者たちの言とは思えない。
 記者室が公的な存在である以上、自分たちの活動にどれほどの税金を費やしているかに思いを至らせるのは当然だろう。

「記者室」について一言
 ところで、大分県庁記者クラブの回答の中で触れられた「記者室」についてだが、これは度々紹介してきた、「見解」に沿った考え方である。

 「見解」は、記者室について次のように述べている。
《記者室は、報道機関と公的機関それぞれの責務である「国民の知る権利に応える」ために必要な、公的機関内に設けられたジャーナリストのワーキングルームである。

-------------------- 中  略 --------------------

 記者室の利用については、組織としての記者クラブとスペースとしての記者室は別個の存在という立場から、記者クラブ以上に開かれていなければならないことを確認した。公的機関は、記者クラブ非加盟のジャーナリストのためのワーキングルームについても積極的に対応すべきである》。

 記者室を利用している記者クラブのメンバーたちすべてが「ジャーナリスト」であるとは到底思えないが、文中の《公的機関は、記者クラブ非加盟のジャーナリストのためのワーキングルームについても積極的に対応すべきである》については、さらに異議がある。

 「見解」の論法は、現在の記者室が記者クラブ加盟記者だけに与えられた特権であることを明示したものに過ぎない。クラブ非加盟者は、現在の記者室を使うことができないと宣言しているようなものなのだ。
 クラブ非加盟者に配慮しているかのような一文だが、じつは巧妙に既得権を正当化したもので、このあたり、「見解」の胡散臭さと言うべきだろうか。

 蛇足だが、もう一点気になることがある。《ジャーナリストのワーキングルーム》であるはずの記者室で、ソファにだらしなく座って新聞や雑誌を読みふける記者を見かけることがある。これは許されるのだろうか?

 以上、4県の記者クラブの回答を中心に、それに対するHUNTERとしての見解を述べた。
 “釈迦に説法”なのかもしれないが、報道が信頼を得ていくためには、自らの情報公開に対する姿勢も問われるということを理解していただきたい。
 情報公開を迫るために記者クラブがある(新聞協会の見解)と主張する以上、己に向けられた問にも答える義務があるのは当然だろう。

長崎、佐賀、鹿児島の県庁記者クラブに問う
 そうした意味で、長崎、佐賀、鹿児島3県の記者クラブには、報道を名乗る資格などないということを明言しておきたい。この3県の記者クラブの回答は、質問に対する答えの体を成していないからだ。

 長崎、鹿児島の両記者クラブの回答が、冒頭を除いてまったく同じなのはどういうことだろう。さらに、佐賀県庁の記者クラブまで同じ内容の回答だ。
 本稿で度々引用してきた「日本新聞協会編集委員会の見解」をもって答えとするというが、これが「ジャーナリスト」としての回答ならば、彼らが考えるジャーナリズムとは、よほど程度の低いものなのだろう。

 報道は、個々の事実を積み重ねるところから始まるものだ。当然ながら、記者たちの取材活動では、確認すべき事項や疑問点をひとつずつ丹念につぶしていかなければならない。なのに、この回答は何だろう。

 彼らが金科玉条としている「見解」は、《私たちは、記者クラブの目的や役割について広く理解を得るとともに、この見解に沿って、より信頼される記者クラブを実現したいと考えています》と謳っているではないか。

 「見解」はまた、『知る権利』に応えるために記者クラブの存在があるのだとしているが、自らに向けられた質問にまともな回答さえできない連中に、知る権利を守ることができるのだろうか。

 断っておくが、日本新聞協会の「見解」は、大手メディアにとって都合の良い主張が述べられた、いわば牽強付会の説に過ぎない。
 わずか4項目の質問に、身内の勝手な「見解」を回答としてあてがう行為は、大手メディアの傲慢ぶりを如実に示した証左である。

 次稿で、「見解」に準じた運営をしているという佐賀県庁記者クラブと鹿児島県庁記者クラブ「青潮会」の実態を詳細に報じる。

つづく



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