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玄海原発安全協定 「九電」重視の姿勢露わに
協議過程隠す福岡県の本音

2012年8月24日 11:10

 玄海原発(佐賀県玄海町)に関する「安全協定」をめぐり、小川福岡県政による九州電力重視の姿勢が顕わとなった。

 県が九電との協議議事録などの情報開示を拒否したことに対するHUNTERの異議申立てに対し、県が送達してきた「公文書非開示理由説明書」によって明らかとなったもの。

 県民の安全より九電の都合を重視したと判断できる記述が含まれており、改めて安全協定の信頼性に疑問符がついた形だ。
(写真は玄海原子力発電所)

送られてきた「公文書非開示理由説明書」
 福岡県は今年4月、糸島、福岡の両市とともに九州電力との間に「安全協定」と「覚書」を締結した(覚書は県単独)。この交渉過程について県に情報公開請求したところ、県は開示決定期限を延長した上で次の公文書を非開示としていた。

  • 「九州電力との協定書協議(第一回)議事録」および「第4回協議」議事録
  • 「協定締結に当たり両市との調整等を検討する事項について」
  • 「平常時の連絡項目の取り扱いについて」
  • 「協定締結に当たっての九電の考え方に対する対処方針」

 県は、一連の文書が「福岡県情報公開条例」に規定した非開示対象に該当すると主張。その理由として挙げていたのが《機微にわたる内容が含まれている上、記録の正確性について相手(注・九電のこと)の確認を得ていない。これを開示すれば相手との信頼関係を損ない、今後の法改正等に応じた協定見直しの際に適切な協議が困難になるおそれがあるため》というものだった。

 即日、異議申立てを行っていたが、3ヶ月以上たった今月18日になって5ページにわたる「公文書非開示理由説明書」が送付されてきた(文書は17日付)。
 非開示文書の性格や文書作成時の状況などを列記しているが、このうち4ページ目が非開示理由の詳細な説明に充てられている。下の文書がそれだ。
(注:赤いアンダーラインと番号はHUNTER編集部)

gennpatu 1864410528.jpg

「原子炉運転の機微」を隠蔽?
 協議議事録を非開示として理由について、《原子炉運転の機微にわたる内容も含まれている》ことや、《内容の正確性について十分な検討を経たものとは言えない》としているが、この記述自体がナンセンスだ。

 福島第一原発の事故以降、《原子炉運転の機微にわたる内容》について、完全な情報公開が求められていることは言うまでもない。
 そもそも原発の仕組みをはじめ運転方針については、電力会社から国に詳細な報告がなされており、その資料はほとんどが公表されている。
 九電に、隠された《原子炉運転の機微》が存在するというのであれば、これは別の意味で大問題だ。県が正気でこれを非開示理由にしたのであれば、九電と県が原発がらみの秘密を共有していることになる。
 県民に知らせることができない情報を隠蔽して結ばれた「安全協定」に、信頼が寄せられるはずがない。

gennpatu 1864410532.jpg主張に大きな矛盾
 次に、《内容の正確性について十分な検討を経たものとは言えない》との主張についてだ。

 県は当該協定の協議内容を「結果報告」としてまとめ、県議会の一部議員に配布しているが、主張が事実なら《十分な検討》もしていない不正確な記録に基づき報告をしたことになる。

 この「結果報告」は、HUNTERに対しても開示されているが(右の文書参照。黒塗りはHUNTER編集部)、どう見ても協議議事録などを参考にしなければ作成不可能な内容である。

 県の主張は、自らが作成した「結果報告」の信憑性を否定することにつながるが、本当にそれでいいのだろうか。

協定の怪しさ
 、 の主張は滑稽と言うしかない。
 県は、協議議事録が開示されることになれば《協議に参加した各団体・各個人の県に対する信頼を損なう》としている。しかし、協定に参加した福岡市と糸島市は、すでに協議議事録を含むすべての関連文書の情報公開に応じており、そのことは県も承知しているのである。県だけが協議議事録を隠す必要などないはずだ。

 また、 の箇所に記されているように、その他の非開示文書も《県内部限りの資料として作成》されたとしており、“公務”として作成された文書であることは明らかだ。
 一連の文書を、《会議において配布したものでもない》と述べているが、県の方針を確認するために作成され、関係職員らが参考にした時点で“共有”されており、公文書であることは否定できない。
 県をはじめ関係者の間で表に出せない事実があるというのなら、「安全協定」はいよいよ怪しいものとなってしまう。

県民の安全より九電の都合を重視
 最大の問題は、として示した箇所だ。
《地方公共団体は地域住民の安全確保を第一に考えるが、事業者は発電所の稼働や会社の経営状況も考えざるを得ない》 とある。

 県の立場は住民の安全第一だが、九電は経営重視であることを認めた形で、今回の安全協定が《ぎりぎりのところで》の合意、すなわち妥協の産物だと白状しているわけである。
 言い換えれば、九電はなおも安全や信頼より自社の都合を優先しており、県としてはその立場を尊重したと公言したようなものなのだ。県民の安全より九電の都合を優先する小川県政の姿勢は、到底容認できない。

 九電の立場を尊重した末に結ばれた「安全協定」は、原発にことが起きた場合に「連絡します」という内容に過ぎず、運転そのものに影響を及ぼすような効力は一切ない。
 成果と呼ぶにはあまりにお粗末な内容だったが、県や県議会の民主党系会派などは、これを自分たちの手柄でもあるかのようなはしゃぎぶりである。

 背景にあるのは、小川知事と九電との密接な関係や、九電労組におもねる民主党議員の実態だ。県民の期待や思いを無視した愚行の裏に何があるのか、取材はさらに続く。

 HUNTERは、今月末とされる期限までに、福岡県情報公開審査会に対し県側の主張に対する意見書を提出する予定だ。



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